【メモ】講座「永久凍土の上で暮らす~ロシア・サハ共和国の生業と文化~」(北方民族博物館)に行ってきた。

講座で聞いた話の内容をノートに取っていたので整理がてらメモしておく。

【目次】

「永久凍土の上で暮らす~ロシア・サハ共和国の生業と文化~」(於:北方民族博物館)

0.はじめに

  • この講座は北極域研究加速プロジェクトの研究成果を社会的に還元しようとするもの。
  • 永久凍土は2年以上0℃以下の温度を保つ土地
  • 東シベリアは200万年前の寒冷期から氷河や氷床に覆われず剥き出しの地面が冷たい大気で冷却されたため、分厚い永久凍土層が形成された。

1.サハの自然と永久凍土

  • 1-1.サハ共和国概要
    • 国土:ロシア最大の連邦構成体、308万5000㎢(インドとほぼ同じ)、鉱物資源が豊富(ダイヤ、石炭、天然ガス、石油)、人口99万2115人(何年のデータ?)、中心地ヤクーツク
    • 地形:山地・高地が領域の3分の2以上、河川70万、湖沼80万。大型船が航行可能な河川も多い(スライド写真・レナ川を行くタンカー)。川を渡るのが大変で夏場はフェリー、交通の障害となることも。

  • 1-2.自然・気候
    • 気候:冬の気温-50℃以下(オイミャコン-71.2℃、ベルホヤンスク-67.8℃)、夏の気温30度以上、年較差80℃以上。降水は年間300mm以未満、雨が少ない。冬場の風除室は冷凍庫代わり、レナ川は冬凍結して道路として使用、サハの行政が管理。
    • 植生:タイガ、ツンドラ、タイガとツンドラの移行帯、ベリー類が豊富(ガンコウラン、ブルーベリー、カリンズなど)
    • 動物相:海獣類、ヘラジカ、トナカイ、ヒグマ、オオカミ、オオヤマネコ、毛皮獣(クロテン、オコジョなど)、鳥類・魚類も豊富

  • 1-3.永久凍土と景観
    • 永久凍土:サハ共和国の領域が300-400mに達する永久凍土層に覆われている
    • タイガ:ダフリアカラマツ。降水が年間300mm未満なのに木が育つ理由は永久凍土層により水が浸透しないため、少ない降水でも気が育つ。夏に溶けるある程度の活動層+永久凍土により水が少なくともタイガとなった。
    • サーモカルスト:地温の上昇に伴い進行する地表層の変化。
    • アラス:サーモカルストにより作り出された地形。深い部分に湖を残す皿状の草地。形成に3000-9000年かかる。
    • 氷河期とマンモス:サハ共和国はマンモスの遺体が永久凍土層の中で保存され骨や筋肉、皮膚が新鮮な状態で発掘される。しかし重要視されていたのは交易品になるマンモスの牙であり、加工して取引されてきた。

2.サハの民俗と文化

  • 2-1.サハ共和国に暮らす民族
    • 主要民族:サハ(ヤクート)約50%、46万6492人
    • その他:エヘンキ及びエベン(トナカイで暮らす)、ユカギール、チュクチ、ドルガン

  • 2-2.サハ民族と伝統文化
    • サハ:10~13世紀にバイカル湖の周辺からレナ川中流域に北上・移住してきた。周辺民族を吸収。1632年に帝政ロシア「ヤクーチア」による支配。
    • 生業:ウマとウシの放牧。移住の際にバイカル湖から家畜を連れてきた。アラスの草地をウマやウシの放牧地・牧草地として利用。
      • ウマ:サハの伝統文化を象徴する。紋章にも利用。ウマを繋ぐ柱であったセルゲは現在宗教的な意味を帯び幸運をもたらし災いを避けるものとされる。夏至祭として馬乳酒祭が開かれる。様々な種類のウマのカレンダー。
    • 衣食住
      • 衣類:上着「ソン」、前開きの膝丈コートなど。
      • 食物:乳製品(馬乳酒、牛乳は発酵乳、ホイップクリーム、バター)。魚類(ストロガニーナ、冷凍し生食する)。植物性食品。肉類(仔馬の肉が美味しいものとして御馳走となる)
      • 住居:季節ごとの家。夏の家「ウラサ」。冬の家「バラガシ」は牛舎と一体化し外壁を牛糞で固め北側に牛小屋を併設する。
    • 信仰
      • 超自然的存在、シャマン、馬乳酒祭、馬乳酒を振りまく、馬乳酒を入れる工芸品「チュローン」
      • 口琴ホムスの演奏、サハの国民的楽器、パッと見は栓抜き、金属なので専門的鍛冶師がいる
工芸品「チュローン」
  • 2-3.ウマ・ウシの牧畜とアラス
    • 中心地域:ヤクーツク、ビリュ川周辺、川沿いの草地アラス
    • 放牧形態:ウマは1年中群れごとに放し飼い、ウシは日帰り放牧で夜は牛舎に入れる。村から10キロ離れたところにベースキャンプの小屋を設置
    • 牧草地としてのアラス:草の乾燥がものすごく重要、冬の間のエサとして乾燥させる、ウシは冬に牛舎に入れるので乾草作りを夏期に集中して行なう。

3.地球温暖化の影響

  • 3-2.シベリア
    • 永久凍土の融解

  • 3-3.中央ヤクーチアの環境変化
    • レナ川の洪水(レナ川は南から北に流れるため、春になると上流から氷が融けるので毎年洪水するのだが、それが大規模化し洪水被害が拡大している)
    • 土地の陥没:永久凍土が融けて流出
    • 牧畜の変化:ウマが増加し、ウシが減少している(ウマは冬期間積雪の下から自力で草を探して摂取するが、ウシには飼料が必要。環境変化により乾草の減少か?)