雑録

こいとれ 沢崎うたはシナリオの感想・レビュー

こいとれのうたはシナリオは頑なに意固地になる少年少女を描くおはなし。
素直になれないツンデレ堅物糞真面目従姉のお姉ちゃんの心をオープンハート。
人を頼らず生きているつもりでも、それは周囲を見ようとしないだけ、そんな主題。

沢崎うたはのキャラクター表現とフラグ生成過程

沢崎うたはは主人公;沢崎遊の従姉のお姉ちゃん。ツインテールツンデレの証。幼少の頃は仲が良かったけど、思春期を境に気まずくなっちゃって、あとはそのままそっけない関係。遊が母親を亡くしたときも、うたは一家が同居を誘ってくれたけど、すげなく断っちゃったの。その時、遊は妹の海を自分で育てていくことだけにしか生きる意味を見出せなかったから。母親からの海を頼むという遺言に縋って生きようとした。けど、高校上がりたての少年が急に自活できるわけもなく、無力さいっぱいの日々を送る。うたは姉さんの気遣いは遊が無能であることを見せ付けているようで、逆に辛かった・・・。一方うたはは遊が心配で心配でたまらないのに口を開けば出るのは文句ばかりな自分に自己嫌悪。さらに料理を作ってあげても辛そうな顔をするし、勉強を見てあげてもつまらなそうにしているのを見て、自分は遊にとって必要ないの?と思い悩む。しかし、世話をすることはやめられない。この感情は一体何?恋愛部で確かめなきゃね。自分の感情を持て余した二人は恋愛について向き合っていく。


どうして遊もうたはも素直に成れないの?それは過去のトラウマが関係していた。そもそも二人の間には簡単には埋めることの出来ない深い溝が横たわっていたの。幼少期、遊はうたはと一緒にママンからピアノを習っていたが、うたはの腕に追いつくことは出来なかった。うたはより劣ることを常に眼前にしなければならなかった遊はいつしかピアノをやめていた。問い詰めるうたはに対し、ピアノを弾くよりも友達と遊びたいと答えてしまう。すなわち、うたはと一緒にピアノをすることはツマラナイ、友達と遊んでたほうが良いというふうに解釈させてしまったのだ。遊の劣等意識などに気づかないうたは(姉である自分が優れていなければならないと思ってるから)は、自分が遊にとって価値のない人間だといわれたのも同じようなものだった。それ以来、うたはは遊に笑顔をみせることは無くなった。それでも一緒にいたいのは遊が気になるから。遊を手もとから離したくないが故に、愚弟の世話を焼くフリをしながら理不尽な要求の連発をしちゃうのも御一興。自分がリードしなきゃと思い込み、だけど方法が分からなくて遊に当る描写なんてゾクゾクきますぜ。


遊は母親が死んだ後、妹の自立や周囲の優しさに気づき成長していく。自分ひとりで妹の面倒を見るという呪縛を糧に生きるという怨念から解放されるの。落ち着いて周りが見渡せるようになった遊は、自分がどんなにかうたはに世話になっていたかを知る。そのありがたさに気づいた遊はうたはに惹かれていくのだが、その感情が好きなのか感謝なのか良く分かりません。うたはもうたはで遊に対してどうして世話を焼きたいのか感情を持て余す。何故ピアノを一緒に弾くのが嫌なの?恋愛部になんて入るの?お母さんが死んだのに同居を拒否するの?甘えて頼ってくれないの?そんな感情がうたはには渦巻いていた。対して遊も、うたはが困っているときに自分を頼ってくれないのを歯がゆく思っていたので、お互い似たもの同士だった。二人とも、相手に対してええカッコしいなので、弱い姿なんて晒せないわけさ。けれど成長した遊は自分の弱さを受け入れることが出来た。ピアノを辞めたのはうたはに劣等感をもっていたから、同居を拒否したのは弱い自分を見せたくなかったから。そんな理由をポツポツ語り信仰告白、意地の張り合いもこれにて終了。泣きながら弱さを晒す遊に対して私に甘えていいのよといいながら、うたはも遊に甘えることを知るのでしたとさと、ハッピーエンド。なかなか良いシナリオじゃった。