FUTSUNO FANTASY(体験版)の感想・レビュー

『フツウノファンタジー』は登場人物がおはなしの世界観に対し異議を唱えるお話。
魔王が自分を勇者に倒されないように足掻くという手法をとっています。
物語構造の中でキャラを演じるロールプレイに、現実の視点からツッコミを入れるメタテキスト。
私たちはRPGのお約束を学び、誰もが前提の知識として、作品化できるところまで来たのです。

 

RPGが出た当初、もしくはシステムを自明のものとして受け容れる前に、プレイヤァは様々な「決まりごと」を学んだのではないでしょうか。このようなRPGならではの「決まりごと」が試行錯誤しながら受け容れられていったのが、ふぁみこん世代の「どらくえ」や「えふえふ」でした。そして時は流れ「どらくえ」が出てから30年に近づこうとしています。勧善懲悪の悪者退治といった作品は様々な方向に複雑化していきます。そして行き着いたところは、「作品の世界観そのものに対して、またRPGの構造というものに対して、劇中の人物たちが働きかけをする」というものでした。

 

この手法は、某富樫先生においてはレベルEやグリードアイランドでネタ化されていますし、フリーの同人ゲーでも「魔王が手をこまねいてるのはオカシイ」として勇者を倒しにいくというプロットは雨後のたけのこのように量産されています。そして社会科学・人文科学の知識を駆使してファンタジーセカイのセカイ観を変革する「まおゆう」というノベライズ作品も記憶に新しいと思います。そんな中、また新たに「普通のファンタジィ」の常識を前提としたものとしてフツー化してしまった、「フツーじゃないファンタジィ」が生み出されようとしています。お話としては、魔王が勇者を倒しに逝く内容ですが、RPGのシステムを揶揄しているところが見どころなのではないでしょうか。死んでもカンオケ化して復活、同じセリフしか言わない、タンスに薬草などなど。またシステムボイスの小ネタがオッサンには笑いを誘うものとなっております。

 

 

体験版では、一般人視点の魔王が勇者一行のパーティーに加わりつつ勇者を倒そうとする珍道中を見ながら、RPGの「決まりごと」を揶揄しながら物語が進んでいきます。そして最後は予定調和で魔王は倒されてしまいます。ですが、勇者一行と情交を育んだ魔王は、勇者たちに自分を殺させることで、セカイへの疑念を持たせることに成功するのです。予想としてはループモノになるか、勇者たちがセカイに反逆するかかな。