雑録

この大空に、翼をひろげて 望月天音ルートの感想・レビュー

この大空に、翼をひろげて』の天音シナリオは「感情欠陥人間が心の情動を体感する」おはなし。
過去に囚われた少女が、現在の仲間達に支えられて、呪縛から解放される。
扱われるテーマは「対等の友人」、「存在理由の肯定」、「人間としての感情」などなど。
最後は友人とも和解してハッピーエンド。

望月天音のキャラクター表現とフラグ生成過程

天音の人格と主人公くんのシナリオ上の役割


望月天音は留年を繰り返し学校のガレージに引き籠もる天然系天才少女。過去の呪縛に囚われたまま、燻った毎日に諦念を感じながらも、それにすがらずにはいられないという状況下にあった。だがそんな留年生活にも限界があり、いつかは終わるモノ。その最後の夏に主人公くんらに支えられ、グライダーを飛ばせることが出来たのが体験版までの共通ルート。それを区切りとして天音は過去の呪縛を引きずったまま、学校生活を想い出に変えようとしていた。そんな天音に対し、主人公くんたちは再び空を目指す決意をする。他ルートではガレージが取り壊されるが、天音ルートでは死守に成功。何度だって、我々は空を目指すのだ。天音シナリオでは主人公くんがヒロインの過去から解放させてあげるという所で重要な役割を担っているので十分格好いいぞ。主人公くんはやはり苦悩したり葛藤したりしながらも活躍してくれなくてはな。

天音とイスカの過去における伏線回収


望月天音過去まとめ。天音の呪縛は親友イスカの失踪を原因としていた。かつて天才だったが故に全てが予定調和であった天音は、日常に対してなんら感情を持つことなく、灰色のセカイで砂のような日々を過ごしていた。だがイスカは、天才だと自負する天音をバカ扱いし、日常生活における何気ない感動を与えてくれたのであった。そのため、天音はイスカに対して特別な親愛の情を見せるようになっていった。イスカは寿命が短いことを悟っていたので生き急いでおり思い付きで行動することが多かったが、そのイスカの思い付きを天音が現実へと変えていったのだった。そんな折り、イスカは突如失踪してしまう。イスカを喪失した天音は二人の思い出であるグライダー製作の夢にすがりついて時を過ごしていたのだった。イスカが天音の前から失踪したのは、友人に対する劣等感にあった。イスカは表面上天音に対して上位的な存在であることで、その自尊心を満足させていたわけだが、それは危うい状態にあった。天才である天音に対して対等でいたいものの、自分はただ思い付きを発することしかできない。何か自分を支える実績が欲しい。そんなわけでイスカは天音が不在の時にグライダーで飛んでやろうと無理をして墜落。自尊心を打ちのめされたイスカは存在理由を喪失し、天音と絶縁する決意をしたのであった。ちなみに敵キャラとして描かれる飛岡教員はイスカを卒業させてやることを信念としていたため、天才である天音がイスカを助長させていることを面白く感じていなかったという事情が示される。

過去の呪縛からの解放


天音は友人の失踪に対し、その思い出の品であるグライダーにすがることで自我の均衡を得ていた。そのグライダーが主人公くんや仲間達を結びつけ、天音に未来に対しての希望を抱かせた。だがそんな天音に対し、時を超えて発見されたイスカの手紙が、精神崩壊を迫る。つまりはイスカの感情の吐露。内容は「天才である天音に抱いたコンプレックスと絶縁宣言」であった。バーンアウトしかける天音だが、主人公くんたちは叱咤激励し拡大解釈の見解を示す。つまりはこうだ。「天音へのイスカの絶縁宣言は、実は天音を想ったものだった。イスカは自分がいたら天音という天才少女の枷となってしまう。天音はもっとその才能を他の分野に生かすべきである。つまりはイスカが身を引けば天音は飛び立てる。それ故にイスカは身を引いたのだ。イスカは寂しがり屋で感情の裏返しが絶縁宣言だったのだ!」と。そして失踪したイスカは保養所にいることが判明し、なおかつイスカは自分が携わったグライダーが今もなお飛ばされていることを目撃していたことが分かる。イスカの夢を叶えることが、イスカを肯定することに繋がるのだと一念発起して空へと舞い上がる。天音は自分を欠陥人間だと想っていた。自分の心には"美しい"を感じる機能がないのだと。だが違った!モーニンググローリーの景色は確かに天音の心に情動を感じさせたのだ!イスカは正しかったよ。過去の呪縛から解放された天音はイスカとも再開を果たし、全ての過去が報われてハッピーエンドを迎えたのだった!!