さくら、咲きました。体験版2.0の感想・レビュー

『さくら、咲きました。』は、生存理由について考えるおはなし。
舞台設定は、老化現象を克服した近未来の世界。
突如訪れたセカイの崩壊の中でどう生きるかという終末思想系の展開です。
我らが日常生活を死なないことを前提に生きているが、それは逃避に過ぎないという実存主義

『さくら、咲きました。』の体験版の概要

「終末思想」と「生存理由の探索」を扱った作品は、これまでにも『そして、明日の世界より』や『はるかぜどりに、とまりぎを』など多々あります。ですが、この作品の独自性は近未来SFの舞台において老化現象が停止しているという設定にあるでしょう。この老化現象の停止という設定によって、「死」に対する作品内での効果が高まるという影響を及ぼしています。(実際には現実世界でも死を見過ごしているからこそハイデガーとかでてきたのでしょうけど)。そんななかで、主人公のさーくんは生活部という部活動に巻き込まれていきます。この部活動は一見すると、毎回奇想天外な行動ばかりして徒に永遠という時間を潰すことを目的としているように見えます。人生とは死ぬまでの暇潰した!というノリです。しかし、部長による設立理由はもう少し哲学的で深淵なテーマは込められていたのです。「死がない人間だから死を見つめない。そして死を見つめない人間だから生きることにも執着しない。生きることに執着しないから生きる活力を失っていく」…だからこそ生活部において生きる活力を探究するのだと。このセリフに対して死生観について思うところのある主人公くんは、入部をすることになっていきます。

攻略ヒロインとなる人物たちも死生観に対して、こだわりを持った人物たちです。毎日を楽しく生きようとする元気系おさななじみの春野つばめ。自分の生きる意味を見つけたいと願う清楚系クラスメイトの烏丸都。老化現象停止技術を生み出した企業の娘で死に対して憧憬を持つ炉利担当の湊美羽。これらの人物に対して、超越者的存在として「サクラ」と名乗る人物が「老衰という自然死が出来ない人間は可哀想」などと示唆的な発言を残していく。何気ない雑談だが、主人公くんは、「母親が老化現象の停止を拒み、病気で亡くなっていった」という過去を持つためどうしてもその言葉が拭い去れないのであった。主人公くんは死生観に対して少し冷めているところがありますが、シナリオの展開を通して、「生きる活力なんて、誰かに教えてもらえるもんじゃないからな」、「俺たちはこうして、生きる意味を探さなければならない」、「生きてるって尊いことなんだよ、その命を全力で生きないと損じゃないかな」との啓示を受けていきます。そうして、死を思え、メメント・モリ的な状況で生存理由を見いだしていこうとするわけですが、はいここで隕石がぶつかって地球終了の危機で終末思想タイム。必ず訪れる死が現実に突きつけられて体験版終了。君たちはどう生きるかてきなクォリティー・オブ・ライフ(QOL)のおはなしに突入していきます。