夏空のペルセウス(体験版)の感想・レビュー

夏空のペルセウスの体験版は気高き少女の誇りを傷つけてしまうおはなし。
生存理由を「少女救済」により肯定されたい少年。
救済されたいが男の利己心を満たす手段となることを厭った少女。
「可哀想だた惚れたつて事よ」 Pity is akin to love.
主人公の散りっぷりと妹サマの敵愾心が魅力的。

体験版の概要

主人公くんと妹は孤児であり、親戚連中をたらいまわしにされながら生きてきました。主人公くんら兄妹はどこへいっても厄介者です。そんな中、他人と接することに辟易してしまった妹とは対象に、主人公くんは自分が生まれてきた意味について絶えず悩んでいました。主人公くんは亡き母が残した自分の生存理由の肯定の確証を追い求めては失敗し、妹を巻き込んでは、追放されていたのです。そして、またもやたらいまわしにされた二人は、遠縁の田舎へとやってくることになりました。この田舎ではそれぞれ「傷」を抱えた少女たちが出てきます。2000年代初頭に流行った昔懐かしの泣きゲーよろしく、社会不適合者の少女を救うことで、哀れな男の感傷を誘い、自己肯定へと至らせる、お決まりのパターンですね。


兄を独占し自分だけを見てもらいたい妹に対し、主人公くんは少女たちを救うことに自分の存在意義があるのではないかと考えるわけですね。その少女たちの中でもとりわけ主人公くんの目を引いたのは不治の病を負ったホスピス少女でした。主人公くんは彼女に甲斐甲斐しく接し、心を開かせます。ですが、仲良くなり契りを交わした主人公くんは、自分の意図を吐露してしまうのでした。嘘を吐くのなら吐きとおせ!!真実を知った少女は自分が男の利己心を満たす道具にしかすぎなかったことを目の当たりにし愕然とします。ここからのホスピス少女の罵りっぷりは一読の価値ありです。こうして振られた主人公くんには、自分の存在意義の証明という課題が残されたのでした。人間って生きてる意味なんてないよ。


あなたは可哀想な誰かの痛みを時運に移すことで、自分を犠牲にすることで、救った気持ちになってる。
人を救って神様にでもなった気分になっているんですよ。
あなたは自分が犠牲になることで可哀想な私を救ったって満足感に浸っているだけ。
偽善に酔っているだけ。
あなたはそれで満足できるかもしれません。
でも、私はあなたを満足させるためにいるんじゃありません。
哀れまれて、可哀想な自分のまま、みじめに死んでいくなんて。
もうこれ以上の痛みはいらないし、あなたの"英雄ごっこ"という偽善に付き合うつもりもないんです。