雑録

大図書館の羊飼い【体験版】の感想・レビュー

学園生活を楽しくする便利屋となって活動するキャラゲー
巻き込まれ型主人公が、メインヒロインをサポートしていく中で好感度を稼いでいく。
明るい感じなノリの中で、可愛い?とされるヒロインズの心の闇を解き放っていく。
だが、8月の作品だから、SF展開や異世界モノなど超展開をする懸念もある。

大図書館の羊飼い』における物語の原動力となる機能をもたされたヒロインについて

大図書館の羊飼い』ではメインヒロインである「白崎つぐみ」嬢が物語の原動力となっています。彼女の目的は「学園生活を楽しくする」ための便利屋的なサークルを作って、仲良しグループで活動することでした。この「学園生活を楽しくする」というモチーフは、ヲタクにおけるプレイヤー心理の欲望の変化を表していると思いませんか?かつてみられた作品(ONEなどの泣きゲーのたぐい)では、現実に受け容れられない社会不適合なアウトロー系のヒロインに対し、学校空間以外の価値観を提示するという傾向が強かったと思います。しかし、『さかあがりハリケーン』なり『がくおー』なり、近年の作品ではアウトロー的な価値観の提示はめっきり減じ、「学校を楽しくする」という社会的承認を求めるなど、公的な空間での価値観に欲望が変化していることが見られます。これは、自らの価値観を大切にしていればたとえ社会的に後ろ暗い趣味でも問題ないという傾向から、自分たちの趣味は正当なものであり、この趣味を現実に生かすことで社会に受け容れてもらいたいとすることへの変化だと指摘できるでしょう。


アウトローな主人公が社会的な承認を求めるという構造は、主人公である筧(かけい)さんのキャラクター表現においてとてもよく表されていると思います。主人公さんは本が好きなアウトロー系の人物として登場します。幼少期に両親からきちんとした教育を受けられず、施設などで見知らぬ大人たちと接していかなければならなかった筧さんは「無知から来る不安」を解消するために、本を読んで知識をひたすら増やしてきたのでした。筧さんは特に本が好きだから読書をしているというわけではなく、自らの知識の中で現実を処理するために本を読んでいたのでした。そのため幼少期の筧さんは世の中の全ての知識を知ることができれば、自分の言いようの無い不安を解消できると信じていたのです。そんな主人公くんを現実へと結びつけるのがメインヒロイン白崎つぐみさんの存在です。筧さんはその場その場での対応では攻略ヒロインたちに親切に接してきたので、好感度は非常に高い状況でした。しかし、何より自分から行動するという能動性に欠けていたので、好感度は上がってもフラグが成立するところまでいかなかったのですね。しかし、白咲つぐみさんによって巻き込まれた主人公くんはそのお人よしっぷりを遺憾なく発揮することができるようになったのです。そのため、白崎つぐみさんという装置により、アウトローであった主人公くんが社会的な承認を得ることができるようになったということができるでしょう。


巻き込まれ型である主人公の筧さんが白咲つぐみさんを通して現実社会に位置づけることが可能になります。これにより、筧さんは白崎つぐみさんをサポートするという形で、個別ヒロインたちをフォローするきっかけになり、フラグが構築されていくのです。物語の基本的な流れは、以下の通り。【(1)白崎さんが便利屋サークルの活動でサブヒロインたちと関係を構築する⇒(2)サブヒロインは白崎さんに対して複雑な感情を抱く⇒(3)筧さんが白崎さんをフォローするためにサブヒロインをケア⇒(4)好感度アップ】。こうして白崎さんを通してサブヒロインズたちと個別に情交を結んだ筧さんは、各ヒロインたちが抱える後ろ暗さである心の闇を解放していくのです。体験版では、今までアウトローであった筧さんが、便利屋サークルに関わりますという積極的な意思表示をするところまでプレイできます。がんばれ!筧さん!!サブヒロインズの心の闇を解き放て!というところで体験版はお開き。キャラゲーで終わるか、超展開をするかが見ものですね。