こなみ√は実妹関係性変化と近親相姦に対する周囲からの偏見。
イモウトモノは既に語り尽くされてキャラクター消費が飽和状態。
モラルを意識する兄に妹が肉体関係を迫りLet's背徳するのは『クロポ』。
母親が強く絡んでいることからは『ひだまりバスケット』。
近親相姦に対しては転校してケジメをとるから『夏ノ雨』。
本作独自の特徴としては「死者の魂との再会」が挙げられるでしょうか。
死別した父親の魂が継母の考え方を変化させるところが見どころか。
浅葉こなみのキャラクター表現とフラグ生成過程
- 将棋ネタとエゴからくるイモウト認識の変化
- 浅葉こなみは主人公くんに依存したところのある飄々とした感じのマイペース系実妹。将棋好きという設定ですが途中からフェードアウトしていってしまう感が少しあります。『三月のライオン』のように将棋をメインにするシナリオを描ければまた面白かったのだと思いますが・・・。フラグ成立時の「主人公くんに告白する際のイベント」と最終場面での「周囲からの承認を得るための装置」として将棋が使われましたが、将棋の勝敗の結果はどうでも良かったと卓袱台返しすらされてしまいます。面白かったところをあげるならばファザコンであったこなみがブラコンにもなっていく場面でしょうか?当初、主人公くんにはあまり懐いていなかったこなみが病気を患い入院するようになり、毎日お見舞いにいくうちに仲良くなっていったという展開です。なぜこの場面が良いかというと、お見舞いに行った主人公くんの理由がイモウトのためではなく自分のエゴであったと内省するテキストがグッとくるからです。引用しておきましょう。
「…私はどこにも行かないよ」…その言葉で思い出すのは病院のベッドの上で苦しそうな表情を浮かべる小さい頃のこなみのこと。いつかこの匂いが消えてしまうんじゃないかと思った俺はその時に初めて妹を“失いたくない大事な家族”として認識した。不安になって毎日お見舞いに行き、こなみと話しをして、その結果まだ失っていないという安心感を得ていた。だから俺はこなみのいうような『毎日お見舞いに来てくれた優しい兄さん』なんかじゃない。ただ自分の中で膨らむイヤな気持ちを静めるためだけに病気のこなみへ会いに行っていたんだ。
- 母親との対決と死者の魂との再会
- こなみシナリオのイモウト関係性変化はテンプレ展開を見せます。(1)「恋するイモウトは兄と他の女が楽しそうにおしゃべりをする姿をみて初めて自分の気持ちに気づいちゃうの」→(2)兄に想いを伝えるがモラル上受け入れられなかったので、肉体関係で迫りLet's背徳 →(3)兄もイモウトを受け入れるが、周囲からの承認を得る問題へと発展・・・という分かりやすいチャート方式のような構成ですね。その中でも本作のオリジナリティを挙げるとするならば、母親との関係でしょうか?主人公くんたち一家は歪なカタチをしています。父子家庭であった主人公くんたちの家族。教師をしていた父親の教え子が継母として再婚を果たします。しかし父親は病死し、現在、母と子は血の繋がらない親子という構造なのです。継母は子どもたちを愛しており、一生懸命育て上げてきました。それが死んでしまった旦那に対する報いだったのでうしょう。しかし手塩にかけて育ててきた子どもたちが近親相姦をしてしまったのです。ショックは隠しきれず、どうしてもその関係性を認めることができません。個人としては賛成なのですが母親として反対という葛藤に苛まされるのですね。苦悩する継母に対して、ここで「死神」設定がようやく生きてきます。死んでしまった父親の魂を召還することで、継母の葛藤に終止符を打たせるのですね。結果、世間体も考えてこなみは高校を転校することになります。一方主人公くんは高卒で就職し経済的に独立を果たします。こうしてこなみの卒業を待ち、親子三人は再び家族を取り戻し新たな未来を歩んでいこうとハッピーエンドとなります。