恋がさくころ桜どき「グランドエンド(ティナ√)」の感想・レビュー

ティナ√は記憶を食らうことを拒否した死神が消滅へと向かうおはなし。
「誰かに覚えておいて欲しい…この気持ちが恋なんだと思います」
死者の記憶を恋と認識したティナは恋の妖精として記憶を消去することを拒みます。
「時々でいいですから、わたしのこと、思い出してくれたら嬉しいです」
こう言い残して消えていくティナ。このままビターエンドで終われば感動だったでしょう。
しかし、昨今のシナリオはエンド後に安易に復活して困る。感動が台無し。

ティナのキャラクター表現とフラグ生成過程


  • 主人公くんにおける自己の存在理由についての苦悩
    • ティナは炉利枠の死神少女。主人公くんの命はティナの姉が命を贖って蘇生したものであったことから、姉の魂の残滓に惹かれて主人公くんに懐いていきます。危なっかしいティナを見守るうちに情が移った主人公くんは、自分の生活の中でどんなにかティナの存在が大きくなっているかを思い知るのでした。しかしながらティナは主人公くんを見ているのではなく、主人公くんのなかにある姉の魂を見ているのです。また自分の命は他者のものであることに向き合わざるを得なくなった主人公くんは自分の存在理由について苦悩するのです。こうして煩悶する主人公くんに対し、ティナも現実と向き合うべき時がきていると促されます。自分は姉の魂ではなく主人公くん自身に惹かれていることを実感したティナにより、主人公くんは肯定されフラグが成立します。

「俺は生きていてもいいのだろうか?誰かの命を奪ってまで、その家族に俺自身も知っているあの絶望を押しつけてまで、生きている価値があるのだろうか。・・・一体俺は、何処の誰なんだ・・・ティナにとって俺は姉さんの代わりなのか?・・・分かっている。俺が大事な人の代わりになれるのなら、それでティナが癒されるのなら、俺は文句なんてない。けど、出来れば・・・俺自身のことも見て欲しかった・・・とは思う」


  • 主人公くんの悪友がホスピスの彼女に耐えきれなくなるはなし
    • ティナ√では死生観が描かれていきます。この作品における死神は死者の魂を刈り取り後世の生命に吹き込む輪廻転生の橋渡し役となっています。死神は死者の魂の記憶を浄化し、まっさらなカタチで次の生命に魂を吹き込むことが求められるのです。そしてこの過程で死神は死者の記憶を食べることで自己を維持しているとのこと。しかしティナは魂を刈り取ることを拒み続けています。小さな子猫の命を刈った時の苦しみに耐えきれなかったからです。このためティナは次第に存在が希薄になり消え失せようとしていたのです。この問題を解決するため、主人公くんたちはティナが死と向き合えるように支援していきます。ここでティナが関わることになった命は、主人公くんの悪友のモトカノの命。悪友のモトカノは闘病を生活を送るのですが、日に日にやせ衰える姿に耐えきれなかった悪友は、彼女を裏切り見捨て、死を迎えさせたのです。ティナがその命を刈り取った時、呪詛の怨念の記憶を背負う事になってしまいます。そして彼女を見捨てたことに自己嫌悪に陥る悪友。彼らに対し、主人公くんとティナは優しい嘘をついて立ち直らせていくのでした。


  • 記憶を食らうことが出来ず、自己の消滅を選ぶ
    • 死者の魂を刈り取る経験をしたティナでしたが、それでも死者の記憶を食らうことが、どうしても出来ません。自己の存在よりも大切なことがティナにはあったのですね。「誰かに覚えておいて欲しい…この気持ちが、恋なんだと思います」と述べるティナにとって、死者の記憶は自分の生命よりも尊重すべきものだったのです!!こうしてティナは主人公くんに「時々でいいですか、わたしこと、思い出してくれたら・・・うれしいです」と言い残し、消滅していくのでした。感動のビターエンド!!!となるはずが、エンドロールの後、即座にティナは復活し、感動の余韻があったものではない。いや、ハッピーエンドが消費者に望まれているからといって、ここは復活させちゃだめでしょーと思いました。