雑録

月に寄りそう乙女の作法「桜小路ルナ」シナリオの感想・レビュー

アルビノとして産まれたが故に家族に倦厭され歪んでしまった少女と主従愛を育むはなし。
専門的な服飾の教育を受けるため、女装メイドに身を宿し、クーデレ主に仕えましょう。
才能を認められずに切り捨てられた主人公くんが主に尽くすことに喜びを見出します。
そんなメイド(男の娘)から無条件の愛を受けたクーデレが心を開いていく描写はグッときます。
ルナ様による平面のデザインを朝日が実際に服にしていく構図が見ていてステキ。
割と真面目に服飾をしていて、こういう専門知識モノはそれだけでも興味深い。
あと「それちる」「おれつば」以来の地歴ネタも微妙に残っており懐かしくなった。

主人公の人物像について


  • 妾腹の子
    • 主人公の大蔵遊星は富裕階層の妾腹の息子。母は頭首の寵愛を受けていたが故に、正妻からは疎んじられていた。マンチェスターの屋敷の屋根裏に幽閉される毎日。それでも主人公くんには厳しいハウススクーリングが施され、家のために役立つ人材になるよう仕込まれていた。そんな遊星さんが母親から貰った教えは「誰かのために働くこと」。辛い環境の中でも母子で支え合って生きてきた。そんな遊星さんの境遇を変える事件が二つ起こる。一つ目は正妻の長男との邂逅。遊星さんが桜を見上げていると長男の衣遠お兄様から禅問答を試される。ここで遊星さんは機転を利かせて桜の中にあるプリミティブな感情・日本人の中に眠る集合的無意識を説き、兄に才能を認めさせたのであった。そしてもう一つは正妻の娘りそなの存在。日本人であるためマンチェスターでいじめられていたりそなを颯爽と救ったのが遊星さんであり、そこからりそなはブラコン正妻系イモウトに育つことになったのである。しかしこの二つの事件が正妻に知られることとなり、寵愛を受ける妾に嫉妬するあまり遊星さんをワインセラーにおける肉体労働者として追放してしまったのである。そんな遊星さんを兄の衣遠が救出したのだが、哀れ遊星さんは完璧主義の兄の欲求を満たすほどの才能を示すことが出来なかった。こうして遊星さんは無能な弟として兄に飼われるだけの家畜として生活することになったのであった。



  • 爆誕☆男の娘「小倉朝日」
    • 遊星さんは服飾への道を断たれ飼い殺しにされていた。そんな中ブラコン正妻系イモウト;りそなから提案を受ける。世界的に有名なデザイナーが開校することになった服飾系学校に進学してはどうか?と。喜ぶ遊星さんだが、そこは女子校であるという罠。正規の手段では入学できないため法の抜け穴をかいくぐり、資産家お嬢様のお付きのメイドとして授業を受ける作戦を練る。こうして遊星さんは女装化し、クーデレアルビノお嬢様;桜小路ルナに仕えることになったのである。男の娘モノは吐いて捨てるほどあり、主従モノも手垢がついてきた今日においても、朝日の可愛さは他作品と一線を画しているほど強烈なキャラクター表現を誇っている。その理由として挙げられるのが背景としてある「服飾関係」の基礎をしっかり描いているから。朝日が心に宿すデザインへの熱意とその才能に溢れるルナ様への憧憬が巧みに表現されている。朝日が口癖のように尊崇の念を示す「お優しいルナ様」のくだりは本当にステキである。

メインヒロインの不遇な家庭環境について


  • アルビノの容姿
    • 桜小路ルナは産まれたときから疎まれていた。母親は封建的な思想の持ち主であり銀髪紅眼白色の娘を自分の子であると認めたくなかったのである。ルナ様に対し産まれたときから「産んでしまってごめんなさい」と謝罪する母親。その言葉はルナ様がこれから生きていくにあたり将来が辛いだろうと嘆いたためだろうか?それとも日本人離れしたその容姿から密通を疑われることを厭ったのであろうか?まぁそんな事情があり、ルナ様の存在は母の心情を掻き立ててしまうので、幽閉状態で育てられたのである。ルナ様がさまざまな苦難を乗り越え自立した後でも、母親は娘を認められず、ルナ様が世間で認められようとすると、実家から様々な介入が入るのであった。



  • 乳母のひどい裏切り
    • ルナ様を「他人信じられない病」に感染させたのが乳母の存在。乳母の担当はルナ様が産まれる前から決められており、任命された本人は鼻高々であった。しかし産まれてきたのはアルビノで両親から忌み子扱いされるほどであった。乳母の落胆は酷いモノであり、それでも両親に取り入ろうと、ルナ様を自分の都合の良い人間に育て上げる。しかしそれは父親が求める人間像ではなく、ルナ様自身は懐疑するばかり。乳母と父に板挟みにされ人格崩壊していくルナ様に最終的通告のお知らせ。乳母は横領の罪で結局解雇されることになったのだが、ルナ様が与えたはずのビーズ細工(手作り)を金にならんからとゴミ箱に捨てて去ったのであった。こうしてルナ様は対人関係において他者に期待しないことで、自分を守るための鋼鉄の鎧を身につけることになったのである。それでもルナ様はメイドの八千代や面白系フレンズに支えられ、株で一発当てて大成功し、会社を設立して経営を軌道に乗せ、実家を越える資産を蓄えたのである。そんな頑なになったルナ様の心を我らが主人公;小倉朝日が融かしていくのである!!

シナリオの根幹となる主人公と兄との関係について


  • 男バレと学園追放
    • デザイナーとしての才覚を示すルナ様のもとで、パタンナーの才能をメキメキと伸ばしていく朝日。ルナ様に寄り添うことで他者受容願望を見たし、自らの才能と立ち位置を確信した朝日は奉仕の喜びを知る。また朝日からのきめ細やかな愛情を注がれたルナ様は他者を受け入れる心を育てて行くのであった。そんな二人の目の前に立ち塞がるのが、主人公くんの異母兄;大蔵衣遠であった。桜小路家はルナ様の存在を表に出したくないので、学園の長である衣遠を介してルナ様の作品発表を邪魔してくる。また衣遠兄様はルナ様の才能を認めているが故に、自らが無能の烙印を押した弟が仕えているのが気にくわない。そんなわけでルナ様と朝日の関係を崩壊させるべく、朝日が男であることをばらしてしまうのであった。万事休す。しかしルナ様の主従愛の前にはそんな介入は無駄であった。改めて絆を確認しあう二人だが、主人公くんは学園から追放されてしまい、ルナ様はクリスマス発表会のために作成したデザインを盗作されてしまうのであった。



  • 兄に才能を認めさせるんだ!!
    • 兄が主人公を嫌うのは才能が無いから。無能だから。故に、主人公くんが才能を見せれば兄は納得するはずである。そんなわけで学園を追放され女装メイド朝日モードを強制的に解除された遊星さんが取った手法は、ルナ様のために作っていたドレスを完成させ、それをクリスマス発表会で公表することであった。様々な苦難を経て遊星さんの努力はついにみのり、発表会では作り上げられたドレスを着て闊歩するルナ様の姿が!!見事最優秀賞を獲得し、再び兄と対峙する主人公くんとルナ様。無能の烙印を押された遊星さんの才能を今ここに示した瞬間であった。兄が主人公くんを認めるシーンは感慨深いことこの上ない。こうして大蔵遊星/小倉朝日はルナ様の主従として恋人としてパタンナーとして一生を尽くすこととなったのである。ハッピーエンド!