有能な兄の存在により「自己の存在理由の確立」を放棄していた弟が「自発的意志」に目覚めるはなし。
信頼していた兄への想いは一方通行だったと知ったアンソニーさんの絶望シーンはグッとくるね。おススメ!!
さらに遊星さんとりそなの支援によりアンソニーさんが自立し兄から解放され自己の意志を示す展開は熱い。
地理ネタとしてベルギーも舞台として登場し、攻略できない魅力的なキャラである「難儀ですね」さんがカワイイ!
アンソニー√ぐらいのシナリオの質であればドイツ、ロシア、ベルギーでつりおつ商法されても買うかもしれない。
これはエッテアナザーなどではない。大蔵アンソニーの成長物語である。
- 大蔵アンソニーの歪み
- 大蔵アンソニーはお馬鹿で陽気なアメリカ人ハーフ。しかしそれは名家が持つ確執から生じたものであったのです。アンソニーは生まれた時から一家の勢力争いための数合わせの駒と宣告されており、有能な兄に従えばそれでよいとみなされてきました。しかしアンソニーも最初から諦めていたのではありません。幼少期には負けん気も強かったため、努力をし結果を出し上を目指そうとしたと述懐しています。それでもアンソニーは兄に追いつくことはできませんでした。長い年月を経て、自分の努力の無力感・誰からも認めてもらえぬ孤独感・周囲に理解者がいない寂寥感が次第にアンソニーから意志を削り取り、思考することを放棄させたのでした。こうしてアンソニーは自分が馬鹿で愚かであると思い込むことで自我を保とうとし、何も考えない典型的アメリカ人となったのですハッハー!!
- 大蔵アンソニーの絶望
- アンソニーの拠るべき処は実兄のスルガの存在でした。アンソニーは自分が兄に従うことで、兄からの信頼を得られると思っていたのです。しかしそれは結局ピエロであったことが証明されてしまいます。スルガはアンソニーのことなど、これっぽっちも信頼していなかったのですね。そんな中、遊星さんはアンソニーとよく話し合うことによって、お互いの境遇やコンプレックの根源などの悩みを打ち明け合い、共感することになります。兄から信頼を得たいけれども単なる思考を放棄した服従では相手は自分のことなど決して信頼などしてくれない。自らの頭で考え、自らの足で歩かなければ、信頼などしてくれないことを悟るのです。こうして遊星さんとの対話を経て、アンソニーは大きく成長するのでした。アンソニーが部下に裏切られ兄の下へと走られた際のシーンは絶望感がよく伝わってきます。アンソニーが「一度裏切りを行った人間を兄が重用するはず等ない」とそれでも部下を慮る描写は思わず手に汗握りました。さらにアンソニーが自分の身体を張って遊星さんを逃がしてくれる展開はハッハーと言わずにはいられません。
- 大蔵アンソニーの自立
- 遊星さんからインスパイアされて兄と対話をするためには自分の足で立つことを知ったアンソニー。今まで兄に相手にされなかったのは兄に対する盲従にあったのだと。遊星さんと衣遠お兄様の関係も同様であるのだと。こうしてアンソニー・遊星さん・りそなの第三勢力が形成されます。(ちなみにエッテはどんな役柄だったかというと遊星さんが暗黒化するたびに登場し、ダークサイドに堕ちないよう遊星さんの魅力的な部分である「善性」を保つ働きとして機能します)。自立したアンソニーが大蔵家の晩餐会の際に反旗を翻すシーンは今までの積み重ねてきたものが一挙に解放される場面でもありハッハーと叫びたくなること請け合いです。またエピローグでは自立したアンソニーが積極的に仕事に取り組む様子や、部下に対する度量により信頼を得ていることなども盛り込まれています。ハッハー。遊星さんやアンソニーを通して、偉大なる兄を持つ弟の複雑なコンプレックスを描き出したなかなか良いシナリオだったと思います。
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