ノラと皇女と野良猫ハート「パトリシア」シナリオの感想・レビュー

バカゲー・ギャグゲー・キャラゲーの皮を被った哲学ゲー。パト√では常識の非常性を扱う。
メインヒロインを冥界からやってきたという設定にすることで、現代文明を異なる観点から捉え直す。
基本的にはおバカなノリ。シリアス場面で胃が痛くなりかけた瞬間にギャグに走りあっさり解決!
最後も死生観を巡る問題となりヒロインの代わりに冥界行きを決意するが、現世時間だと3日でした。
それでもパトの学びに対する真摯な姿勢や一途な想い(ヤンデレ化しそうなほど)はとてもかわいい。
また地の文のナレーションが実は主人公くんの母親だったというのもほっこりする演出だと思う。

パトリシア√概要


  • フラグ構築編
    • 中世ヨーロッパではペストに襲われた際に「メメント・モリ」という箴言がありました。死を思え・死を忘れるなという意味です。本作では、人間が生命は死への存在であるということを意識することが、冥界の存在条件となっています。人間が死を忌避して目を背け、享楽に甘んじて死を意識しなくなると、冥界は滅んでいくという設定です。冥界の滅亡を防ぐため、皇族の中からパトリシアが選ばれ派遣されてきます。しかし時は春爛漫であり生命の息吹にさらされたパトリシアは死にかけてしまうのです。そこを救ったのが我らが主人公くんであり、学ぶことに純粋でなんでも知ろうとするパトとの交流が描かれます。パトリシア√の中で印象的なのが、主人公くんの家に集まってくる近所の子供たちとのやりとり。悪ガキに馬鹿にされるシーンでは、「自分ができないことを馬鹿にされたら普通ならいやな気持になる。でも怒らず取り乱さずただ笑って同じ輪の中にいられる。それはとてつもない力だと思う」と主人公くんも述べるように、パトの可愛らしさが表現されていきます。主人公くんがパトのためにと、母親から受け継いだ辞書をプレゼントするくだりも割とじんわりきます。



  • パトリシア姉妹との戦い編
    • フラグ構築後、冥界の存在であったパトリシアに心臓の鼓動が発生し命が宿ります。そんなパトの心臓を止めて冥界に連れ帰るのがエンド家姉妹のミッションになります。まずは姉ルーシアとの対決。ルーシアはパトの心臓を突き刺し物理的解決を試みます。しかしながら何度突き刺し心臓を止めても、パトは主人公くんを見ると再び三度鼓動を滾らせてしまうのです。愛するイモウトを刺さなければならないという葛藤を抱える中でルーシアも次第に主人公くんに絆されていき心臓の鼓動が発生してしまうのです。そしてパトを突き刺したことへのお仕置きという名目のもとで、主人公くんの剣(下半身)でルーシアも突き刺され問題は解決するのでした。またルーシアの内面的側面としてパトを助けるためにその魔力を喪失したというエピソードなんかも語られ、これまたほっこりします。
    • 姉ルーシアが攻略されると続いてイモウトのユウラシアのターン。ユウラシアは主人公くんの性欲を浄化し、パトリシアとの肉体的接触を拒ませることで姉のハートを止めようとしたのでした。聖人と化した主人公くんに性交を拒絶されたパトは衝撃を受けますが、パトは重くぶら下がる女であり、ここからヤンデレ気味になります。イモウトの呪いで聖人と化したなら、自分の肉体で元に戻して見せると女を見せます。パトリシアを怒らせたユウラシアはびびって委縮。心中を語り、冥界では末っ子みそっかす扱いだったコンプレックスなどの弱さを主人公くんに見せてちょっと泣ける展開もあるのです。ユウラシアもパトリシアの指導の下で主人公くんに貫かれて鼓動を発生させます。
      • ユウラシアがパトリシアに敗北する際の名言「意味を理解していない詠唱は、その場限りは良いかもしれない。でも後に何の役にも立たなくなるわ。数学の公式と同じ。理解が及ばず私の真似事を繰り返しているばかりでは。いつまでたっても、お人形さん遊びね」



  • パトリシア母との戦い編
    • エンド家三姉妹を派遣したら全員主人公くんに攻略されてしまったでござるの巻き。最後は母親が現世に出現し、主人公くんと対峙します。紆余曲折を経て母親にも現世の価値観を分かってもらえるのでしたが、冥界の人間が現世で生を受けたのなら、その代償が必要だという等価交換的なノリに。パトリシアを冥界に返すか、主人公くんが猫として冥界に行くかの選択が迫られます。主人公くんは男を見せて、いつか必ず帰るからと伝説の幻獣(ネコ)として冥界へ。別離の場面では、すっかりおなじみになった月が綺麗ですねが炸裂したり、子どもを宿す的な意味で1+1は3になる等の名言が飛び出たりと感動を演出。遺灰を海にまかれた主人公くん母が実はナレーション役であることが明かされパトリシアと対話したりと泣かせにきます。
      • 「あなたはそうしてなぜだろうと立ち止まる。なぜ、なぜと。分からなければ人に尋ねる。できないことを笑われても決してくじけず、また誰かに尋ね、それでも分からなければ何故なのかと立ち止まる。そうして、なぜだろう、なぜだろうと思い立ち止まる人が世界を変えていくのです。誰に何を言われようと、後ろ指をさされようと、前を向いて進んでください」
    • でもまぁ、結局はギャグゲーであり、主人公くんが冥界で1000年の時を経て現世を滅ぼすために降臨したら、現世の時間軸は3日でしたよーんというオチ。記憶忘却状態もパトリシアの叱咤で数クリックで元に戻りハッピーエンドを迎えるのでしたとさ。