千の刃濤、桃花染の皇姫「邯鄲の夢(古代天皇の即位儀礼編)」の感想・レビュー

三種の神器の授与による皇位継承の正統性がどのように確立したかという背景を説明するはなし。
※ただし内容はファンタジー架空戦記。ヤマト政権の国家統一事業とかそんな感じ(テキトー)。
地方豪族を束ねた一地方勢力が呪術による神権政治で国家統合を果たしたが未だ国政は安定せず。
呪術の使用過多で寿命を迎えた始祖の皇女は転生しようとするが失敗し、魂は漂うことになる。
故に皇位継承権を保証するレガリアが創られ権力の正統性を保証しようということになった。
主人公くんは始祖によって作られた呪装兵器人間であることが判明。
で、何代もの時代を超えた始祖の転生先が皇族ヒロイン朱璃であったという展開。

紙芝居ゲーで偽古典展開はよくあること


  • 呪術による神権政治で国家統合
    • 皇族起源説話のはじまり、はじまり。稲作が伝来し余剰生産物が発生したことにより蓄積された富を巡って戦争が起こるようになりました。以来、ムラは周辺を統合し次第にクニとして発展していきます。他国からの侵略は周辺の諸勢力を結合させることになり、呪術に秀でていた少女は神権政治を行う中心として祭り上げられ、いつしか国を率いる指導者となったのでした。こうして皇族の始祖:緋彌乃命が爆誕したわけです。緋彌乃命はたぐいまれなる呪術により人造兵器である主人公くんを生み出し、国内統一を成し遂げます。国の豊穣を目指し内政を頑張る緋彌乃命でしたが、未だ火種は燻っており、その統治に不服を抱くもの少なからず存在しました。そのような中で遂に緋彌乃命の寿命が近づきます。呪術の使用過多により身体が蝕まれ若くして余命幾ばくもなかったのです。子を産む余裕のない緋彌乃命は主人公くんとの子どもを代理母に出産させることになり、その子へ魂を転生させようと試みるのでした。



  • 転生失敗と世襲制の確立
    • 人間は必ず負の欲望を内包していますが、理性や自我、社会的通念や制度により抑えられています。つまりは規範意識を植え付けさせ、そこから逸脱したものを狂気とみなすことで社会秩序を維持してきたのです。しかしその狂気とみなしてしまったものは断罪されるだけで終わるのでしょうか?人間が内包している以上、逸脱者はどんな時代でも出てきてしまうのです。緋彌乃命はそんな人間が持つ抽象的な「狂気」そのものに執着されてしまいます。すなわち「狂気」に執りつかれた人々が緋彌乃命に襲い掛かってくるのでした。「狂気」は誰もが持つものであるため、親しい人々が次々に狂っていきます。そしてとうとう緋彌乃命が代理母出産を頼んでいた巫女まで執りつかれてしまいます。こうして転生の儀式は失敗、緋彌乃命は死に、その魂は漂うことになりました。しかし幸いなことに代理母の巫女は死とともに出産しており、赤ん坊だけは残ったのです。こうして緋彌乃命亡き世界で、その子孫に政権を継がせるためのレガリア・システムとして三種の神器の授与が生み出されたのでした。主人公くんはいつかきっと緋彌乃命が転生することを信じて、皇国を維持していくことになりましたとさ。