雑録

なぜインドの民族運動は19世紀ものと1920-30年代のものでは性質が異なるのか?


インドの民族運動といえば、インド国民会議の動きに着目する必要があるわね。受験世界史的にはボンベイ大会(1885)、カルカッタ大会(1906)、ラホール大会(1929)がすぐに思い浮かぶはずなのだわ。これらがどのような性質でどのように変わっていったのかを抑えていけばよさそうね。


インドの民族運動〜19世紀と20世紀の比較〜


はい、ではまず19世紀ということでボンベイ大会を見ていきましょう。そもそもインド国民会議はイギリスの提唱で開かれたことをまず押さえておきましょう。受験生が勘違いしやすいところですな。イギリスの対インド人親英化政策の一環であり、穏健的な資本家や知識人たちを集めた協調的な団体だったんですよ。


それがなぜ変化したのかしら?


イギリスの帝国主義的植民地支配に反発し、民族意識に目覚めていったからなんですね。この変化が顕著なのがカルカッタ大会なので見ておきましょう。設問は19世紀と1920-30年代の比較なんだけどさ。


えーっと、カルカッタ大会といえばその背景にあるのはベンガル分割令よね?宗教的対立を利用した分割統治政策。だけど、分割の強行によってインド人が激怒。こうしてティラクに率いられたカルカッタ大会では4綱領が採択されたのよね。英貨排斥・国産品愛用(スワデーシ)・自治獲得(スワラージ)、民族教育。


こうしてインド国民会議は従来の親英的組織から反英的な組織へと変わっていったんですね。しかしこの段階では、穏健派と過激派の対立から分裂が生じ、イギリスの懐柔政策により運動は沈静化してしまう。


いよいよ設問の1920年代ね。ここではまず「戦争と社会契約」をおさらいしておきましょう。大きな戦争がおこると動員された人々の代償として社会契約が再編されるという考え方ね。模試とか中堅私立は「サラミスの海戦と無産市民の政治的発言権の強化」が大好きでこれを説明させる短文記述がよく見られるわ。


1920年代は第一次世界大戦後のおはなしです。第一次世界大戦に動員されたインド人たちは戦争協力の見返りとして自治を求めていたんですね。しかしそれがどうなったかというとローラット法→アムリットサル事件のコンボ。イギリスはインド人の政治活動を弾圧するのです。


このローラット法の反対からガンディーが本格的に活動してくるのよね。反英行動を民衆に訴えるの。そして1920〜22年には第一次非暴力不服従運動を展開しているわ。ガンディーの歴史的意義は「従来ほぼ都市の知識人層に限られていた民族運動を、一般大衆の参加する全インド的な運動へと高めた」ことね。


そして1927年のサイモン委員会問題をきっかけに29年にラホール大会が開催されプールナ=スワラージ。


サイモン委員会問題というのはインド統治法改正の委員会にインド人が一人もいなかったことね。国民会議派は憤慨。これをきっかけにネルーを議長とするラホール大会で完全な自治(プールナ=スワラージ)が決議されるのだわ。


1930〜34年には第二次非暴力不服従運動が展開されますが、ここで行われたのが、かの有名な「塩の行進」というわけですね。これに対してイギリスは1930〜32年にかけて新インド統治法にむけて円卓会議を開催します。しかし成果は得られず1935年の新インド統治法は完全な自治からははるかに遠かったのですね・・・。こうして1939年に第二次世界大戦が勃発し、インドは再び戦争に巻き込まれていくのでした。

答えと補論


これで設問の答えが出ますね。19世紀の民族運動は親英的で英印の協調を目指した一部の資本家・知識人の運動でした。それが1920-30年代になると反英的で、自治・独立を目的とした、大衆をもまきこむ全インド的な運動へと変わっていきます。それがなぜかというと、「イギリスの帝国主義的な植民地政策に対する反発」と「ガンディーによる運動の大衆化」が理由として挙げられるのですね。


答えはでたけれど、1940年代の情勢も確認しておくわよ。1940年にはガンディーによる第三次非暴力不服従運動が始まるわ。さらに42年には即時独立を要求した「クイット=インディア」(インドを出ていけ)運動が展開されるのね。


こうしたなかで第二次世界大戦によりイギリスは植民地インドを維持する力を失っていきます。1947年、マウントバッテンによりインドとパキスタンの分離独立の裁定がなされ、8月15日ついにインドは独立することになったのでした。


今回の元ネタよ!!

ガンディーの活躍した1920-30年代のインドの民族運動や大衆的な運動は、19世紀のそれと比べて、運動の性格、目標、参加者などの点で異なっていた。インド国民会議結成当時との比較を念頭において、1920-30年代のインドの民族運動や大衆的な運動について、その特徴を述べよ。(30字×4行=120字)(東大1998-2-B)