ラムネ2「ナナミ 7月9日雨√」の感想・レビュー

幼馴染という偶然の関係性を主体的意志により必然にするはなし。陰鬱な雰囲気の良ゲーである。
途中までは明るい幼馴染ゲーだがライター片岡ともさんの真骨頂は鬱展開にあり。
7月9日「晴れ」では偶然が偶然のまま積み重なっていった仲良し幼馴染の世界線αなのだが・・・
7月9日で「雨」を選ぶと、時間を積み重ねることのできなかった世界線βへと突入!!
「主人公くんとの別離」に逃げたナナミは現実に適応できず鬱屈した毎日を送ることになる。
そんなナナミと再び関係性を構築するのがこの世界線βの主題であり、短いのだがグッとくる。おススメ。
(テキストに破綻があったり立ち絵の服が違ったりするのもご愛敬である)

鬱屈したぼっち状態ナナミのキャラクター表現とフラグ生成過程


  • 足手まといとなることを恐れたナナミと主体的な意志決定を投げた主人公くん
    • ナナミは喘息の転地療養により浜辺の田舎町にやってきた引っ込み思案の女の子。最初は関係性構築に戸惑うものの主人公くんとの時間的積み重ねにより何でも分かり合えるツーカーの仲へと発展していきます。過去編のノスタルジック絆深めシナリオはとても堪能できるものとなっています。しかしナナミは自分が主人公くんの足手まといとなっているのではないかと心の片隅で苦悩していくことになります。自分がいなければ主人公くんはもっと高みを目指せるのではないかと。そんな悩みを顕在化させることになったのが、主人公くんが中学受験を父親から示唆されたことでした。主人公くんはナナミに引き留めてほしくて相談し、ナナミも主人公くんの心情をよく理解していたのですが、ナナミの脳裏には足手まといコンプレックスがよぎるのでした。
    • 主人公くんが意志決定をナナミに委ねなければ何も問題なくハッピーエンドを迎えます。世界線αはこの偶然の積み重ねがもたらした成功譚が語られます(世界線αでナナミが主体的意志決定をするのは率先してキャンプファイヤーフォークダンスに乗り出すところくらい)。
    • しかし世界線βで主人公くんは自分で意志決定をせず、ナナミに投げてしまうのです!!主人公くんとナナミの間には幼馴染ルールというものがあり、どちらかが貸し100となれば相手の言うことを何でも聞くという設定でした。そして主人公くんサイドの特例としてラムネをナナミにかけてしまえばいきなり貸し100となる約束があったのです。この約束を利用してナナミにラムネをかけ、ナナミにどうして欲しいかを決めさせようとする主人公くん。選択をゆだねられたナナミはここで主人公くんのために身を引くことを決意し別離を選んでしまうのでした。こうして偶然に積み重ねられてきた関係を、主体的な意志決定で選び取らなかったがために、世界線βが発生し二人は離れ離れになるのでした。



  • 偶然に頼るのではなく、自分たちの力でお互いを求めあうんだよ!!
    • 主人公くんと別れた世界線βのナナミはぼっち状態となり周囲と馴染めずただ諾々と時間を過ごしていました。雰囲気的には『すみれ』に近いものがあります。ナナミの生活は抜け殻のようであり、仕事を抱える母親のために家事炊事をこなし時間を潰す、無為な毎日を送っていたのです。主人公くんも結局中学受験はせず、地元の中学を出て高校に上がり、一抹の寂しさを抱えながら毎日を送っていたのです。そんな二人を応援してくれるのが、親の立場となった『ラムネ1』ヒロインズたち。彼女らの計らいにより主人公くんとナナミは再び出会うのでした。しかし再会してもナナミは主人公くんと昔のように打ち解け合えず、余所余所しいままであり、ついには「さん」づけ呼びに・・・。ナナミは帰郷しても、そこはすでに自分が存在を許される場所ではないと感じてしまうのでした。トボトボと戻ろうとするナナミでしたが、ここで主人公くんが男を見せます。ナナミを手放したくないがゆえに、バス停で引き留めてヤドカリトークを懸命にするところはきゅんきゅんしますね。
    • こうして再び心を開陳できた二人はゆっくりと時間を重ね直すことになります。ナナミがサカナの髪飾りをつけ直すところは破壊力バツグンです。そしてナナミの為に思い出を作ってあげようと奮闘する主人公くんは素敵ですね。チャリ(ジュピター号)で二ケツして展望台へと行ったり、バイクで二ケツしてツーリングしたりするところは琴線に触れます。(ただ主人公くんのバイク好きの描写がイキナリ出てきたのでトートツ感はありましたが・・・)。そして主人公くんは過去にナナミに主体的意志決定を投げてしまったことを後悔し、今度はきちんとナナミを求める決意をします。主人公くんはナナミと一緒にいるために東京の大学を受験することに決めたのでした。
    • 主人公くんの意志決定が示された後はナナミの意志決定のターンとなります。ナナミは主人公くんの心意気を告げられると、またもやネガティヴ思考に陥ってしまいます。自分が主人公くんの将来を阻害する邪魔者になってしまっているのではないか?と自責の念に苦しめられるのです。こうしてナナミは再び主人公くんの前から姿を消そうとするのですが、自分のことを懸命に求める主人公くんの姿を見て、自分自身は主人公くんとどうなりたいのか問い直すことになります。ウジウジしていたナナミが立ち上がる場面はハラショーですね。過去を重ねたナナミが、今度は自らの意志で主人公くんにラムネをかけてとおねだりし、主人公くんとの関係を求める描写は胸が熱くなることこのうえありません。以上により、これまで偶然に頼っていた関係性から脱却し、関係性を必然にするのでしたエンドとなります。