雑録

ニュートンと林檎の樹「朝永修一郎√(共通√)」の感想・レビュー

過去跳躍した17世紀後半ロンドンで若き頃の祖父と交流した主人公くんが劣等感を融解させるはなし。
主人公くんは周囲から個人として認められず「偉大な科学者の孫」であるとの偏見でみられがちだった。
さらに科学者の才能として周囲の期待にも応えることができなかったので、挫折を味わうことになる。
だがタイムスリップした先のロンドンで若き祖父に出会うと、祖父も悩みを抱えていたことをしる。
そして主人公くんもまた祖父を個人として見るのではなく偉大なる存在と偶像視していたことに気づく。
祖父から個性を認められた主人公くんは少しだけ前向きになれるのであった。

共通√は祖父ゲーです。祖父と主人公くんの傷心を慰め合う居酒屋トークがみどころ!


  • 主人公くんが抱える疎外感と劣等感は、祖父もまた抱いていたのだ。
    • 共通√の見どころはなんといっても主人公くんの祖父です。体験版では主人公くんたちがタイムスリップした17世紀後半ロンドンに、現代科学の知識を持つ日本人が出現したことを聞きつけ、もしかしたら祖父ではないかと救出しに行くところでエンドを迎えました。しかしこの祖父は祖父でも若かりし頃の祖父(34)だったのです。こうして製品版共通√では、祖父を中心に話が進んでいきます。
    • 研究職の世界というものはたいそう厳しいものであり、自己の才能に自信があった祖父(34)も現実の前に打ちひしがれることになります。そのため現実を捨てて自分の尊敬するニュートンに会うためにタイムスリップしたとのことでした。祖父(34)は基本的に明るくてチャラい感じの気の良いオッサンでしたが、ステレオタイプ権威主義的な側面もありました。主人公くんに引き合わされたニュートンが金髪碧眼のちっぱい炉利っ子ツインテだと知ると愕然とします。さらにタイムマシンを修復する過程における計測の重視に関する論争で、未来の時間軸では教え子でもある主人公くんの幼馴染と大激突。しかも祖父(34)は反対を押し切り強行するも、失敗に終わります。祖父(34)は思い知ります。自分は、おんな・こどもと侮って自分の才能が彼女らよりも下であると認めたくなかっただけなのだと。


  • 居酒屋憐憫トーク
    • 17世紀後半ロンドンで失敗を重ねた祖父(34)と連れ立って居酒屋へ行き、傷心を慰め合いましょう。祖父(34)は現実世界における煩悶や葛藤を主人公くんに吐露します。主人公くんはそれを聞いて「偉大なる科学者」として仰ぎ見ていた祖父を身近に感じるのです。そしてそのことは同時に主人公くんが祖父を祖父個人としてみるのではなく「偉大なる科学者」として見ていたことに気づかせる契機となったのです。そうです!主人公くんは自身が一番忌避していたことを、自分が無意識にしてしまっていたことを自覚するのです。つまり、主人公くんは、かねてから自分が個人として扱われずに「偉大なる科学者の孫」として見られることに辟易していたわけですが、まさにその行為を自分自身がしていたという矛盾に気づくのですね。主人公くんは精神的に成長することになります。そして主人公くんは祖父から一人前の個人として認められることで長年の鬱屈が氷解されていきます。


おめぇは、誰かの為に本気になれる人間なんだな。それもそれで、一つの才能だと思うぜ。誇りに思うぜ。祖父としてな。その言葉はもしかしたらずっと俺が求めていたものだったかもしれない。じいちゃんの期待に、じいちゃんの孫にかかる周囲の期待に、応えられなかったことで、俺の中に形成された歪な形の自己憐憫が、心の中で少し、溶け始めたような気がした。