幕末尽忠報国烈士伝-MIBURO-「第一部 京都編」の感想・レビュー

体験版は8月18日の政変まで。製品版第一部は芹沢処刑〜鳥羽伏見の戦いが中心となる。
新撰組TUEEE状態を楽しむのは池田屋事件禁門の変がピークで、寧ろ時代に翻弄される描写が中心となる。
新撰組は内部における伊東甲子太郎との権力闘争が中心となり、大きなイベントにおける絡みが少なくなる。
歴史の大きなうねりに対して、一介の戦闘集団にしかすぎない新撰組では次々と隊士たちが倒れていく。
歴史における個人の役割なんてものはちっぽけに過ぎず、命を散らせていく様子をお楽しみください。

幕末史の展開と流れ


  • 大和行幸
    • 長州が「大和行幸」に乗じて天皇を担ぎ、そのまま京都から江戸へ進撃して倒幕しようとする計画を発動。これを防ぐために芹沢鴨会津に利用されます。長州は会津の在京の兵の入れ替えを行う隙をついて大和行幸を行おうとするのですが。芹沢は会津の兵の入れ替えを行わせないように、騒動を起こせと会津重臣に依頼されるのです。そんなわけで芹沢鴨は大和屋に火を放ちます。こうして会津の入れ替えの兵たちが留まることになり、長州の大和行幸のねらいを失敗させたのでした。
    • しかし会津は真実を知った芹沢を生かしておくはずもなく、近藤たちに芹沢を討つように唆します。芹沢を討たねば役目を説かれて百姓に戻る他無くなります。こうして芹沢は討たれることになるのですが、この事件ではオリジナルキャラである主人公くんのイモウトが一緒に斬殺されてしまいます。怒り狂った主人公くんは、死線の魔眼に覚醒し、芹沢を殺すのでした。以後、主人公くんは対人だけでなく、布陣の死線も見つけることができるようになっていきます。しかしながら主人公くんはイモウトが斬殺されたことに耐えきれず、イモウトがいたという記憶を封じ込めてしまうのです。



  • 池田屋事件
    • 8月18日の政変で長州が朝廷から追放されましたが、京都にはまだ尊攘派が残存していました。その尊攘派たちの池田屋での密会を位置猛打にしたのが新撰組でした。新撰組の名を世に知らしめることになったことで名高い池田屋事件ですね。新撰組を二つに分けて探索。近藤組が池田屋での密会を発見し、乗り込んで討ち取ります。日本人が大好きな少数精鋭で奇襲攻撃をしかけ多数を討ちとるパターンの発動です。



  • 禁門の変
    • 池田屋事件に刺激され強硬的になった長州藩が京都に攻めてきます。これが禁門の変。一夜にして鎮圧されますが、京都は火の海となります。オリジナル展開としては異能を使った主人公くんが布陣図から御所の警備の弱点を見抜き、孝明天皇が殺害されそうなところへ駆けつけ救出しちゃったりしてます。そして禁門の変の長州のボスキャラ:久坂玄瑞の鷹司邸での自殺シーンも見せ場として用意されており、幕末の争乱は徳川が滅びぬ限り戦いは続くとの呪詛の叫びを上げさせつつ自ら首を斬るのでした。



  • 第一次長州征伐・長州藩内戦・薩長同盟・第二次長州征伐
    • 新撰組の活躍を楽しむのは禁門の変まで。ここからは内部対立の始まりでござい。新撰組の拡大のために、伊東甲子太郎を抱え込んだからさぁ大変。伊東甲子太郎は討幕派であり、新撰組の分裂工作を仕掛けてきます。以後、新撰組は歴史の大局に関与するよりも、内部抗争の方に主眼が置かれていきます。まず毒牙にかかったのは、これまで新撰組を支えてきた山南敬助。局長を近藤ではなく山南にするという策謀が張り巡らされていきます。そして本作の解釈では、山南さんは自ら処刑されることで新撰組の解体を防いだという説をとり、悲劇の死として扱われます。ついでにこの後から粛清の嵐が起こり、伊東甲子太郎の策略により富商の娘で勘定方の河合耆三郎や四番隊隊長松原忠司らがリタイアしていく様子が描かれていきます。
    • 新撰組伊東甲子太郎に搔き乱されている間に、歴史は進んでいきます。禁門の変の結果、長州を朝敵とした幕府軍は長州を攻めるのですが、これに対して長州は恭順派が藩政を握り幕府に全面降伏。長州藩の壊滅は避けられました。こうして第一次長州征討では長州藩を叩き潰す機会を逸してしまいます。その後、長州では内戦を経て奇兵隊率いる高杉晋作が藩政を掌握し、討幕へと傾きます。今までは幕府寄りであった薩摩藩西郷隆盛らが藩政を握り討幕を目指すようになり薩長同盟が成立するのでした。長州藩の動きを危険視した幕府は第二次長州征伐を行うのですが薩摩に援助される長州を落とせず、将軍家茂の死により休戦・撤兵となります。



  • 大政奉還・王政復古・小御所会議・鳥羽伏見の戦い
    • 新撰組サイドとしては伊東甲子太郎がとうとう御陵衛士を名目に分離独立。新撰組は分裂の危機に陥り、斎藤一藤堂平助が引き抜かれていきます。斎藤一は近藤派のスパイですが、藤堂平助の揺れる感情にスポットが当てられます。そして坂本龍馬暗殺を経て、ついに御陵衛士を屠ることになり、伊東甲子太郎を殺害、そして伊藤についていってしまった藤堂平助が殺害されるのでした。
    • 歴史の大きな流れとしては、将軍は14代家茂の後、15代に慶喜が就任します。慶応の改革についてはあんまり触れられていません。そして倒幕に反対する孝明天皇も死去。ここからは慶喜と薩摩の謀略合戦が中心となっていきます。倒幕を目指す薩長に先んじて、慶喜大政奉還を行います。大政奉還が成功してしまえば、倒幕の正当性を失うため、討幕の密勅をでっちあげるのですが、結局は失敗してしまいます。そして大政奉還しても朝廷に実質的な政治力はないため、引き続き慶喜が政治を担うこととなります。これに対して薩長サイドは王政復古の大号令を出してクーデタを敢行。この王政復古の大号令により将軍と幕府は滅びます。本作においては王政復古と小御所会議を混ぜて表現していますね。小御所会議により辞官納地をすることになった慶喜ですが、大坂城に退いた後にも政治工作により勢力を盛り返すなど粘りを見せます。しかし先に暴発したのは京都ではなく江戸。薩摩は江戸で騒擾を起こし、幕府サイドを挑発していましたが、ついにこらえきれなくなった幕府軍が江戸の薩摩藩邸を焼き討ちにしてしまうのです。こうして慶喜薩長と戦うことになり鳥羽伏見の戦いが始まります。新撰組はここでもよく戦うのですが、錦の御旗が掲げられると慶喜は戦意喪失。家臣たちを捨て、船で江戸に戻ってしまったのでした。ここから新撰組戊辰戦争の中で次々と散っていくことになるのです。戊辰戦争から第二部が始まります。