幕末尽忠報国烈士伝-MIBURO-「第二部 戊辰戦争編(土方歳三√)」の感想・レビュー

フラグへし折り式選択肢分岐。五稜郭の戦いで壮絶な戦死を遂げる所まで読むことができる。
ただの殺戮マシーンであった土方歳三が徐々に将としての人間的成長を果たし器を広げていく所がみどころ。
ジリ貧消耗戦!勝つときばかり戦うのとはわけがちがうぞ、負けると分かって戦うからこそ潔いのだ!
五稜郭の最終戦まで土方歳三に付き添った主人公くんだが、最後の最後で歳三の姉に最期を報告するために離別。
多摩にまで辿り着き歳三の活躍を語る主人公くんには思わず涙が・・・。
しかし主人公くんのイモウトが実は生きてましたーとかご都合主義エンドで終わった!!

戊辰戦争の流れと土方歳三の成長




  • 流山における近藤勇の投降
    • 死に場所を探していると表現されていた近藤勇でしたが、流山でとうとう降伏するに至ります。主人公くんと土方歳三新撰組のことを託す近藤。近藤は百姓出身であった自分が幕臣にまでなれたことで満足しており武士として生き切ったという言葉を残していきます。しかしその真意は作中で勝海舟によって明らかにされます。振り上げたこぶしはどこかにおろさねばならない。近藤勇の投降は薩長土の恨みを自分に引き付ける意図があったのだと。こうして近藤勇の投降は諦めではなく、後進を活かす説が唱えられ美談として終わります。



  • 宇都宮
    • 近藤勇が投降してからというもの土方歳三はメンタルクラッシュ。自分が近藤勇に縋って夢を押し付け重荷を負わせていたのではないかと囚われるようになってしまいます。こうして、土方歳三近藤勇を護送した有馬藤太を殺して自分も死ぬと決意したのでした。進軍を日光から宇都宮へ変えたのも有馬藤太と戦うためであり、少数の手勢で宇都宮城を奪取。そして奪った宇都宮城を餌にして有馬藤太をおびき寄せるのです。有馬藤太さえ倒せればそれでよい。狙い通りに土方歳三は有馬藤太を剣を交えることに成功するのですが、窮地に陥ります。そのピンチに駆け付けるのが我らが主人公くん。一瞬の隙をついて追いつめられていた土方歳三は形勢逆転し、有馬藤太を殺害するのでした。しかしこれでもう土方歳三にとって生きる理由はなくなり、ただ死なないから生きているだけの状態に成り下がってしまうのでした。そして折角奪取した宇都宮城も陥落します。



  • 会津
    • 会津に来たものの捨て鉢になってしまっている土方歳三。そんな土方歳三を諫めることこそ我らが主人公くんの務め。言っても分からないのなら身体で分からせてやるよと肉欲のままに蹂躙します。これにより土方歳三は生きる力を取り戻し、勝って近藤勇に着せられた逆賊の汚名を雪ぐことを第二の人生の目的に据えます。さらに近藤勇が死に、新撰組局長を継ぐ中で、大将としての気質を自問するようになり、ただの殺戮マシーンから人を率いる人材へと人間の器を成長させるのでした。しかし会津での戦いは敗北。ここで斎藤一との別れとなります。仙台に落ち延びようとする土方歳三に対して、斎藤一会津に残ることを選びます。と、いうか大村益次郎強すぎ。主人公くんたち善戦するのですが、弱点を指摘しそこを対処しているにもかかわらず、敵は一枚上手で対策してるにも関わらず上手くいかないので、消耗戦のストレスを上手く表現できていると思います。



  • 仙台〜蝦夷
    • 敗戦を重ねながら将としての器を大きくしていく土方歳三。そんな土方歳三は仙台にて榎本武揚に出会います。ここで持ち上がったのが、勝海舟が唱えていた蝦夷共和国の話。榎本武揚は開陽丸で蝦夷に渡り、そこに新たな国を作って対抗しようと持ち掛けるのです。この話に乗ることになった新撰組生き残りたちは蝦夷へ渡ります。電光石火の勢いで函館を制圧した土方歳三たちは、その余勢をかって松前も占領し、蝦夷地を新政府から切り離すことに成功したのでした。これら一連の戦いのなかで、土方歳三は近藤や山南だったらどのように振る舞うかを考えるようになり、柔軟な組織作りができる魅力ある人物へと育っていくのです。成長物語。
    • 逆に能力的に微妙な存在として描かている榎本武揚で、開陽丸を沈没させていたり、無謀な接舷作戦を行い軍艦失わせてたり、根回し工作で選挙に勝ったりとか、このシナリオ読んだ人は榎本武揚に対して変なイメージを抱いても仕方がないように感じます。



  • 五稜郭の戦い
    • 土方歳三が将としての器に成長し、近藤勇が投降した真意を理解できるようになったという話。ここで幼年期のエピソードを土方歳三に語らさせるのも憎い演出です。封建社会により職業選択の自由がなく、生まれによって決められた人生をただ甘んじて受け入れなければならない状態に憤懣を抱いていた土方歳三。そんな土方歳三が出稽古にやってきた近藤勇にコテンパンに打ちのめされ、自分が井の中の蛙であったことを思い知るのです。こうして武士になりたいといいながら、何もせずに喚き散らすだけのバラガキが近藤勇により感化されたのでした。そんなエピソードが挿入されれば、近藤勇が殺戮兵器ではなく将として集団を率いているシーンには思わず涙が出てしまうでしょう。二股口の稲妻型塹壕戦は燃えますね。
    • しかし土方歳三の奮戦むなしく、防衛ラインは突破されてしまい、最後の戦いへ。死地に赴く土方歳三は最後の最後でこれまで一緒に戦ってきた主人公くんに別離を要求します。自分の最後の雄姿を姉に語ってほしいと。渋る主人公くんに対し、命令であり従わねば斬るとまでいう土方歳三。主人公くんとの別れに際して、土方歳三はなぜ近藤勇は自ら投降してしまったのかを理解できたのでした。土方歳三は一本木関門で特攻し戦死します。



  • ご都合主義エンド
    • 土方歳三との約束を果たすため、多磨の土方の実家に辿り着いた主人公くん。そこで、土方の姉に新撰組として歳三がどうであったかを涙ながらに語ります。主人公くんの涙を感じた姉は、歳三がどんなにか慕われていたかを察するのでした。こうしてイイハナシダナーで終わればよかったのですが、最後の最後でご都合主義が炸裂。なんと芹沢鴨との抗争に巻き込まれて死んだと思われていた、主人公くんのイモウトが生きていたではありませんか。どうやら京都の戦乱に巻き込まれないように多磨に送られていたようです。えー・・・この要素っているの!?他のルートでの重要な伏線とか?何にせよ、普通に主人公くんが涙して土方の姉が理解してくれて、それでエンドで良かったのでは?