金色ラブリッチェ「エル√」の感想・レビュー

封建的束縛により思考が凝り固まった姫騎士を解放し主体的意志を確立させるおはなし。
イモウト大好きなお姉ちゃんは自分よりイモウトを優先させるが故に視野狭隘になってしまうの。
思考を停止し忠義と称して盲目になるのは、忠誠ではなく依存であると諭してあげましょう。
そして姫騎士さまがどのような道を選び取るのか、見守ることになります。
しかし、あれだけ王家と宰相家の対立とか伏線張っておいて殆ど深まらず味付け程度に終わる。
騎士院派とか楽団派とかの確執が描かれそうな雰囲気はどっかへいっちゃった・・・

エル√概要


  • 忠義という名の依存
    • エルは宰相家の血筋を引きし貴族の娘。王女;シルヴィアに仕える姫騎士さまでもあります。しかしなぜ宰相家の貴族が姫騎士となっているのでしょうか?それにはシルヴィア養女問題がありました。シルヴィアは王家の血統ではなく宰相家の人間でした。対立していた宰相家と王家が人質交換による和解を唱えた時に、人質として王家にだされたのが、シルヴィアだったのですね。シルヴィアとエルは実の姉妹であり、エルはイモウトのシルヴィアを人質に出してしまったことを大いに悔やんでいたのです。そのためエルはシルヴィアのために、自分が姫騎士として側近になろうと、血の滲むような訓練を重ね、ついにその地位を得たのでした。こうして家臣としてイモウトに仕えることになったエルでしたが、お堅い考えに縛られがちであり、忠義を自分のよりどころとしていたため、その関係性に依存することになってしまうのです。主人公くんにはこのお姉ちゃんのイモウト依存を断ち切り、エルに主体的な意志を持たせることが使命として課せられます。


  • 偽装恋人モノ
    • 主人公くんとの馴れ初めは、パパラッチ問題からスタートします。姫騎士として王女シルヴィアに仕えるエルは、スマホで盗撮されSNSにUPされてしまうのです。次第に姫騎士祭りはエスカレートしていくのですが、それを解決するのに一役買ったのが主人公くんであり、付き合っている男性がいるときちんと判明すれば大衆は興味を失うだろうという流れになります。そして始まる偽装恋人。この関係性を通して時間を重ねる中でお互いに好感度を高めていきます。一緒に夕飯を作って食べてシャワーの後の髪の毛を乾かしてあげるっていう流れは結構好き。
    • しかし結構展開が雑。途中でエルではなくシルヴィアが人質として養女に出されたのはなぜか!?とかいう深刻な伏線も張られかけるのですが、それはエルが音楽に才能がなくジャイアンよろしく音痴であったからという笑い話で済まされます。エルが主人公くんの性癖を理解するためと称してクッころ系姫騎士ジャンルに手を出すうちにその沼に嵌っていくメタ的ギャグパートもあります。クッころ姫騎士らしく強く押されるとチョロインと化す展開が炸裂し、あとはもう肉体関係へ。肉体関係の前のほんわか関係の方が良かったかもしれません。
    • で、エルは主人公くんに諭され、依存ではなく主体的な意志の確立を目指します。シルヴィアに仕えるにしろ、フェンシングの道を選ぶにしろ、自分の人生なら自らが決めろと。この後は、基本的にエルに選択を委ねることになるので、シナリオもなんか冗長っぽく感じてしまいます。そして最終的にエルはフェンシングの道を選び取り、最後にシルヴィアとの関係性にも決着をつけ、人生を自分で切り開きましたとさハッピーエンドを迎えます。