抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?「片桐奈々瀬」シナリオの感想・レビュー

多様性を認めようとせず、社会的マイノリティを抹殺しようとする社会を変革するはなし。
際限が無い人間の欲望を煽り続け、賭博や性産業に特化した資本主義が行きついた末路を風刺。
イメージとしては『火の鳥』の望郷編の終局部を彷彿とさせる(望郷編は秩序崩壊と滅亡で終わりますが)。
「役に立つ」人間しか認めなかったり、多数派を絶対正義として同調圧力をかけたり、タイムリーなテーマ。
観光資源による地域社会の活性化と称し、経済効果だけに走り歪な乱開発を行うどこかの島国に警鐘を鳴らしている。

多様性を認めず社会的マイノリティを抹殺し続けると、最終的には全体主義となっちゃって、同調圧力に組み込まれた時点で、大衆もその支配に加担しているのに、戦後は煽動されていただけと被害者面して開き直るのです。(無責任の体系)

  • 人間の欲望を煽動した経済発展至上主義の末路
    • 物語の舞台となる島は、産業の衰退と過疎化に対し、性産業を観光資源として経済開発を行いました。この政策により島は潤ったのですが、伝統的な島民の産業は崩壊し、トリクルダウンよろしく経済発展のおこぼれに寄生するだけとなったのです。さらに、経済発展至上主義はそれに反する人々を迫害するようにまでなっていくのです。同調圧力により、その政策が良いか悪いかの是非を問うことなく、これは条例だから従わないのが悪い、これはルールだから従わないのが悪い、経済発展は正義だから従わなければ悪いと、個人が大切にしている思想信条まで踏みにじりにやってくるのでした。--当初は、やんわりと性産業に従事することを断り、ターゲットにされないよう、目立たないようにと息をひそめて過ごすだけの日々を送っています。しかし、そんな中で主人公くんたちは偶然力を手にすることになります。反体制派のグループが主人公くん達に資金援助を行い、叛乱を起こすように促してくるのです。今まで無力だった主人公くんは抗う術を手に入れ活躍をするのですが、どうやら反体制派のコマにされている様子(奈々瀬シナリオでは描かれませんが)。
    • 最終的に、県知事の隠し子騒動を暴露しスキャンダルをすっぱ抜くことで世論誘導を行い、性産業による地域活性化策を潰すことになります。するとどうでしょう、一つの産業に依存しモノカルチャーとなっていた島は急速に寂れてしまったのでした。それでも主人公くんはヒロインたちと共に島で暮らしていきます。緩慢な衰退に焦り、無理な経済活性化を図った末路なのでした。
    • 近年の某東アジアの島国の地方社会において、規制緩和で大型ショッピングモールが田舎に乱立し、個人商店が軒並み潰れたけれども、ネット通販による流通形態の変化により大型ショッピングモールも次々と閉店してぺんぺん草も生えなくなった挙句、労働力不足等により流通業も滞るようになった結果、廃村に陥った事例を思い起こしました。


  • 大義名分を掲げながらも結局は自己都合なのではないか
    • 主人公くんが結局のところ自分の都合だけで社会変革を大義名分にしているのではないかと悩むところが結構好き。主人公くんは巨根であることから幼少期にイジメを受けることになります。その際、奈々瀬もまたイジメを受けており、二人で瑕の舐め合いをするのです。奈々瀬がイジメを受けていた理由が生殖行為を拒んだからであり、性産業で観光資源開発を行う島で排斥の対象となってしまったのでした。幼少期の主人公くんもまた、同調圧力により島の洗脳を受けており、処女を気持ち悪いと思うような常識を植え付けられていたため、折角心を通わせた奈々瀬のことを気持ち悪いと思ってしまうところが見所となっております。そんなわけで主人公くんは、自分が奈々瀬をフツーにしてあげるんだと息巻き、襲い掛かります。未遂に終わるのですが、我に返った後、恐怖におびえる奈々瀬の表情を見た主人公くんは、自分のしでかした過ちにおののき、逃走するのでした。このまま幼少期は二度と会わずに分れることになるのですが、この事件を契機に、主人公くんは処女崇拝を信仰するようになったのです。
    • 主人公くんが生殖産業に従事することを拒むのは結局のところ、巨根であることをイジメられたことに起因していました。そのため敵対勢力は、巨根による復讐を持ち掛けます。幼少期はどうであれ、現在では巨根はプラスイメージであり、並み居る女たちをよがらせることで男たちからは羨望と尊敬を受けることになるのだと、説かれます。そして、どんな大義を掲げても個人的な恨みに過ぎないと看破されてしまうのです。そんな主人公くんを支えるのが、ヒロインズであり、主人公くんは人間なら誰しも隠しておきたい闇を抱えており、それは誰にでも暴露したいというわけではなく、理解して受け入れてくれる人にだけ明かしたいのだという境地に辿り着きます。思想・信条の自由というやつ。こうして主人公くんは、島の解放に成功するのでした。