時間停止と不可避な運命 体験版の感想・レビュー

時間停止を題材にしたお気楽なキャラゲーかと思いきや、以外にしっかりSFしていて割と面白い。
日常に倦みながらも諾々と過ごしている主人公くんが時間操作の時計を入手するとかまんま『クロノクロック』やんけ。
しかしクロクロとは異なり、ヒロイン攻略の要素として時間停止を絡めており、SF小説の古典にも触れていて楽しい。
一見すると薄っぺらキャラゲーなヒロインたちも、色々と負の要素を抱えており、キャラ造形に深みも感じられる。
特にヤンデレ妹が物語を動かす原動力となっており、兄の部屋に侵入し、時間停止の秘密を突き止める所で体験版は終わる。
シナリオの明確な主題や目的は明らかにされなかったが、少女救済だけでもそれなりに読めそうかもしれない。

お気楽時間停止キャラゲーかと思いきや、ヒロインの人物像の掘り下げにも期待できそう? ヒロインたちが時折見せる陰りの部分をどこまで描けるか。

  • クラスメイトの光井さん
    • 冒頭部分はどこにでも転がってそうな時間停止を扱ったキャラゲーです。時間停止の時計を貰った後、何かとチョッカイをかけてくる隣の席の女子:光井さんに軽い報復をしてやろうとするところから物語は動き出します。光井さんのおっぱいを揉もうとしたら、時間停止解除。なんと接触したら時間停止は解けてしまうのでした。問い詰められるままに能力を白状することになったのですが、それを知った光井さんはワクワクが止まりません。持ち前のテンションで主人公くんを振り回していきます。ここで粗製乱造されたキャラゲーだったら、はいはいハルヒ系ヒロインとキョン系主人公ねー・・・パターンはいったーとか言う所ですが、なかなかどうして光井さんは複雑な家庭環境であることが伏線として張られており、鬱屈した私生活を送ってそうな雰囲気が醸し出されています。製品版では光井さんの家庭環境と母親とのわだかまりをどの程度描けるかで面白さは変わるでしょう。


  • 年下枠:後輩&イモウト
    • 次に着目されるのが年下系ヒロインズ二人。親友関係にある後輩の山吹さんと妹の桜良です。山吹さんは主人公くんの時間停止の異能によりトラックに轢かれそうなところを助けられてキュンキュンしてフラグ構築が始まります。キャラ属性としては『ムー』愛読者系属性が付与されており、未確認生物や超常現象に興味があるとか。一方で妹の桜良。この桜良が本作の一番の原動力といっても過言ではありません。幼少の頃、兄の目の前で交通事故にあっており、もともと兄に対して抱いていた忠孝の念が、リハビリに付きっ切りになってくれたこともあってか恋愛感情を抱くようになっています。その想いの深さは毎日兄を思って秘所を濡らしてしまうほど。主人公くんが今のような冷めた性格になったのも桜良が原因であるようでその伏線も見逃せません。さらに桜良は兄にゾッコンであるため、光井さんと主人公くんの関係がきになってしょうがありません。そしてついに兄の部屋に秘密で侵入し、兄がつけている時間停止能力のメモを盗み見ただけでなく、時間停止の時計を無断使用してしまうのでした。体験版ではここでお開きになりますが、イモウトの暴走スゲーなと思うことしきりです。

  • 先輩枠:SF小説好きの先輩とグランドエンド要員の炉利
    • まず本好きの先輩枠。本好きのキャラと仲良くなる時に懸念されるのが、たいして本に思い入れがないのにフラグ構築の手段としてだけ読書が扱われること。これやられると残念な気分になるし、しかも『お前の日記帳』のようにヒロインに近寄る口実として借りるだけで借りて読みすらしない展開になると、もう涙が出てきます。しかし本作では、ポーズとしてのSF小説ではなく、SF小説に思い入れがある様子が散見されていますし、主人公くんもきちんと興味深く読んでくれますので、重畳です。さらに主人公くんは時間停止の能力を明らかにするために、色々とSF小説を参照して模索していくので、その過程も楽しいですね。
    • ラストは、グランドエンド枠の炉利。主人公くんに時間停止の時計を与えたそもそもの張本人です。認識書き換えの能力を使って主人公くんの家庭に入り込み、舞台役者を目指す年齢不詳な現役JK3とか言い出します。なぜ主人公くんに時計を与えたのか、主人公くんとはどんな関係なのか、その目的は何なのかが気になります。以上のようにただのキャラゲー的なノリで終わるかと思いきや、色々と人物像に深みがありそうですので、どこまでシナリオをきちんと描けるかで面白さが決まりそうです。10月発売のシナリオゲーは今のところこれ以外には異能バトルだけなので、もしかしたらプレイするかもしれません。