雑録

月の彼方で逢いましょう「佐倉雨音」シナリオの感想・レビュー

天才だが中二でぼっちなネトゲ廃人少女を社会復帰/更生させるはなし。
両親に愛されてはいたものの結果としてネグレクトされてしまった雨音を救え。
高校時代に形成された関係性が大学・社会人になっても続き、お互いを支え合うのがステキ。
高校編では頑なな天音の心を解きほぐし、社会人編では亡き父親と和解する。

佐倉雨音のキャラクター表現とフラグ生成過程

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  • 高校編 中二でぼっちなネトゲ廃人を救え!
    • 佐倉雨音は天才金髪帰国子女ガール。しかし母親との死別、父親からのネグレクト、日本での差別と凄惨な体験をして、人と交わることを避けるようになっていました。しかしそれでも、母親の遺言である学校へ行って高卒の資格を取れとの言葉を律儀に守り、面白くもない高校へと通っていたのでした。主人公くんとの出会いは選択授業の情報の時間。たまたま席が隣り合わせになったことから関係性が生じ、webサイトを作るというグループ課題をこなすことで、仲が深くなっていきます。
    • ノベルゲーの主人公の性格がルートによって異なるのはよく見られる現象であり、この雨音ルートの主人公くんは実にアグレッシブ。東鳩2で例えるならこのみやタマ姉ルートでは煮え切らなかったタカくんが、ささらルートでは学級委員となり、生徒会にまで入るというアグレッシブさを見せたのに通じるものがあります。他人と接する事に戸惑う雨音にもグイグイ行きます。これにより本当はぼっちで人恋しい雨音の好感度はうなぎのぼりとなるのでした。雨音が情報の授業で先公をおちょくったことを庇ったことをきっかけに一挙にフラグ構築が進み、一緒にバイトをし、さらにはネトゲに興じるようになります。雨音に唆されて廃課金戦士となっていく主人公くんもまた一興です。
    • 天涯孤独となった雨音がそれでもぼっち人生を乗り越えるためにとった自衛の手段が亡き父親に復讐することでした。その手段として、コンピュータ機器の開発者であった父親が残した新作スマホの発表を、台無しにしようとするのです。それゆえ、主人公くんを一度は遠ざけようとする雨音でしたが、覚悟を決めた主人公くんは一蓮托生。シナリオの作風はスパイアクション風になり、新作スマホの発表会にテロ活動として乗り込むのでしたが・・・敢え無くアッサリ捕まります。まぁCEOが雨音の亡き父の友人でありアッサリ解放されるのですがね。この作戦によりこれまで雨音を支えてくれていたAIが消えたりなんだりするのですが、事件を通して雨音は主人公くんとフラグを形成するのでした。傷心の雨音を癒すのは、主人公くんが中学時代に創作した黒歴史である中二系異能小説!デレ化した雨音の可愛さをご堪能ください。


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  • 社会人編 死んだ父親の真相を探り、和解せよ
    • 雨音ルートの良さは、高校時代に築かれたフラグが折れることなく、大学・社会人へと繋がっていくことです。お互い辛いときに支え合う姿がホッコリしますね。雨音がいる主人公くんは他のルートのように仕事で擦り減らされて死んだ魚のような目になることもなく、充実した社会人ライフを送っていきます。高校編でも雨音が主人公くんの家に遊びに行く場面がありましたが、両親を亡くした雨音が主人公くんのダディやマミィに受け入れられて家族するところはグッときます。
    • 社会人編でテーマとなるのは、雨音の死んだ父親との和解。本作品はシュタゲよろしく時間軸を越えてやりとりできるメールが題材となっていましたが、その背景説明もなされます。タイムリープ系作品の類型としては人間が種族として内包している集合的無意識のパターンです。主人公くんは雨音のために亡き父親の足跡を辿り、取材を重ねていきます。そして娘を愛するが故にネグレクトしてしまった真相を明らかにするのです。主人公くんはこの取材の内容を、「中二系異能小説」のかたちで出版し、バカ売れすることに成功します。この主人公くんの活躍が追い風となり、雨音が開発していたAI搭載型のスマホが社内会議で認められ、発売されることとなったのでした。まさに二人三脚!
    • で、過去とやりとりできるスマホを使って、雨音はまだ生きている過去の両親と交信!父親と和解し、母親とも会話をすることができました。雨音は主人公くんと結婚する際、家族の幸せを知らない自分が、子供を生んで家族を形成することができるであろうかと悩んでいたのですが、両親との交信により、その不安も払拭されます。こうして無事に主人公くんと結婚式を挙げることができました。エピローグでは二人が娘と共に、アメリカで月虹を見るよエンドで幕を閉じます。

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