北へ。〜Diamond Dust〜まふゆ(森永冬真)シナリオの感想・レビュー

LGBTのうち性同一性障害を扱い、男性カップルが結ばれる為の諸問題を描く。
親との確執、生物的な性と社会的な性の相克、世間からの目、友人たちからの承認・・・
ハードルを乗り越えた先、同窓会で友人達から承認されるエンドはグッとくる。
社会的な常識というのは元からあるものではなく、創出されるもの。
異端の人々が偏見を持たれず社会から当然だと受け入れられるには地道な努力が必要となる。
FDで「一番祝福してくれそう」とあてにしていた佐々木から否定される演出が良い。
そしてその佐々木が音頭を取って高校時代のメンバーを集めてくれるのである。

性同一性障害のヒロインが自己の幸せを掴み取るためのある意味理想のハッピーエンド

本編 Diamond Dust

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  • 隠喩「白いトマト」
    • 北へ。シリーズ第2弾でありDiamond Dustは、現実に鬱屈した主人公くんが北海道の各地の大学に進学した友人連中の所へ遊びに行くという設定です。札幌編では北大に進学した森永冬真のもとへ遊びに行きます。冬真と一緒に観光しながら友情を確かめるも良いものですが、冬真からは「まふゆ」という女の子を紹介されるのです。で、そのヒロインは勿論冬真の女装した姿であり、冬真は自分で自分のことを紹介したのです。高校時代から冬真は主人公くんに惹かれており、本当の自分を受け入れてもらいたかったのです。生物学的な性は男性だけれども社会的な性が女性であることの苦しみ。冬真は母子家庭で父親の顔は見たこともないと語ります。そして画家である母親も息子の事をある程度は受け入れながらも、本当は生物学的な性で生きた方がいいのではないかと苦悩しています。
    • その苦しみは「白いトマト」と表現され、作中で何度も出てきます。社会常識ではトマトと言えば誰しもが赤いトマトを思い浮かべるわけで、白いトマトなど世間的に受容されるわけがないと。冬真も冬真自身で、まふゆが主人公くんと関係を深めていくと、怖くなってしまいます。このような状況の中で、主人公くんは戸惑いながらも男性の冬真でも女性のまふゆでもなく、個人としての冬真・まふゆを受け入れていきます。関係性が壊れるから想いを打ち明けられないという冬真を受容できれば、フラグは成立さ。母親も煩悶の果てに、まふゆのことを理解できるようになります。
    • 社会的マイノリティなまふゆでも、主人公くん・母親・オカマバーの店長など理解者は少なからずできました。夜の人工的なダイヤモンドダストを見てちょっぴりおセンチななるまふゆを見て、主人公くんは一念発起。今度は朝のダイヤモンドを見せようとします。そして、今のこの状況があればよいというまふゆに対し、主人公くんは今だけじゃなくて未来もだ!と将来に渡りまふゆと一緒にいることを誓いハッピーエンドを迎えます。
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FD 〜Diamond Dust + Kiss is Beginning.〜

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  • 友人からの承認
    • 本編のエピローグでは、高校時代の友人連中から祝福を受けてエンドを迎えますが、FDではその承認を得るための過程が描かれます。未だに不安定になるまふゆに対し、根本的な問題を解決するには、友人連中に本当の事を話さなければならないと主人公くんは説きます。そして北海道一周弾丸ツアーを敢行し、4日間で各地の友人のもとを訪問していきます。まふゆが冬真だと信じられない友人たちに、当人たちしか知らない高校時代のエピソードを披露していく演出が光ります。
    • 男性カップルの関係を否定しそうなトモダチからクリアしていくのですが、実は最後の佐々木が一番の難関でした。教員志望の佐々木はLGBTにも理解があり、冬真が社会的な性として女性として生きることにはアッサリと肯定してくれます。しかし高校時代の友人たちが生物学的な性が男同士なのに結ばれることには今すぐには納得できないとも語るのです。去っていく主人公くんとまふゆの後ろ姿を見つめる佐々木の一枚絵のCGがなんとも哀愁を醸し出しています。札幌に戻りJRタワーで夜景を見ながら友人たちとのことを振り返る主人公くんとまふゆ。一番賛成してくれると思っていた佐々木の反応を見て現実の辛さを知ります。
    • しかし、北海道から帰る最終日、デート中に突如大通り公園に呼び出されると、そこには高校時代につるんでいた男友達メンバーズの姿が!!何と主人公くんとまふゆの関係を拒絶した佐々木こそが、音頭をとってメンバーを集めてくれたのでした。突発的に同窓会が開始され、ヤロー連中から祝福を受け同性カップル承認されます。まだまだ社会的には認知されていないLGBTの問題、しかしそれは遠い世界の問題なのではなく、もしかしたら自分達にも起こり得るかもしれない身近な問題。もし自分達にLGBTの問題が起こったら、直ぐにとはいわなくとも、徐々に受け入れてくれる人々を増やしていけば、やがてそれが新たな常識になるのだとハッピーエンドを迎えるのでした。
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