【巡検メモ】博物館等施設見学8日目 群馬滞在編①群馬県立歴史博物館

歴史系博物館の展示パターンとして、文脈関係なく博物館が見せたい主要展示を第一に持ってきて、それから通史に入るケースがある。群馬県歴史学物館は「埴輪」が主要展示であり、まず第一に埴輪を見せてから、古墳を紹介し、古代東国文化を推してきている。そして埴輪と古墳を見せた後にまた改めて原始からの通史が始まる。


  • 上毛野とヤマト政権
    • 群馬県立博物館は古代東国文化に力が入れられており、古墳や埴輪、馬文化などからヤマト王権と連合を組んで重要な地位にあったことが繰り返し述べられている。しかし、従来の有力豪族がどのようにしてヤマト王権に組み込まれたのかについては、全く無視されている。何か知らないけど古代の上毛野の有力豪族がヤマト王権で活躍していることになっている。
  • 国司交替の際の行政の停滞
    • 展示品のひとつに『上野国交替実録帳』があるが、ここから国司の引継ぎの問題点が浮き彫りになる。国司交替の際には、前任者へ後任者が解由状を発行して引き継ぎが完了する。しかし、この実録帳では「国司の責任逃れ」が書かれている。後任者が、国分寺の破損を修築していない件について前任者を糾弾すると、前任者は言い訳を述べ立て自らの正当化を図ろうとしているのである。このようにして国司交替の際に生じる行政の停滞が分かる。土地制度史の学習の際に具体的に扱う事ができる展示。
  • 近世における旅行 参詣と湯治
    • 近世におけるコンテンツツーリズムの事例が上野における参詣と湯治である。妙義神社は参勤交代の際の参拝対象になり、榛名神社には庶民が講を組んで参詣した。湯治については草津温泉伊香保温泉がに湯治客が訪れた。これらの参詣や湯治を目的とした旅行は、神社や温泉が往来物や瓦版・浮世絵などに描かれたことから、全国から関心を集めたことが紹介されている。上州草津温泉図や、諸国温泉効能鑑、東海道中膝栗毛の続編などで上野の情報が拡散されていった。このように、コンテンツの展開により当該地域に価値付けが生まれ、訪問対象となったのである。これは近世におけるコンテンツツーリズムと考えることができよう。

群馬県立博物館の概観そのものが聖地化している

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  • ちなみに全ヒロインの名字が群馬県の地名ということで有名なノベルゲー『プライマルハーツ』では、群馬県立歴史博物館の外観が天道会(生徒会の一種)の建物として利用されている。