北へ。White Illumination「ターニャ・リピンスキー」シナリオの感想・レビュー

再婚家庭に馴染めず渡日したが異邦人意識に苛まれるガラス細工職人の話。
亡き実父が遺したガラスの色を再現することにすがりつく少女の力となりましょう。
ターニャがひたすらルーチンワークをこなすのは「日常」を喪失する恐れからきていた。
主人公のせいで「日常」から外れてしまうが結果としてそれが功を奏すことになる。
目的を達成したターニャは主人公と共にナホトカへ帰郷し義父と和解する。

ターニャ・リピンスキーのキャラクター表現とフラグ生成過程

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  • 日常を喪失することの恐怖
    • ターニャ・リピンスキーはナホトカ出身の少女。小樽の工芸館でガラス細工職人として働いています。ターニャが渡日してきたのはワケアリで、母の再婚相手の義父が実父の思い出の品を全て捨てさせてしまったから。ターニャは実父が日本に滞在していた際のコネを辿って小樽にやってきたのでした。しかしターニャがいくら努力しても人種の壁は厚く、日本語を勉強しても日本の生活習慣を身につけても、異邦人として馴染めないことに孤独を感じていたのでした。そんなターニャは必至で日本に縋りつくための「日常」を創り出し、そのルーチンワークをこなすことで踏みとどまっていたのです。父親が作ったガラス細工の独特な赤色「ツヴェト・ザカータ」を再現することも、自分の生存理由を亡父の幻影に重ねていたからでした。そんなターニャの壁を打ち破ったのが主人公くんであり、ターニャがルーチンワークから外れるきっかけを作り、結果としてターニャをして「ツヴェト・ザカータ」を再現させるのです。主人公くんがターニャを繁華街に誘った際に、亡父の形見を酔っ払いに壊され、その内部に色の成分表が入っていたというオチなのですが。

 

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  • 亡父の幻影からの解放と自身の人生を生きる目的
    • ターニャは成分表に基づいて色を再現することに成功するのですが、今度はターニャが亡き父の幻影ではなく自身の目的を見つけるターンです。ターニャは赤いスズランをデザインしてガラス細工を作るのですが、これが上司から否定されてしまうのです、赤いスズランなど無いと。ここでちょっとご都合主義発生。主人公くんは北海道旅行中、親戚の家に宿泊しているのですが、その親戚がテレビ局の人間で、ひょんなことからターニャが作った赤いスズランを特集することになり、これが大ブレイクするのです。こうして世間的な評価を得たターニャは工芸館でも認められるようになったのでした。以上によりターニャは自分のアイデンティティとしてガラス細工のデザインに目覚め、新たな人生を踏み出したのです。亡き父の幻影から解放されたターニャは義父と再会する決心もつき、主人公くんと一緒にナホトカへ帰郷します。義父は不器用ながらもターニャのことを心配しており、ツンデレおやじっぷりを発揮し和解エンドとなるのでした。

 

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