白昼夢の青写真 CASE-3「桃ノ内すもも」の感想・レビュー

よくある「自分探し」モノ。若者が将来について悩み「一夏の経験」により、それを見つける。
自分が情熱をかけられるモノを主人公とすももが各自見つけ出すプロセスが醍醐味。
主人公は亡き母の幻影を乗り越え人物を撮るカメラマンに生き甲斐を見出す。
すももは教職の道をなげうち女の子を輝かせるスタイリストに適性を見出す。
最後はお互いが将来の成長を誓って再会を約束し別離を迎える。
冒頭がその再会後であり回顧形式をとっているのでハッピーエンドスタートとも言える。

桃の内すもものキャラクター表現とフラグ生成過程

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  • 手垢塗れの「自分探し」モノだが、主人公とすももが両方可愛い
    • 【1】主人公は厳格な父子家庭で育つが、不登校に陥る。その理由はよくあるアイデンティティの危機。主人公の亡き母は自由奔放なカメラマンであり、主人公はその幻影に囚われていたのである。そのような中、へっぽこ教育実習生すももが教員免許ゲットに釣られて主人公の家へやってくる。主人公を登校させれば教育実習の単位が出るというのだ。当初すももは真面目な教員を装っており、おかっぱのウィッグとスーツでやってくるが、その実態は自由奔放で明るい白ギャル系キャラだった。すももが教免取得を目指したのには理由があり、すももが水商売のバイトでカネを稼いでいたことで母親が馬鹿にされたから。教免とったら実績になるし安心させられるじゃん!という安直な思考で教免を取りに来たのであった。(しかし教免ってある程度単位を習得していないと実習そのものに行けないから教師論とか指導法とか教科内容科目頑張ったんじゃね?)。それはそれとしてすももは勉強とか出来なかったので授業は散々であり、持ち前の明るさも擬態により発揮できなかった。それ故、窮屈な思いをしていたのだが、主人公がすももを被写体にして美しい写真を撮ったころで解放される。終業式の日、すももは擬態を解き放ち、自らの格好で教壇に立ち、自己を示したのである。感動!
    • 【2】主人公はその焦燥に駆られる姿が、将来の夢にもがくテンプレ系少年像として良く表現されている。夏休みに入るとすももが主人公の写真撮影に付き合ってくれることとなる。主人公が同年代で成功しているライバルに嫉妬し、すももに八つ当たりした時などには、すももが年上らしい母性でそれを包み込むのだが、その場面が非常にグッとくる展開になっている。おススメ。すももとの生活のなかで主人公は母親の幻影から解き放たれ、自分なりのカメラマンスタイルを見つける。主人公の興味関心は風景や自然にはなく人物の撮影にあることに気付く。すももを被写体にしたことで、そのことに気付けたのである。
    • 【3】一方ですももはスタイリストへの道を見つける。すももは自分磨きをして髪やファッションなどのお洒落に気を使うことを好んでいたが、それは自分にだけではなく他者をも輝かせるのが好きだということに気付く。主人公やもう一人のサブヒロイン、モブキャラなどの髪を切ってあげることでそれに気づく流れは秀逸。こうして主人公とすももはお互いが将来の夢に関して手ごたえを掴んだのである。学生時代の一夏の経験が人生を変えるということはよくあること。主人公とすももはそれぞれが個性を伸ばして成長して再会することを約束して別れることとなる。その別離からの再会が物語冒頭部分にあたりお別れしたけどきちんと再会できたよ嬉しいなという円環になる。

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