雑録

【レジュメ】Contents Tourism Planning & Management 2019(第3回課題)「札幌市内巡検場所3分プレゼン『北へ。~Golden Kamuy~』」

コンテンツ・ツーリズム論演習第3回の課題は、授業内に巡検する観光コース(案)の3分プレゼンです。
私は『北へ。』と『ゴールデンカムイ』を題材に選びました。
巡検ルートは赤れんが庁舎→北三条通り→サッポロファクトリー→旧永山邸及び旧三菱鉱業寮→サッポロビール博物館。

【目次】

1.【MAP】巡検ルート

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2.コンテンツ作品の学術的意義

2-1.『北へ。』シリーズの学術的意義

3つのポイント ①拓銀の経営破綻と北海道の深刻な不況 ②コンテンツによる観光振興 ③「泣きゲー」ムーブメント
  • 拓銀経営破綻後の北海道経済を②観光により再生することを目指して作られたゲーム
    • 北へ。』の学術的意義は、90年代末と言う時間軸に観光振興を目的として作られたゲームであることである。ジャンルとしては「トラベルシミュレーション」もしくは「トラベルコミュニケーション」と分類される。当時の新聞を見ると、盛んにこの取り組みが紹介されており、話題を呼んでいたことが分かる。記事内容に関して特筆すべき点を挙げると、拓銀経営破綻後に深刻な不況に陥った北海道経済の状況とのつながりで語られていることである。不景気に陥った北海道経済を再生する、そんな使命を帯びているのだ。現在のコンテンツツーリズム研究では、その起源を京アニの『らき☆すた』に求めることが多い。しかしながら、その10年前にコンテンツによるツーリズム促進を企図した作品が誕生していたのである。そのためコンテンツツーリズム研究の起源は通説を10年遡ることとなる。

  • 泣きゲーと「少女救済」のインパク
    • また、この作品が強烈なインパクトを与えた理由として所謂「泣きゲー」のムーブメントがある。90年代末期からゼロ年代初頭にかけてヒロインとの関係性変化に重点を置く手法として「少女救済」というシナリオパターンが登場した。トラウマや問題を抱えている少女たちを救うことでプレイヤーが他者受容願望を満たす一方で、今度は救った少女に承認されることで人生を肯定されるという表現技法である。バブル崩壊後の「失われた30年」を経験するなかで、この手法は洗練されていったが、少女のトラウマ解放という内容はプレイヤーの心象にキャラとシナリオを刻みつけたのである。それ故、『北へ。』が発売された後でもキャラとシナリオの魅力は色褪せることなく語り継がれているのである。

【補足資料】『北へ。』に関する新聞記事抜粋

拓銀経営破綻に言及する記事

「ハドソン(本社・札幌市)は北海道の魅力をアピールするテレビゲームソフト「北へ。」を来年2月発売をめどに開発する。北海道拓殖銀行の破たんなどで経済の落ち込みが深刻な北海道の活性化キャンペーンの一環と銘打っている。」 「TVゲームで北海道の魅力をPR ハドソン(情報ファイル)」1998年7月23日、朝日新聞朝刊、13頁

深刻な不況の中、地域活性化への願いをゲームソフトに託す自治体や企業が出始めた。札幌市の大手ゲームメーカーは北海道の観光スポット紹介を兼ねたアドベンチャーゲームを企画し、「低迷する北海道経済を景気づけたい」と話す。〔……〕北海道拓殖銀行が昨年11月に経営破たんした北海道では、昨年12月から今年5月までに倒産やリストラで約3万5000人が職を失うなど厳しい不況に苦しんでいる。道内の民間企業などは地域に活気を取り戻すため「MOVE ON北海道=北からの声かけ運動」を進めているが、その一環として札幌市の大手ゲームメーカー「ハドソン」(工藤浩社長)が、北海道旅行をテーマにしたゲームソフトを企画した。タイトルは「北へ。」で、来年2月の発売を予定している。〔……〕工藤社長は「北海道は暗い話題ばかり。若者の目をゲームで北海道に向けたい」と話している。」 「不況に負けるな!! ゲームで地域活性化 北海道は観光案内ソフト」1998年8月1日、毎日新聞東京夕刊、11頁


北海道活性化運動 「MOVE ON 北海道=北からの声かけ運動」

「北海道では現在、冷え込みが続く道内経済を復興させようというキャンペーン「MOVE ON北海道=北からの声かけ運動」が始まっており、「北へ」はその協賛ソフトになっている。このため、ゲームにドリームキャストの特色でもあるインターネット機能を活用する試みを盛り込み、プレーヤーがゲームの前後にゲーム専用のホームページにアクセスして、旅行会社のツアー案内や道内のグルメ情報を入手できるよう工夫する。さらにホームページ上でキャラの人気ランキングや懸賞なども企画する。価格は未定。」「セガの新型ゲーム機向け、ハドソンがソフト――第1弾は旅行・恋愛もの。」1998年7月23日、日経産業新聞、3頁

「道内企業を中心とした実行委員会が取り組んでいる北海道活性化キャンペーン「MOVE ON 北海道=北からの声かけ運動」に協賛し、その一環として「北へ」を制作。「北へ」の発売に合わせ、大手旅行会社と協力して、ゲームに登場する声優が同行する北海道観光ツアーも計画している。」 「夏休み道内観光 ゲーム機で*体験型ソフト来年2月発売*ハドソン*声優同行 “本物”ツアーも計画」1998年7月23日 、北海道新聞朝刊 、11頁

「ハドソン(札幌市)の工藤浩社長(四四)〔……〕先月、新しいゲームソフト「北へ。」の開発を発表。高校生の男の子が北海道を訪れ、女の子たちと出あう設定で、観光地の写真と組み合わせ、北海道に行ってみたい気持ちを起こさせるのが狙いだ。「この不景気を何とかしなければと、企画を温めてきた。評判がよければ、さらに北海道を掘り下げた作品を作るつもりです」」 こうすれば?! 北海道再生」1998年08月01日、朝日新聞夕刊、3頁

「ゲームソフト製作の「ハドソン」(本社・札幌、工藤浩社長)が三月十八日に全国発売するソフト「北へ」に、函館の観光地や店舗などの実写風景が三十四カ所登場する。北海道の活性化キャンペーンに参加する同社は「観光ガイドとしてもPRしたい」とソフトの製作を急ピッチで進めている。〔……〕ハドソンは今回のソフト発売を通じて、道全体の活性化を図る「MOVE ON 北海道=北からの声かけ運動」(実行委員会主催)に参加している。同社は「観光面でお役に立てるのではないでしょうか」と期待しており、「地元の方にもなじみ深い風景が多く、これまでのゲームと違った楽しみ方ができるはずです」とPRする。」 「3月全国発売のゲームソフト「北へ」*函館の実写風景が登場*駅前など34カ所*ハドソンが開発*観光ガイドでもPR」、1999年1月28日、北海道新聞夕刊地方、15頁

2-2.『ゴールデンカムイ』のコンテンツツーリズム論的意義

少数民族と観光
  • 可哀想な存在ではない少数民族の力強い姿
    • ゴールデンカムイ』がアイヌからも評価を受ける理由の一つに、フェアな視線がある。アイヌを貶めないし過度に称賛もしない。従来の作品では、アイヌがかわいそうな存在として描かれてきた。しかし『ゴールデンカムイ』ではアイヌの少女アシリパさんが縦横無尽に大活躍すると共に、時にはその限界も描かれていく。また『ゴールデンカムイ』の重要なポイントとして、少数民族として出て来るのがアイヌだけではないということである。北東アジア・北アジアに先住していた少数民族たちが、近代的国民国家の主権・領域・国民に組み込まれるという状況を描いているのである。金塊争奪戦に加わる一派として、極東ロシアのパルチザンが出て来る。彼らがアイヌの砂金をロシアからの独立運動に役立てようというのだ。このようにして近代という枠組みを捉え直す作品構成となっているのである。
【補足資料】『ゴールデンカムイ』に関する新聞・雑誌記事

マンガ大賞ゴールデンカムイ」作者の野田サトルさんは、題材の一つであるアイヌ民族について、「アイヌの方々からの注文は『かわいそうなアイヌにはしないでくれ、強いアイヌを描いてくれ』。できるだけ忠実に、フェアに、慎重に描いていく」と語った。
「「全力で描き続ける」 手塚治虫文化賞、贈呈式」、朝日新聞朝刊、2018年06月12日、35頁

アイヌには長年差別されてきた歴史がある。日本は「単一民族国家」という意識が強く、アイヌ民族へは根強い偏見があった。作品でアイヌ語の監修をしている中川裕・千葉大教授はこう指摘する。「アイヌについて考えさせる良いきっかけになっている。ほとんどの人は、アイヌという存在自体を知らない。自然に消えるのを待っているような状態で、『もう消えちゃったんだ』と思い込んでいる人もいる。実際はアイヌの人たちは今も消えていないし、伝統文化を残そうと努力している人も多い。だから、まずは知ることが大事だ」作品を読めば、自然の恵みを巧みに利用していたことがわかる。」
「いまこそアイヌの知恵に学べ 手塚治虫文化賞マンガ大賞ゴールデンカムイ」で知る魅力」『週刊朝日』、2018年06月15日、32頁

3.各観光資源のコンテンツツーリズム的重要性

3-1.赤れんが庁舎

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北へ。』シリーズで度々登場。通常プレイだと琴梨の札幌案内で初見となる。琴梨が池に佇み憩いを感じさせてくれるところが印象深い。また『天体のメソッド』では主人公ちゃんたちが通う学校の校舎がこの旧道庁あかれんが庁舎なのである。2019年10月現在は改修中。

3-2.北三条

赤れんが庁舎を基点に東へのびる道路であり「札幌通」と呼ばれていた。札幌で最初の舗装道路でもある。この通り沿いには札幌農学校や官営工場などが集まっていて幹線道路となっていた。今では北三条広場アカプラが整備されイチョウが綺麗。北三条通りを進んでいくとサッポロファクトリー、永山公園へと至る。

3-3.サッポロファクトリー

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ビール工場「開拓使麦酒醸造所」の跡地に建てられた商業施設。『北へ。Diamond Dust』の朝比奈京子ルートで札幌土産を買いに行く場所。DDでは笙子√とまふゆ√、WIでは葉野香√でもサッポロファクトリーに来る。京アニ版『Kanon』では祐一とあゆが一緒にエスカレターに乗る場所でもある。

3-4.旧永山邸及び旧三菱鉱業寮

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屯田兵の父であり、第七師団の初代団長である永山武四郎の邸宅。旧永山邸にくっつている緑の建物は旧三菱鉱業寮で福利厚生用クラブハウスとして増築された。『ゴールデンカムイ』では第七師団が近海争奪戦の一勢力を担うことになる。戦争で国に貢献したのに戦後は冷遇される人々のために鶴見中尉は立ち上がるのである。そんな第七師団の元となる屯田兵制度の創設に取り組んだのが永山武四郎である。

3-5.サッポロビール博物館

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北へ。Diamond Dust』で朝比奈京子と訪れる場所。ビールを呑みまくり酒に酔ったせいか、京子が多弁になり巨匠と自分を比べて自分の将来の可能性に対して泣き言をいうイベントが発生する。ゴールデンカムイスタンプラリー2のチェックポイントにもなっており、箱館戦争土方歳三と戦った村橋久成がサッポロビールの前身となる官営の醸造所を作ったことが推されている。



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