「人間死ななきゃ生きれるモンさ」とウェルフィンは言った(キメラアント編などを読むなどした)

労働において感情といったものは余計なものであり、心を殺して仕事をしなければならない。
労働は義務でありそれを怠れば社会的に生きて行くことはできないのだから仕方が無いことではある。
だが社会的に生きていたとしても、心を殺せば「生きながらにして死んでいる」のと同じだと言える。
そうすれば心を殺していたが故に精神が病んでいき、突如ふとしたきっかけで限界を迎える。
ついに耐えられなくなった場合、社会の歯車にすらなることが出来なくなり、脱落することになる。
しかしたとえ落伍者となったとしても自死を選ばない限り人生は続いて行くのであり生きねばならない。
それ故、次を考え前を向く必要があるのだが、なかなかそういう気持ちになれないのが現状だ。
焦燥感ばかり募っていたが、偶々キメラアント編を読んで、余生や道草について考えさせられたりした。

人間死ななきゃ生きれるモンさ!

死ぬまで死ぬなよ(人生やる気次第ってことね)

敵ポジションの脇役の中で成長した一人にウェルフィンというキャラがいる。彼は当初疑心暗鬼で懐疑的な人物だったのだが、タコとのやり取りや王の死線を掻い潜ったことにより器が広がるのである。キメラアント編の終局部、生き残ったウェルフィンやヒナ、ビゼフ長官らは流星街へ落ち延びることになる。その際、NGLに残るザリガニとの別れや悲観的になるビゼフへ励ましを行うのだが、その場面が印象深いやり取りとなっている。ウェルフィンはザリガニに対しては受け売りの言葉である「死ぬまで死ぬなよ」を餞別として贈る。ザリガニは「人生やる気次第」と捉えこのフレーズを気に入る。一方、転落した人生を悲観するビゼフが前向きなウェルフィンに羨ましい限りだと述べると、死線を超えたウェルフィンは「オレはもう2度死んでる!!なのにまだ生きてるんだ。怖いもんなんか何もねぇ!!何でも来いだ!!」と返す。このようなウェルフィンの態度に感化されたビゼフは「おまけの人生楽しむか」という気分になれたのである。「人間死ななきゃ生きれるモンさ!!」というウェルフィンの言葉には励まされるものがある。

転落した人生を悲観するビゼフと死線を超えた後のウェルフィン
余生を生きるビゼフと「人間死ななきゃ生きれるモンさ!!」

 

道中や道草こそが重要という考え

性急に焦るのではなく道中や道草を楽しむという思想

グリードアイランド編でも言ってるゴンの父親ジンの人生訓。欲しい物を手に入れようとする過程において身につけられるものが大事とかいうやつ。だからこそ焦って性急に視野狭窄になるのではなく、道中は楽しんだ方が良いという考え。ジンは息子に対し、道草を楽しめと説く。この焦って性急になる必要など無いという人生訓はジャイロというキャラからも窺い知ることができる。彼は父親の為に肉体労働に従事していたが、暴行を受けているのに無関心に去っていく父親を見て「宇宙は俺に興味が無い」と悟る。その後ジャイロは自分の王国を築くことに成功するがキメラアントにより全てが灰燼に帰す。それでも彼は「1から出直しだな…………」と仕切り直しをするのだが、この時のモノローグが良い。「ジャイロは焦っていなかった。大きなことをするためにはそれなりの準備が要る。工事現場での下積みが彼の合理的建設的な思考を育んだ」。このようにジンもジャイロも立場は違えど人生に焦ることはなく、寧ろ過程や準備に重要性を見出している。

ジャイロの工事現場のやつ