ブルーアーカイブ Vol.5「百花繚乱編」第1章「いつかの芽吹きを待ち侘びて」(後編)の感想・レビュー

御稜ナグサ物語。大切な人を助けられなかったことがトラウマとなり自己肯定感を喪失した少女を救う話。
御稜ナグサは紛争調停委員の副長として委員長(アヤメ)を支えてきたが彼女の救出に失敗し深く自責する。
自分の無力感を痛感したナグサは右腕を負傷したこともありすっかり自信を喪失し自己否定的に陥ってしまう。
これまでの自分はアヤメの隣にいられるように優等生を演じてきただけだとウジウジしまくることになる。
そんなナグサに対し先生の説諭が炸裂!人は誰しもペルソナを被って生きておりそれもまた自分なのだと説く。
例え演じてきた自分だとしてもその過程で身につけた実力や人間関係は本物であることを知らしめるのである。
先生の話術でカウンセリングされたナグサは仲間の危機の前に立ち上がり見事敵を撃退することに成功!
事件後仲間とギクシャクするナグサだったが前編で主役を張ったユカリが身体を張り皆のワダカマリを解消する。

状況によってペルソナを付け替えて立ち居振る舞うことはよくあることでありそれを含めて自分なんだよという話

ユカリに求められていた役割はたんなる傀儡であった
  • 空中分解する紛争調停委員
    • 後編の主役は御稜ナグサ。彼女は紛争調停委員の副長であり委員長アヤメから後継を託されるも器では無いと拒否してしまった。このことから調停委員はリーダーがいなくなり空中分解。それを何とかするためにユカリが奮闘するのが前編であった。だが現実は厳しいものであり彼女の努力は灰燼に帰す。心を折られたユカリは自分の帰るべき名家に戻るが、そこで期待されていたのはユカリ自身ではなく、名家の巫女としての存在であった。しかも彼女が期待されていた祭りの巫女としての役割も、神楽を舞うという神事芸能が求められていたのではなく、当時の巫女が20年前に蒸発してしまった汚名を注ぐためという何とも俗物的な事情だったことが判明する。結局ユカリは調停委員としても名家の巫女としても存在意義を確立できず精神崩壊し傀儡としての人生に諦念を抱いたのであった。彼女のソウルジェムは黒く濁り、その心から怪物が生み出されてしまった。またユカリ以外のメンバーも精神攻撃を受ける。失われた青春を取り戻すとか言って現実から目をそらしたレンゲ、ユカリのためとか言って彼女の本質を理解しようとしなかったキキョウもそれぞれ論破され、調停委員の人間関係は粉々に破壊しつくされたのであった。

 

トラウマをほじくられ心を折られる御稜ナグサ
  • 御稜ナグサの精神崩壊
    • 祭りは火の海となり、調停委員も空中分解。絶体絶命のピンチの中、先生は修行部や忍術研究部の力を借り災害対応に尽力する。しかし相手は魑魅魍魎であり、ナグサの武器しか有用な攻撃手段が無い。と、いうわけでナグサヒロインタイムの始まり始まり。ナグサは自信を喪失し、自己肯定感を持つことが出来ず、自己否定的になり、永遠にウジウジしていた。彼女は今までの自分は委員長アヤメの隣に立つ存在として認められればそれで良く、武力を鍛え上げたのも知力を磨いたのも、アヤメに相応しい人間として評価されたいがためであり、演技であったにすぎないのだと苦悩する。ナグサがメンヘラった原因は目の前でアヤメを助けられなかったことがあった。黄昏に飲み込まれたアヤメを助けようとナグサが手を伸ばした際、このままではナグサの命まで落とす危険性があると判断したアヤメは、彼女を救うためにわざと冷たい言葉をぶつけて拒否したのであった。ここでナグサがアヤメの言葉を嘘だと見抜き強靭な精神で跳ねのけられれば良かったのだが、アヤメに依存していたナグサは手を伸ばすことをやめてしまい、目の前でアヤメを失うこととなってしまったのだ。アヤメに拒絶されたこと、途中で諦めてしまったこと、右腕が不随になってしまったこと等々は彼女がこれまでの人生で形作っていたアイデンティティを崩壊させたのであった。

 

先生によるハイパーカウンセリングタイム
  • 御稜ナグサの復活劇
    • 精神崩壊のオンパレードの中、ナグサをもう一度立ち直らせるのが、キキョウの役割。冷静で理知的なキキョウが泣きながらナグサを頼るシーンのイベントスチルは結構グッとくるものがある。こうしてナグサは自己を奮い立たせユカリの救出に向かうことになるのだが、敵との戦いの中で、さらにもう一度心を折られることに。一番触れられたくない弱みを敵によって暴露されてしまうのだ。一度心が壊れれば二度とは……となるナグサに対して先生のカウンセリングが発動。優等生を演じていたに過ぎないと呻くナグサに対し、ヒトはいくつもペルソナを持っており状況に応じてそれを付け替えるものだし、それを含めて自分なのだと説く。例え優等生を演じていたのだとしても、その過程で身につけた知識や武芸、所作や精神などは本物だ。こうしてナグサは再び立ち上がることができ、敵を撃退したのであった。

 

御稜ナグサは百花繚乱の仲間達ともう一度向き合うこととした
  • 紛争調停委員の絆の修復
    • この先生に一貫しているのは死なない限り人生は続くものであり、何度でも立ち上がることができるという思想。フツーだったら零れたミルクを嘆いては無駄だとか不可逆性が説かれがちだけど、壊れた人間関係を修復できるとと唱えるのだ。ミカのキャラストもそうだった。いやまぁそれはそうでありそうなるのが一番良いと思われますが現実問題として一度壊れたものを直すのは難しいものがありますと読者諸氏は思うであろう。私もそう思う。それ故、ここで関係性を修復させるために前編でヒロインを張ったユカリを一つまみ。彼女はもともと継承戦を申し込み幹部を倒してリーダーとなり委員会を自ら引っ張ろうとしていた。と、いうわけで何とナグサに勝負を挑むのである。結果はナグサがユカリを瞬殺し、彼女の強さが証明されるカタチとなった。この戦いによりメンバー間のワダカマリは溶け、崩壊していた関係性は改善へと向かった。こうして紆余曲折を経て調停委員はナグサを筆頭として新しく生まれ変わったのであった。

 

ニヤなでなでエンド
  • ニヤなでなでオチ
    • この事件を防げなかった百鬼夜行連合学院の長である陰陽部のニヤは責任を感じてしまうのだが、ここで先生がいつもの如くオチを担当する。生徒のためを思いカッコイイ行動をする先生なのだが、聖人になりすぎないようにするためか、何故かライターによって変態的な行動を取らされるのである。先生はニヤに対してこの事件の報酬を貰っていないとにじり寄る。ニヤは当初冗談半分に報酬として炉利キャラであるチセをなでなでする権利を与えるとか言っていたのだけれど、それがなぜかニヤが代用されることとなったのである。画面は暗転して終わる。一応未回収として残っているイベントは、ユカリの先祖がなぜ20年前に巫女の舞をやめたかとアヤメ黄昏事件なので、多分第2章の花鳥風月部シナリオで扱われるのだろう。今回敵役だったシュロが時折ナグサをちゃん付けして呼んでいることからシュロがアヤメの闇落ちした姿なのか!?と考えるのは流石に安易すぎるか。

その他見どころ

自己肯定感を喪失し優等生の演技をしていたに過ぎないと自嘲するナグサ
ナグサを敬愛していたキキョウ
最初からキキョウはナグサをアヤメの代替となど見ていなかった
ナグサを再び立ち上がらせるのは誰よりもナグサ本人を求めていたキキョウ
アヤメが黄昏化した際、手を伸ばしたのに拒絶されたことをいたぶられるナグサ
御稜ナグサの復活
右腕は動かなくとも後輩たちと生きていく