ブルーアーカイブ「円堂シミコ」絆ストーリーの感想・レビュー

シミコ√は一見すると地味で陰キャなメガネ司書が業務で鍛えたフィジカル活かして大活躍というのがウリ。
フィジカルが鍛えられたのは、司書業務の一環として書籍を何冊も持って歩き回っていたからと説明される。
本好きなシミコの設定を活かし長時間座っていても疲れない環境を整えたり、希少本を探したりする。
メモロビのイベントはレファレンスであり、資料調査をするシミコの活躍が描かれていった。
だが惜しむらくは司書のディティールが掘り下げられず属性としてファッション化してしまっていること。
窓口業務や開架・書庫への返却は一般行政職か会計年度任用職員の仕事であるし開架に未登録本があるとは考え難い。
また何よりメモロビスチルの図書分類番号が杜撰であり、司書を強調すればするほど陳腐化されてしまった。

円堂シミコのキャラクター表現とフラグ生成過程

司書の業務の中でフィジカルが鍛えられたとするシミコ

大規模図書館の司書と称する少女。シナリオのウリは、地味で陰キャなメガネ少女のように見えて、司書は普段の業務でフィジカルが鍛えられており、暴力で劣らないというモノ。図書館で態度の悪い不良少女でしばき倒し、殴られてもこぶしを受けとめ、逃げたら追い付くどころか回り込むスピードを見せる。何冊も書籍を運ぶため筋力がついており、開架や書庫と往復するため足腰が強いと説明される。このギャップ萌えでシミコを売り出そうとしていたのだろう。理解はできるし、可愛いとも思う。

だがしかし、開架や書庫への往復って図書館職員の仕事であって、司書の仕事ではないよなという感情が先に来てしまった。そんなに目くじらを立てる必要はないのかもしれないが、彼女自身が司書であることをアイデンティティにしており、キャラクター造形も司書であることを根幹としているため、流すのは難しい(寄贈図書とか移管された資料がたくさんあり登録作業の運搬で筋力を使うとかの発想は無かったのだろうか。)。シミコがフィジカルで不良を圧倒しながら「本を読む人なら誰でも知っている」とドヤ顔で決めるシーンは最大の見せ場なのにツッコミどころ満載であった。

シミコが司書のフィジカルが鍛えられる理由として挙げている開架・書庫への書籍の運搬って司書の仕事じゃないんだよな。司書には6つの職務内容が定められており、かろうじて 3番目の「目録からの検索、図書館資料の貸出及び返却」に該当すると言えなくも無いが。小さい図書館ならまだしもシミコが勤務するような大型の図書館では貸出窓口に司書を置くなんて才能の無駄遣いにしか過ぎず、一般行政職の人たちとか会計年度任用職員の人たちとかがやる仕事なのです。

そんな感情に支配されながら脚本を読み進めてしまったので、読書家のシミコが長時間読書をしても疲れないようにセッティングしてくれたりとか、閉館日に未登録本を一緒に探したりとかもあったのだが、イマイチ集中できなかった。未登録本を探すお宝さがし云々というのも、書庫ならまだしも開架に登録していない本を並べるのか?またメモロビイベントの蔵書探しはレファレンスっぽくて良かったかのだが、イベントスチルの分類番号が非常におざなりであった。ことある毎にシミコが司書、司書いうでしょ?そしたら読者は司書の専門性に関わるシナリオを期待してしまうワケ。それにも関わらず専門性の部分が残念な感じであり、表面的なキャラ付けのためだけに用いられているにすぎないとガッカリしちゃうのさ。

ここからはキャラゲーとしてのノベルゲーが衰退した一因を読み解くことが出来る。ライターが専門性を活かせるだけの力量が無いのに、キャラ属性やシナリオのイベントのためだけに専門領域を扱ったので、その分野の魅力を引き出せずに残念な感じで終わるというパターンである。単なるファッションとして専門領域を属性に据えると陳腐化してしまうという良い事例である。

司書であることを誇りとするシミコ
シミコ直伝長時間座れるセッティング
書庫ならまだしも開架に未登録本があるとは考え難い
最後はレファレンスっぽくて良かったんだけど……
イベントスチルで図書分類番号があまりにもおざなりでげんなり。韓国式なのか?