遠藤周作『黄色い人』(新潮文庫) の感想

キリスト教を裏切った二人の人物が主人公。
カトリックの感覚に対する日本人の無感動な光が漂う目を代表する千葉。
憐憫に駆られて情欲し司祭の立場でありながら女を犯した背教者デュラン。

千葉がブロウ神父に送った手紙という方式で描かれ、その中途中途にデュランの日記が挿入される。日本人特有の汎神論的な宗教意識を代表するのが「無感動な光が漂っている目」。原罪を背負い、神を信じるか否かに生きていく西洋人に対し、神を知ることのない日本人の幸せ、罪の意識も死に対する苦しみにも無感動さが表現されている。背教者であるデュランだけが、白い手を汚すことによって黄色い人たちの魂の秘密を理解できたというわけさ。