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  • 鳥山孟郎「授業が変わる世界史教育法」青木書店 2008年

    第一章 "教え方"ではなく"学び方"から考える

    1 生徒の疑問「何のために歴史を勉強するの?」

     高校の生徒は学習意欲に欠ける。学習するための動機付けが受験にしかない。受験科目以外は勉強しない。受験しない生徒は勉強しない。教師は授業を聞かせるため様々な工夫をするが、生徒はエピソードしか覚えていない。生徒の「何のために歴史を勉強するのか」という問いは、学ぶことそれ自身の張り合いとかやりがいから出たものであり、教えられるものではなく、生徒自身が感じ取るしかない。そのためには、生徒が自分の生活とつながっていると感じられる内容、自分の人生と結びつけて考えられるような授業にしていくことが必要。現在の生活と直接関係があることを実感するときに、多くの生徒は歴史に興味を持つ。そのため、世界史通信を作り、生徒の日常生活のなかに世界史に関する場がいくらでもあることに気づかせる。生徒の身の回りのモノ・映画・テレビ番組・歌や音楽・地域・人物・時事問題を利用する。常識をひっくり返し、「本当はどうなんだ」「どうしてそうなったのか」という疑問を呼び起こしたり、事件や人物の背後に隠された意外な関係に気づくことによって歴史への興味が湧く。教師と生徒の関係だけではなく、生徒相互の学びあいの場を作るとよい。目の前の生徒一人ひとりが何を望んでいるのか把握してそれぞれの生徒に合わせた方法を取らなければならない。

    2 教え込みの授業からの脱出

     教師が説明しても、生徒は寝る、半分以上寝る。生徒に課題を与えて作業させると学習効果が高まる。具体例としては、プリント配って生徒に教科書資料集を駆使させ設問に答えさせるものがある。教科書を読み取らせる以外にも、地図、年表、図表、模型や紙芝居などの作業をさせる。生徒が能動的に学習すると歴史についての理解が深まる。プリントの穴埋めは効果が薄い、文章で答えさせる。さすれば、論理的な思考が育つ。論理的な思考が育てば討論も上手くいく。欧米では文章で答えさせる歴史教育が多い。イギリス大学入学試験(GCSE)の「現代史」の問題の例を見ると以下の通り。

    • 「『冷戦』は1945年以降に始まったが、それは何故か、どういった経過を辿ったか、その結果はどうであったか」
    • 「マーシャル・プランは、ヨーロッパを経済崩壊から救ったという意見に君は賛成するか」
    • 「なぜ労働党は1945年の選挙で勝ったが、1951年の選挙で負けたのか」

    さまざまな見解を事実に基づいて批判的に検討して自分なりの解釈を示す。日本の大学受験も国立二次試験では論述問題が重視されている。しかし文章で答えさせる授業をすると、生徒はさっさと答えを教えろという。そんな生徒に自分の力で問題を解くことが目的であることを自覚できるようにする必要がある。そのためには、動機付け、達成感、課題の添削などをしっかりする。

    3 具体的な事実についてのイメージを豊かにする

     生徒は言う。「もっと歴史の裏話とかエピソードを話して欲しい」と。生徒は個別の事実についての具体的な話、イメージの描けるような内容を期待している。教科書は概説的なので、歴史教師が生徒に具体的な眼に見える形での分かりやすい話をしてやる。歴史と日常生活とのつながりは、生活習慣や生活用品に歴史を感じるときに認識できる。視聴覚教材、小説、ルポ、体験記などがよい。社会構造の分析や歴史的特質などで生徒の歴史認識はほとんど育たないし、具体性を欠いた概念知識は役に立たない。生徒自身の知りたいという興味や切実感は、小説・映像・実物などの生き生きとした歴史的事実のなかから生まれる。資料を見せるときは設問プリントを用意する。そうしないと生徒は寝る。資料を批判的に読ませるのもよいとされる。資料を作り使った人の意図とはなにか、資料の中の事実と違うところは何か、他の資料と比較してどのよな違いがあるかなど批判的な資料読解が歴史的思考力を深める。

    4 調べ学習と発表授業の進め方

     歴史に関係のあるモノを用意して生徒に調べさせる。自分で調べることにより主体的、能動的な学習の楽しさを感じられるし、歴史を日常の生活感覚とのつながりで具体的に理解することができる。だが押し付けると失敗する。生徒自身が興味関心を抱かなくては調べ学習は成功しない。生徒は抽象的な概念になど興味がない。具体的な事件やモノ、人物をテーマにするほうが生徒は興味を持つ。調べ学習の作業には次のようなものがある。1.絵本・写真集を読む、2.モノについて調べる、3.歴史新聞を作る、4.読書感想文を書く、5.新聞記事を読む、6.レポートを書く、7.聞き取り調査、8.展示発表などである。自分で考え、調べる学び方を経験させると、世界史を学ぶ意味がそれぞれ分かる。分かりやすく説明することによって、発表者自身の考えが深まる。

    5 聞き取り調査による人との出会い

     世界史の授業での調べ学習として、関係者に直接会って話しを聞くという学習を1985年から97年まで13年間続けて実施。人に直接に会って話しを聞くことには以下の意義がある。本で調べただけでは分からない具体的な状況を知る、その地域についていままで以上に強い関心をもつ、勉強の仕方や社会のあり方・人間の生き方について学ぶ、事前にある程度の知識が身につく、目的意識を持ってインタヴューに望める、責任感と達成感を得られる。しかし1998年以降にはやりたくない生徒が多くなり実施しなくなった。受験勉強には熱心でも、授業以外の時間を使って課題に取り組むことを生徒は嫌がる。生徒に興味を抱かさせる手立てが必要である。

    第二章 歴史的思考力を培う

    1 『全米教育基準』に示された「歴史的思考」
    • 『全米教育基準』は歴史的思考について5つの基準を掲げる
      • 1.年代的思考/2.歴史の理解/3.歴史の分析と解釈/4.歴史的探求の力/5.歴史上の論点の分析と意思決定
    • 思考力を高める5つの方法
      • 1.資料から答えを読み取る/2.資料を批判的に読む/3.自分の下した判断の理由を説明する/4.賛否両論の根拠を示す/5.賛否両論の根拠をあげたうえで、自分の判断とその理由を述べる

     暗記中心・教科書どおりの授業は生徒にとって退屈、歴史嫌いを生み出す。ただ一つの正しい答えを求め、結論を覚えることに精力を注ぎ、その結論にいたるプロセスや因果関係は考えようとしない。生徒は、問題意識や立場の違いによって歴史のとらえ方はさまざまであることに気づかず、オーソドクスなひとつの歴史があると思い込んでいる。入試以外に役に立たない無駄な勉強に時間を費やし将来に生かせる力を身につける機会をうしなっている。

    2 因果関係を分析する

     因果関係を学ぶことは、歴史学習においてはどの場面でも重要な課題。因果関係とは、時間の推移のなかで生じるものであり、歴史的にものをみるということは社会の動きを因果関係を軸にしてとらえていくこと。日本の教科書は因果関係の記述が少ない。その理由は、少ないスペースで盛りだくさんかつ特定の見方を押し付けることを避けようとする結果。その欠陥を補うのが教師の役割。だが因果関係を教え込むのはよくない。生徒は、因果関係のすじみちを論理的に説明しても興味を示さない。因果関係について追究していくうえでの考え方や分析の方法を教えていくことは必要であるが、結論を出すのは生徒自身。自分の頭で考えるとは、教科書や教師の説明を唯一の正解として鵜呑みにするのではなく、それを相対化し、批判的に検討すること。生徒に自分の頭で考えさせるようにするのは、問題意識をもてるようにすることと、材料と時間を用意すること。授業で行なうには以下の4点が必要。

    • 1.問題となる事件の概要を知り、その事件に関して疑問に感じた点を書き出す。
    • 2.生徒の疑問のなかから、原因についての疑問を解明するために必要な資料を教師が用意し、生徒各人が自分なりの答えを考える。
    • 3.自分の意見を補強するために必要な資料を探して、自分の考えをまとめる。
    • 4.生徒に各人の意見を発表し、互いの意見を突きあわせながら議論する。
    3 コロンブスの航海をどのように理解するか

     船員たちはコロンブスに反乱を起こしていたことに着目、日常的な積み重ねとして歴史を考える。コロンブスは不屈の意志でアメリカ大陸に到達。歴史を必然的な流れとしてではなく、危機に際しての人間の意志による主体的な選択の結果としてとらえさせる。歴史上のできごとはいつでも予定した通りに進行するわけではない。因果関係の説明は後から解釈されたものにすぎない(それが間違っているという意味ではない)。絶対王政を維持するための王権の財政基盤の強化、造船・航海技術の発達、アジアの富の獲得、イスラム教徒への対抗意識は、コロンブスの航海を可能とした条件ではあったが、それを実現させたのはコロンブスの固い信念と実行力。歴史はさまざまな要因は絡み合う紆余曲折であり短絡的な因果関係で歴史を理解する生徒に誤らせないよう気をつける必要がある。歴史上の諸事件の要因の説明は必然性の誤解生みやすいが、当時の人々には様々な選択肢の存在。選択肢を復元し、並行世界を考えることも有益。コロンブスの航海の歴史的意義に賛否両論あるように、歴史上の評価はその立場によって見方の異なることがある。

    4 人物でたどる八世紀の世界

     歴史の学習では「いつ」が重視されるあまり「どこで」がはっきりしない。距離感のない均質な空間のなかで歴史が展開されているような扱いになりがち。その結果、イメージのともなわない概念的な理解に終わる。歴史を理解する上で、因果関係とともに相互関係(交流・影響・結合・対立・支配従属)が重要。因果関係は時間軸、相互関係は空間軸。一つの時代の構造的理解には因果関係・相互関係の理解が必要。世界史は各地域間相互の関係が重要。しかし教科書では分断的に記述されているので、年代が前後しながら次々と地域が変わる。故に各地域の時代の流れと同時代の横のつながりとを同時に把握することが極めて重要でありかつ困難。一つの地域の流れを理解しても他の地域との関係が曖昧で世界史全体の流れは掴みづらい。結果、「重要な」国・地域の流れを覚えて付随する地域はつなげて覚えるという錯覚に陥る。これを避けるには、同時代を全世界的にとらえることが必要であり、同時代における各地域比較、世界前代の構造的理解、経済・文化の各地域相互関係などの方法がある。実践例として八世紀の世界を人物の活躍を通して見る。

    5 討論学習が思考力をきたえる

     生徒にただ討論させようとしても失敗に終わる。論証抜きに結論だけを言い合い、関係無いはなしで盛り上がる。自ら進んで発言する生徒などほぼ皆無。人の前で恥をかくのを怖がり、反論したがらず、おざなりなことを述べるだけ。故に討論のためには、論題の立て方と資料の提供が必要。討論にこだわるのは、生徒が自分の考えをまとめ、異なる意見を知り、それに反論を加えるという活動をするためである。討論の意義はそれぞれに異なる意見を出し合い相互にまなびあう場をつくることにある。異なる解釈を比較し検討、他者の意見を批判的に受け止め、自分の考えを反省する材料とする。これが生徒が自分の頭で考えるということ。一つの議論をめぐって討論するには、自分の意見をつくり発表しなければならない。生徒は既習知識と資料をもとに考えを整理し、判断を下し、その論拠を筋道を立てて説明する。他人の意見を聞いた生徒は、異なる考え方があることを知り、どうして自分の意見と違うのかを考え、問題の本質がどこにあるかに気づく。そして反論するために事実を再検討し、自分の意見を補強したり、相手の意見を受け入れて自分の考えを修正する。討論のねらいは、論じられた問題についての知識、理解、判断力にある。討論には、その類型として歴史ディベートとロールプレイングがある。歴史ディベートは、相手側の意見の弱点追求や形式論理に陥りやすく、問題の本質を理解することが疎かにされがち。他には、模擬議会や模擬裁判などがある。

    補論 生徒の心をゆさぶる問題提起

     平和教育をすると生徒は、過去の日本人の残虐な行為ばかりをつきつけられることに耐えられなくなって「これ以上は聞きたくない」という雰囲気になる。戦争責任と戦後保障をめぐる議論を問題にする中国や韓国の人々に反感を抱き、苛立ちを隠さない生徒も出現。生徒の感想「日本人が謝っても、謝っても、償いをしても、韓国人は許そうとしない。そこがムカつく!テメー何様のつもりだ」。多くの生徒は昔のことは自分とは無関係だと思っている。教科書の記述も簡潔なのに、なぜそれを学ぶ必要があるのか分からないままに、何時間も続けられ、もうやめてほしいと感じる。平和教育の授業が「たいくつ」「つまらない」。これを打開するには、生徒主体の平和教育。しかし生徒主体とは興味に任せて気ままにやらるというものではない。生徒が自分の力で問題に取り組むことを通して、自分の意見や考えを持てるようにする。生徒が決めたテーマに対し「なぜそれが重要なのか」説明責任を果たさせる。生徒のテーマ決定には、教師の問題提起が重要。問題提起を行なうには、教師の問題意識の醸成が必要。

    第三章 世界史のなかの日本

    1 日本史と世界史とはどういう関係にあるか

     「日本史と世界史の統一的把握」が提起されるが、生徒は世界史と日本史が別物と思っている。世界史の授業で日本史のことに詳しく触れると生徒は反発。「関係ないことにどうしてそんなに時間をかけるのか」と言い出す。日本の外と内を二項対立的にとらえ、「内」の利益のみを優先し、「外」からの影響は外圧と見なし、生徒は日本が世界にどのような影響を与え、世界のなかでどのような役割を果たしてきたかについて関心を示さない。この原因は、原始時代から日本という国が存在したかのように見なす歴史教育にある。「日本史」と「世界史」が分かれた理由は、戦前の歴史学が日本史、西洋史東洋史だったから。戦後、西洋史東洋史が合体して世界史となる。日本史は帝国臣民の歴史的自覚を作る、西洋史は近代化の指針、東洋史は勢力範囲。戦後において東洋史の役割は低下、西洋史はお手本のままであったので、世界史は西洋史中心になる。さらに唯物史観の発展段階の説明がしやすいヨーロッパに時間が割かれることになる。世界史=西洋史=外国史という考え方が定着。日本史と世界史の統一的把握を提起した人物として上原専禄や鈴木亮がいる。自国史と外国史が同一なのがヨーロッパ。アメリカ・カナダ・中国・韓国は別れているが、世界史はヨーロッパ中心。「世界史と日本史の統一的把握」とは「世界史」と「日本史」の2種の科目があってはならぬということではない。世界史から日本史を切捨てたり、日本史を世界史から切り離すような授業の進めかたを改めるべき。現在の日本史の教科書は、多様な側面を切り捨て、日本を一体のものとして扱う。坂本多加雄はその確信犯的存在であり、「国民形成の物語は個人の物語以上にフィクション性が強い」と述べながら、歴史教育は歴史的事実ではなく国民意識の養成であると断定する。

    2 日本・東アジアを軸とする近現代史
    • 世界史近現代史における「日本はどうのように行動すべきだったか」という問題提起と考察の授業の実践。
    • 日本がアジアの犠牲になったことを生徒に気づかせるという趣旨の授業の展開が記される。
    3 世界史とは世界とのつきあい方の学問

     世界史を学ぶとは、自分の生活を世界の現実とのかかわりでとらえること。そこには人それぞれの世界史しかない。一人ひとりの教師が教える世界史もまた彼自身が意味あると感じている歴史にすぎない。歴史を学ぶのは世界を知るための手段であって目的ではない。現実の世界を理解するのに役立つから世界史を学習する。生徒一人ひとりが主体的に「世界とのつきあい方」を考え判断していく場面に世界史の知識を役立てる。歴史研究者は科学としての方法論、歴史的事象に対する分析理論化が養成される。歴史教育は違う。生徒が直面しているのは個別具体的な相手との付き合い方の問題。さまざまな異なる立場や異なる文化をもった人々とのかかわりのなかで自分が生きていることを自覚、現代の世界との付き合い方を考える、自分なりの未来への展望を見いだそうとする時、世界史学習に対する主体的な関心・意欲が生まれてくる。相手を対等に主体性を尊重し、人格と個性を大事にする必要。しかし生徒はアジア・アフリカを蔑視。臭い・汚い・くらい・遅れていると関心の持てない理由を表明する。偏見をなくすには前近代の学習が重要、魅力を感じさせ尊重させる。

    4 中東を知るうえでの教科書記述の問題点
    • 中東の人々の現実の生活は正しく認識されていない
    • 教科書の記述は、ヘレニズムと「イスラム文化」のつながりが歴史の流れとして理解できるようになっていない
    • 中東=イスラム世界ではない。
    • 異教徒を敵と見なして撲滅を図るのは当時のヨーロッパのキリスト教徒の十字軍
    5 現代史の授業内容のつくり方

     生徒が自分たちの生きる現代の社会を客観的・構造的に理解するためにはさまざまな問題を関連づけてとらえ、それらの間の因果関係を把握することが大切。それが現代史学習。生徒の現代史認識は断片的知識の寄せ集め、相互のつながりがなく、全体像をもたない、主観的、一面的。「現代社会」や「政治経済」などではカバーできない、現代史を学ぶことによって相互の関連を構造的に把握できる。現代の社会を知らないと、過去の社会を理解できない。生徒たちは現代についても教えられなければ知らない。教科書記述も事件の性格や因果関係について叙述されておらず、教師も現代史について何をおしえればいいか分かっていない。現代の諸事件は「現代社会」でやれとの意見があるが、歴史の授業では、個別の事件や相互のつながりを時代の流れのなかに位置付ける必要。現代史では産業構造の変化、ソ連崩壊、開発途上国従属モノカルチャー化が重要であり、転換期の授業プランを提示する。

    補論 イラク戦争歴史教育の課題

     イラク戦争歴史教育で位置付ける場合、以下の三つの視点が重要。一つが戦争について。被害者の視点・アメリカの宣戦理由・平和教育から戦争をとらえる。二つ目がイラクとアラブ世界について。民衆の生活とアラブ人の反米感情の中でのアメリカの中東政策といったとらえかたが大切。三つ目が、アメリカの現実。アメリカの大衆は戦争賛成が多いという点からアメリカ社会をとらえ、日本とは異質の存在としてアメリカ学習を行なうことが肝要。

    第四章 国際交流のなかで歴史教育を見直す

    1 韓国・中国の歴史教育との出会い

     歴史教育における国際交流のどのような意義があるのか。ひとつは生徒の歴史認識についての問題状況を相互に出し合うことによって、自国にとっての課題がどこにあるのか見直す。歴史教育では、生徒がどう受け止めているかが重要。韓国の歴史教育では、生徒が歴史を学ぶと日本が嫌いになるということが悩み。中国では歴史に興味を持って勉強する生徒が少ないし、内容を理解していない。意義の二つ目は、歴史を学ぶ意味が各国で異なりることを知り考え方を相対化、客観化すること。意義の三つ目は、他国と対比することによって自国の歴史を客観的にとらえること。また歴史教育を国家主導ではなく、教師自身による自主的な研究団体としての民間交流を盛んにして多くの教師が参加できる機会を増やしていく必要がある。

    韓国での報告 歴史をどうとらえるか―日韓共通歴史副教材づくりのとり組みのなかで
    • 韓国との歴史のとらえ方の比較において日本側で問題になった点
      • 日本列島住民の歴史;複数民族、国家への帰属意識の希薄化⇔それに対する新自由主義史観
      • 民衆史
      • 地域・日本を東アジア世界の歴史のなかに位置づける
      • 独自な個性を認め合う対等な関係
    中国での報告 戦没兵士の死とどう向き合うか―歴史認識を深める授業と教師の役割

     日中戦争を授業で扱うことは少ない。それをやろうとすると教師の価値観の注入だと言われる。保守派は歴史学習は日本人としての自覚と誇りをもたせ、国民としての一体感を持たせることを唱える。生徒は過去の歴史は自分とは関係ないと思っているので、過去の残虐行為から逃れたいと思っている。そこで教師は問題提起をし、生徒が学ぶ価値があるように思わせることが必要。教え込むだけの授業を乗り越えるための授業が提示。

    終章 世界史教育の目的は何か ―教室からの模索

    • 何のために世界史を学ぶか
      • 生徒たちにとっては過去の細かな移り変わりを知ることよりも世界の現実に目を開くことのほうがはるかに大事
      • 世界史を学ぶ目的は世界の現実を知り、世界の各地域、人々との付き合い方を考えること。現代世界の動きに関心をもつことや具体的事実にふれて自分で調べたり考えたりすることは、世界史に興味を持たせたり歴史について理解を深めるための手段ではなく、それ自身が世界史学習の目的。過去の歴史について知ることのほうがそのための手段。
    • 歴史的思考力とは何か
      • まなびあい、討論、地域研究、発表をさせた。しかしこれらのことが考える力をつける上でどのような意味があるのか、歴史教育にとっての思考力とはどういう内容のもので、その力をつけるためには、何が必要なのかについて明確ではなかった。→『全米教育基準』に出会う
      • 『全米教育基準』における「歴史的思考」から得られたこと
        • 教師の説明、結論をうのみにするのではなく、生徒が自分の頭で考えるためには歴史上の事件や社会の状態について用語を知るだけでなく具体的なイメージをもつこと
        • 自分で歴史事象のなかに問題をみつけ、資料を検討し事実にもとづいて自分なりの解釈を組み立てること、および、歴史上の問題について対立する主張を比較して自分なりの判断を下すこと
        • 概念を操作して歴史を解釈したり、ただ一つの真理の追究をめざすのではなく、事実にもとづいて自分なりの解釈や判断をする場面をつくることが思考を鍛えるうえで重要
      • 生徒は授業で教師が教えたとおりに理解するわけではない。本書は何を教えるべきかではなく、生徒がどのような学び方をすることによって歴史認識を深め、身についたものにしていけるかという視点から歴史教育の目的と授業の方法を統一的にとらえようと試みたもの。