アストラエアの白き永遠(体験版)の感想・レビュー

『アストラエアの白き永遠』は学園異能バトルで彩られているが実際は家族ゲー。
登場人物たちは皆、家族に問題を抱えており、その愛情に飢えている。
主人公くんたち一派は異能者が増えないように押さえ込み隠蔽する組織。
それに対抗するのは異能者を増やして抱え込もうとする組織。
二つの勢力の対立に星空のメモリア的イマジナリィフレンドの雪々も現れる。
たぶんメインヒロインは雪々だよなぁと。
異能バトルはさておきそれぞれの家族の表象はどのように扱われのかが醍醐味

体験版概要

  • メインヒロインのキャラクター表現と「アイロンがけ」による家族の象徴
    • 物語のメインヒロイン(表)は橘落葉さん。単身赴任の父親と母親不在の中、幼い妹の世話と家事を切り盛りするしっかりさん。父親が家族を顧みず殆ど連絡すら取らないので、複雑な感情を抱きつつも無意識下では父親をを求めているという難儀な少女です。学校と家事と育児に追われて多忙な毎日。それでも幼児の妹をしっかり育てねばならないという使命感は少しずつ落葉を蝕んでいきます。妹は妹で姉に迷惑をかけてはいけないと思っているようで、幼児にして自立心が強いものの、まだまだ甘えたい年頃。そんな二人のもとへやってきたのが我らが主人公くん。メインヒロイン落葉の父親は異能者たちを率いる組織の局長で、娘の安全と街の治安維持のために、主人公くん一派を派遣してきたのでした。父親の差し金である主人公くんを最初は疎んじる落葉でしたが、家庭内に男手が必要だと思っていたのもまた確か。また妹が主人公くんに懐き、色々と構ってくれるを見たことが影響したのでしょう。落葉も主人公くんを次第に受けいていくことになります。落葉が主人公くんを家庭内に受け入れることを描く際に挿入されるのが「アイロンがけ」の描写。アイロンを手際よくかけていくヒロインから手渡されるほんのり暖かな洗濯物が醸し出す匂いに家庭内の母性のイメージを組み込むのです。みなさん、この表現技法を覚えてはいないでしょうか?そうです『こいとれ』のうたはお姉ちゃんですよ!!!『こいとれ』では両親を亡くした主人公くんと幼い妹、そして幼なじみ系従姉のうたはお姉ちゃんが疑似家族を構成するのですが、その疑似家族がホントウの家族となりうることを示唆させる重要なモチーフとなるのがこの「アイロンがけ」なのです!!それを落葉にやらせることによって、主人公くんを家族として受け入れるメタファーとしたのですね。孤児であった主人公くんにとって家族として受け入れられることは色々な心境をもたらすことでしょう。これから落葉と主人公くんがどのような家族となるのか、家族ゲーとして楽しみです。


 

  • 兄を慕う秘めた想いの螢りんね
    • 主人公くんと家族を描くもう一人の存在が妹の螢りんね。主人公くんと同じ孤児院出身で、異能に目覚めたことから主人公くんと共に「組織」に拾われ育っていくことになります。孤児院内でも舫いを結べず孤独の海に漂流していたりんねを現実に結び付けてくれたのは、兄と慕った主人公くんの姿。主人公くんはりんねと兄妹とは認識していないのですが、認識していなくても主人公くんがいるというそれだけで、りんねの生きるよすがとなったのでした。異能バトルの際、りんねと主人公くんはチームを作って戦うのですが、主人公くんが負い目に感じる、りんねが大切な絆と感じる、ひとつの儀式がありました。それは主人公くんの二つの特化異能の一つであるヒュプノスを発動させるためのもの。ヒュプノスの異能は儀式を行った相手の能力を格段に引き上げること。そうです、この儀式は「接吻を交わす」という行為を媒介としていたのです。故に女性に接吻するという行為が主人公くんに躊躇を生み出させるものの、りんねにとっては大切なものとなっていたのですね。最初から好感度マックス!!「たとえ兄が私という妹の存在をしらなくても、彼がそこにいるという事実が私のよるべとなっていた」「もっと私を信じてください」のセリフは一見の価値あり!

 

  • 体験版の主な内容
    • 体験版の主な内容は主人公くんたちの立ち位置と物語の傾向を提示するものですが、その際に主人公くんたちのクラスメイトの「兄妹の不和の解決」という家族ゲーが展開されます。年の離れた兄妹の事例が紹介され、引っ込み思案な妹が兄に構ってほしいと願うのですが、妹を疎んじてきた兄にとって今更どのように妹に接していいか分からなくなってしまっていたのです。この家族は両親共働きであるものの、平日は祖母が切り盛りし、休日には両親が時間をとって良くしてくれる、悪くはないものでした。しかし、「家族のうちの誰か一人でも欠けてしまったらそれは寂しいことではないでしょうか」理論が展開されます。兄とのぎくしゃくした関係はついに妹に過度の精神的ストレスを与えることになっていきます。そしてここで異能バトルシナリオが発動。妹は負荷の限界の結果、異能を目覚めさせ暴風雨を巻き起こします。主人公たち組織の活動開始です。この活動を通して、それぞれの能力紹介が行われるのですが説明台詞的描写で進行するのは如何ともしがたい。主人公くんたちの活躍により、兄が妹にオープンハートして心情吐露を行います。両親共働きでおばあちゃんっこだった兄は妹が生まれたことによりおばあちゃんを取られた気がして冷たく接してしまったのだというのです。フロイト防衛機制でいうこところの退行というやつだな。結構安易な流れとなりました。こうして家族問題を解決することで、主人公くんたちの「能力見せ」と勢力構成図、物語の目的を提示したのでした。