雑録

十六夜のフォルトゥーナ「冬月時雨」シナリオの感想・レビュー

旧家の束縛から逃げ出し空っぽとなった男が「姉を亡くして精神崩壊した女」に生存理由を見出すはなし。
ヒロインである時雨のウリは「面倒くさいかわいい」というキャラクター表現。
短気で気性が荒くツンケンしているわりには自分では何も出来ない少女を見守りましょう。
個人的にオススメなのが主人公くんが自分の無価値さを噛みしめる場面。
一度は地に堕ちた主人公くんが時雨を支えるために立ち上がっていく。
「人間に生きる意味なんてないさ。でもそれを見つけるのが生き甲斐ってもんさ」的なテーマ。
主人公くんは自分の価値を女に見出すのであった。

冬月時雨のキャラクター表現とフラグ生成過程


  • 霊能探偵編
    • 冬月時雨は気難しく面倒くさいところのある少女。双子の姉が大好きだったのですが、姉は殺人事件で殺されてしまいます。そのため精神崩壊し、犯人を見つけて報復したいと囚われるようになります。主人公くんはそんな危なかっしいところのある時雨を何かと気に掛けるようになります。死んだ姉は明るく社交的であったので、時雨はそれに依存しているところがありました。友達も姉を介しての友人という側面があり、姉が死んだ後には学校にも上手く馴染めず、不登校気味になってしまうのです。主人公くんはそんな時雨の登下校に付き合い、犯人捜しにも協力していきます。逮捕劇の際には復讐に駆られて犯人を刺し殺そうとする時雨を、死んだ姉の霊を憑依させて説得し、怨恨から解放する役割を果たすのでした。



  • フラグ構築編
    • 殺人事件は収束し平穏な日常が戻ってきました。時雨も次第に普通に学校生活が送れるようになっていきます。こうしてだんだんと関係性が疎遠になっていくと、時雨は自分が主人公くんに対して抱いている好意に気づきます。しかし主人公くんはその好意を受け入れることができません。なぜなら主人公くんは旧家の束縛から逃げ出し流浪する身分に堕ちていたからです。主人公くんの実家は名のある霊媒師の家系であり、封建的な家の重みを抱え込んでいました。生活は何一つ不自由はないけれども言われるがままに諾々と生きていることを疑問視するようになっていきます。自分が無価値であることを知った主人公くんは家を飛び出すのですが、目的のない行動はどこまでいっても無意味であることを思い知ります。そんな空っぽな主人公くんは、とうてい時雨の好意を受け入れることができないというわけです。しかし逆に考えると、女のために生きることで自分の価値を示すこともできるわけです。主人公くんは時雨を支えるために生きることを決意します。こうして時雨の実家に転がり込み、郵便配達のバイトを始めたのでした。



  • 成仏編
    • フラグ構築後に問題となるのは死んでしまった時雨の姉;小菜について。死して後も小菜は成仏しておらず、霊体として存在し、霊能探偵編やフラグ構築編でも活躍?していました。しかし永遠にさまようわけにもいかず、成仏の時は近づきます。この第二の死とも言うべき成仏の別離の悲哀が描き出されていくのです。成仏の区切りとなるのが記念写真の撮影。霊体であるため写真に写るのか!?という本文中におけるツッコミに、写る写らないは問題ではなく想い出にしたいという時雨。この写真撮影を契機に小菜は最後の言葉と感謝を時雨に残し、主人公くんに時雨を託して成仏していきます。主人公くんは小菜の言葉を噛みしめ、時雨を支えるために生きるよと改めて自己の存在理由を確立させるのでした。ED後のエピローグでは、二人には赤ちゃんも生まれ家族のために生きる主人公くんの姿が!!無価値な主人公くんに家族という価値が付与されて物語の幕が閉じます。