精神崩壊して辞職した元教員がトラウマを克服して再就職するはなし(『見上げてごらん、夜空の星を FINE DAYS』美晴ルートの感想・レビュー)

教員精神崩壊シリーズ。挫折系シナリオは大好物です。私の黒歴史を刺激してやみません。
教員というものは真面目な人がなるとバーンアウトしやすい職業です。特に最近は使い捨ての消耗品ですし。
しかし一度挫折し辞職したからといってもう二度と立ち上がれないのでしょうか?
そんなことはありません。地を這い汚泥を啜り辛酸を舐めたからこそ、人格に深みが増すのではないでしょうか?
挫折教員再チャレンジモノには天色アイルノーツの主人公くんなどがいます。

ニート先生が他人とは思えません。救われて本当に良かった。


  • 教員精神崩壊編
    • 教員なんてものになろうとする人は普通ではないと思います(良い意味でも悪い意味でも)。しかし善意によって世の中をよくするために人材育成やろうとしている人や子ども達の成長のために教員になった人はものすごく苦痛を感じながら教員生活を送ることになるでしょう。真面目な人ほど何としてでも職務を遂行しようと粉骨砕身してしまうのです。しかしながら校務運営担当の人々はそんな教員一人ひとりのことなど考えていないのでトンデモナイ理不尽な要求をしてきます。そのため真剣に職務に取り組む教員ほど心を擦り減らし、精神崩壊して辞職していくことになります。教員は神経が図太くないととてもやっていられないでしょう。本作品の美晴ルートもそんな精神崩壊してしまった教員のおはなしです。私も教員やって精神崩壊して辞職し賤吏に甘んじてから再就職してもう1回教員になったので他人とは思えなさすぎる。ニートになった絶望感とかすごく共感できます。『天色アイルノーツ』の主人公くんも挫折教員再チャレンジ組なので、それをテーマにしている天色メインヒロインのルートは結構好きだったりします。また『素晴日々』では「教職員の欺瞞性」や「パノプティコンとしての学校」を描いているので、教員志望の学生にはぜひやってもらいたいものです。



  • 如何にして美晴先生はニートになりしか
    • 教員という仕事は常に精神力を削られるお仕事ですが、美晴先生は子ども達のために暖かい指導を続けてきました。両親を亡くして祖父に引き取られた主人公くんや、出戻り母子家庭の沙夜など、田舎の狭い地域コミュニティでは排斥されそうな子供たちをクラスに抱え、それはもう大変だったでしょう。それでも美晴先生は主人公くんたちが天文について興味を持っていると知ると、色々と手助けをしてくれるのです。主人公と沙夜がクラスに溶け込めたのも、美晴先生が天体観測の危機を支援してくれたからでした(体験版でも読めてしまう幼少期イベントは必見ですので、ぜひご覧ください)。子ども達の成長こそが美晴先生をして過酷な業務に耐えさせしむる原動力だったのです。しかしそれは諸刃の剣であり、子ども達の成長を自分が阻害してしまったと感じた時には、一挙に精神崩壊へと自らを追い込むことに繋がってしまうのです。主人公くんたち天体観測クラブはいち早く思春期に入った沙夜が崇高なる天体観測に恋情慕情を持ち込んだため崩壊してしまいます。その際主人公くんは一番の親友であったメインヒロインに裏切られる形となり、クラブの成果であった研究ノートを破きさってしまうのでした。この引き裂かれたノートを見た美晴先生は絶望します。自分の努力や指導が行き着いた先は、教え子が天体観測をしなくなってしまったという事実だったのです。こうして張り詰めていた気持ちがプッツリと切れてしまい、立ち上がれなくなってしまったのです。以上により美晴先生は廃校とともにそのまま職を辞し、ニートになったのでした。



  • 挫折系教員が再チャレンジできる社会を要求するようです
    • 美晴先生は最終的には天文台の職員になるのですがね。ニートとなった美晴先生はその余生をダラダラと浪費し実家のコンビニで店番をしながら怠惰な生活を送っていました。しかし美晴先生はニート直行になったのではなく、再就職しようと頑張っても駄目だったという事実が判明します。この精神的重圧が重くのしかかり社会人としての義務を拒否していたのです。この問題は根深く、普段はおちゃらけている先生ですが、トラウマを刺激されるとPTSDを発症させてしまうのです。そんな風に先生を追い込んでしまったのは、ノートを引き裂いてしまった主人公自身であり、小学校時代の主人公くんはつまらない意地を張って心情を吐露できなかったため、罪悪感を植え付けてしまったのでした。成長した主人公くんは美晴先生の実家に下宿をしながら、先生の心の闇に触れていくことになるのです。そして先生を救いたいと強く願うようになっていきます。こうして主人公くんはノートを引き裂いてしまった謝罪と、今までの自分を支えてくれた感謝を先生に捧げたのでした。上記の理由で、本当の意味で和解したことにより、美晴先生は徐々に回復していき、復職を果たすことができたのです。