雑録

言の葉舞い散る夏の風鈴「野原ゆう」シナリオの感想・レビュー

世間に負い目のある趣味を持つ少女がそれを肯定し将来の職業として目指す話。
「秘すべき事ではあるが恥ずべき事ではない」を命題として職種に誇りを持つ。
精神的に脆いゆうは何度も挫けかけるが、その都度声優パワーで復活していく。
同系統のテーマの作品としては『こえでおしごと!』を彷彿とさせる。
終局部は割と雑。主軸としてきた演じるキャラの内面掘り下げは二の次となってしまう。
本番直前に支えとしてきた声優励ましボイス入りスマホを忘れたからパニックなオチ。

野原ゆうのキャラクター表現とフラグ生成過程

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  • 世間に対して負い目のある趣味でも、それを肯定して良いんだ!
    • 野原ゆうは性的娯楽作品を愛する乙女。エロゲや官能小説をこよなく愛しています。そんなゆうは、自分もエロゲ声優になりたいと、声優業の門をたたくことになりました。ゆうが声優になりたいと思ったのは、自分の趣味を肯定してくれたエロゲ声優に憧れたからでした。エロゲはあくまでも陰でコッソリとやるものであり、世間の表立ってやるものではありません。そのためゆうはエロゲを愛しながらも世間の倫理観と板挟みにあってしまうのです。二律背反・アンビバレンツ!そんなゆうでしたが、ある時エロゲ特典の声優メッセージを聞き、それが転換点となります。自分の価値観は秘すべきものではあるが恥ずべきものではないんだ!と。こうしてゆうは自分の趣味を肯定することができ、自分もエロゲ声優になりたいと思ったのですね。このエロゲ声優三月リンが、別名義の日華こころであり、それ即ち詞葉だったのでした。
    • 声優を目指して演技をするゆうでしたが、精神的に脆くプレッシャーによって演技の時だけ咳が出るようになってしまいます。そんなゆうの力になるのはエロゲ声優三月リンの力。主人公くんはダメ絶対音感により詞葉=日華こころ=三月リンであると気づき、詞葉に頼んで励ましメッセージを吹き込んでもらいます。こうして新たなる力を得たゆうは少しずつ成長していきます。練習の際の即興劇「自宅のエチュード」で自宅での行動を再現した際、公開おなぬーを始めるゆうさんの熱意をご覧ください。絶頂に至った時、それを見ていた部員たちからは尊崇の念を集めて拍手が巻き起こります。



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  • 終局部はわりと雑。キャラの解釈問題は二の次となり、スマホ忘れたパニックとなる。
    • ゆう√の終局部ではキャラ解釈に苦戦するゆうの様子が描かれます。ビターエンドで後追い自殺するキャラの心情を理解できないのです。このキャラの心情描写の掘り下げをず~っとやっていたのですが、本番までに答えは出ず・・・しかも、この解決方法がすっごくおざなりなのです。なんと、本番直前、ゆうはスマホを忘れてしまいます。ゆうはスマホに三月リンさんの励ましメッセージを入れており、集中する際には常にそれを聞いていたのです。そのため励ましメッセージがなければ力が出ないようぅという状態になってしまい、演技の時だけ咳が出ちゃうの病が再発するのです。
    • この時、主人公くんがゆうを落ち着かせるために語ったのが、後追い自殺をしたキャラの解釈だったのですね。「自分を殺せるのはあなただけと約束したのだけれど、あなたは先に死んでしまったので、他の人に殺されないために自刃するわ」という解釈を展開。しかし決め手になったのは、三月リン名義で活動していた詞葉が正体バレを顧みず、三月リンの声でゆうを励ましたことでした。こうして復活したゆうは主人公くんの解釈を引っさげて演技に望み、見事最優秀賞を獲得するのでした。
    • ・・・キャラ解釈問題はゆうの苦悩の根本要因だったのに、ゆう自身が気づくことはありませんでした。よしんば主人公くんがキャラ解釈を語るとしても、スマホ忘れパニックを落ち着かせるための単なる手段になってしまっていました。しかも結局は詞葉が三月リンばれすることを顧みず、ゆうを救った、というのが主眼になってしまいました。以上により主題であったキャラ解釈問題はどっかへ行ってしまい、二の次になってしまったかのように感じられたのでした。

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