雑録

夏海公司『ガーリー・エアフォース』(KADOKAWA、2014年)の感想・レビュー

人間の女の子の形をした演算装置が突如発生した異星人?の侵略者と航空戦で戦う話。
ガンパレ』『マブラヴオルタネイティヴ』よろしく突如人類の危機となり戦時下へ突入!
2019年になってもセカイ系は健在でヒロインと主人公の関係性が世界の危機に直結する。
綾波長門系メインヒロインが異星人の肉体から組成されていて、嫌悪してしまう所がポイント。
日本陥落の危機の中、主人公くんがヒロインのもとに駆け付け謝罪する場面が見せ場。
主人公と共に航空機に乗り込んだ演算装置ヒロインは見事防空に成功!
軍用機がグリペンというと『群青の空を越えて』を思い出しますね・・・

演算装置グリペンのキャラクター表現とフラグ生成過程

  • 演算装置は女の子の形をしており軍用機に乗り込んで異星人と航空戦を繰り広げるの。
    • KADOKAWAの空戦モノでは『ストライクウィッチーズ』という作品がありましたが、軍用機は出てこずヒロインたちが第二次世界大戦パイロットを元ネタにしたキャラという設定でした。戦車や軍艦が流行ったんだから軍用機そのものも見たいだろ!!というノリであり、けどけど女の子もださなきゃだよね?だったら軍用機に乗り込ませるAI的な演算装置を女の子にしてしまえばよくね?という設定で、ヒロインを軍用機に乗り込ませます。メインヒロインは『群青の空を越えて』でお馴染みの軍用機グリペンに乗り込む演算装置で、第一印象としては綾波長門ヴェールヌイ系のキャラクター表現をしています。所謂「大人しい無表情系キャラ」ですが、これまでのキャラと差異化させるために、グリペンちゃんのキャラ造形として「実は人間らしくて色々と不器用でムキにもなりやすかったり存在意義の自己証明したくてしょうがなかったりする」という愛くるしい属性記号を付与されています。


  • 敵の侵略の意図などの詳細な設定はなく、ヒロインと主人公の関係が世界の危機に直結するというお馴染みのセカイ系パターン。
    • そんなグリペンちゃんを支えるのが、我らが主人公くん。主人公くんもまた波乱万丈なキャラ設定で、中国での航空ショーでママンが突如航空機に襲われて撃墜され死亡してしまいますし、中国から日本に脱出する際に敵航空機に引き揚げ船を沈没させられてしまいます。この引き揚げ船の全滅を救ってくれたのがグリペンちゃんであり、ここからボーイミーツガールなセカイ系展開へと突入していきます。
    • 演算装置グリペンちゃんは、何故か主人公くんと一緒にいると脳波が安定するとのことで、紆余曲折を経て主人公くんはグリペンちゃん安定化させる係りに就任します。ここから始まるイチャラブタイムをしばしお楽しみください。兵器であるが故に外の世界を何も知らないグリペンちゃんに色々な体験をさせていくのは、無垢な少女を自分色に染め上げるかのよう。基地をお散歩してグリペンちゃんの悲惨な現状を憐憫を感じて「Pity is akin to love.」をしたり、逆にグリペンちゃんを基地周辺に連れ出しブラブラデートしたりします。


  • ヒロインの後ろめたさと主人公くんの悔恨とその和解
    • イイ感じな仲になった主人公くんとグリペンちゃんでしたが、ここで問題発生!なんとグリペンちゃんは敵の一部分から組成されていたことが第三者から暴露されます。好意を寄せていた女の子が、実は自分の母を殺した敵の断片から作られており、しかもそれを黙っているだなんて!!主人公くんは思わず無意識的に嫌悪せずにはいられませんでした。何とも言えない表情で逃げ去るグリペンちゃんを追いかけることも出来ず、バックレかまして無視を決め込む主人公くん。しかし、訓練で成果を上げられないとグリペンちゃんが処分されてしまうその日、たまたまグリペンちゃんから貰ったプレゼントを開ける気になった主人公くん。そこには、グリペンちゃんの心情がしたためられていたのでした。まぁ、あんと都合の良い展開なことよと思いしが、これを読んだ主人公くんが若さ溢れる熱情で突っ走りグリペンちゃんに謝罪しに行く所はグッとくる展開ですね。
    • こうして和解した二人は力を合わせて空へと舞い上がります。主人公くんが傍にいればグリペンちゃんが安定するならば一緒に飛んでやる!!と。幸い主人公くんはママンに鍛えられており、基地でもシミュレーションで特訓していたため、大活躍!グリペンちゃんが覚醒するまで操縦桿を握り1機撃墜の戦果をあげます。覚醒後はグリペンちゃん無双となり、敵の襲撃を一掃しその存在意義を十二分に見せつけ、廃棄処分を撤回させハッピーエンドとなります。

以下主人公くんが謝罪する本作最大のグッとくるポイント

だが本音では分かっている。責められるべきは自分だ。己の無為を悔いながらただ漫然と朗報を待っていた。事態が好転するのを期待していた。母親が死んだときも同じ。結局自分はいつも問題から距離を置いている。己が無力だから、敵が強大だから、様々な理由をつけて立ち向かわずにいる。虚無主義者を気取っている。情けない。本気でグリペンを救いたければ何かしら行動を起こすべきだったのだ。人任せにせず。己の力で。

「あの時食堂でかばってやれなくて悪かった。一番大変な時そばにいてやれなくてすまなかった。手紙の返事ができなくて申し訳なかった。おまえの不安に気づいてやれないで、本当にひどいことをした。〔……〕許してくれとは言わない。言う資格もない。だけど誤解だけはといておきたかった。俺はお前を嫌っちゃいない。いなくなってくれとか思っていない。つまり・・・だから〔……〕おまえはおまえだ。ザイじゃない。〔……〕おまえは欠陥品じゃない。ただちょっと調子が悪いだけだ。時間をかければきっと普通に飛べるようになる〔……〕精一杯往生際悪く立ち回ろう。上の連中が考え直すまで逃げ回ろう。大丈夫、俺も付き合ってやる。おまえを一人で放り出したりしない」