『さくら、もゆ。 -as the Night's, Reincarnation-』「グランドエンド(クロ√)」の感想・レビュー

生まれてきたことを後悔する少年少女たちが周囲との絆に励まされ自己救済するはなし。
「戦うべきはいつだって、自分の心なんだよ」
「人生を救うことが出来る唯一のヒーローはいつだって自分自身だ」
クソ長い上に怒濤の伏線回収!時系列と視点が行ったり来たりするのでメモと読み直しが必要。
(ちなみにこれだけのボリュームをもってしても、あず咲さんのその後は回収しきれなかった・・・)
ここでは複雑なシナリオを解きほぐしながら整理していきたいと思います。
矛盾や齟齬があったら私の読解力不足と理解不足です・・・申し訳ない。
そして最後は、生まれて来なればよかったと嘆いていた少年少女が人生を肯定し合います。
「きみがこの世界に生まれてきてくれて、本当に、よかった」

(1)ましろと第一次夜の世界編

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  • ましろの悲劇とさくらの付喪神
    • 夜の世界の原型となったのが親に愛されなかった子どもたちの思念です。その中でも特別な役割を果たしたのが、ましろという少女でした。当初ましろは親に愛されながら育ったのですが、あるとき不治の病となります。両親は病院から幼児を攫ってきて、その健康な内蔵をましろに移植しようとしました。しかしながら、そんな面倒なことをしなくても攫ってきた子どもを自分たちの子どもにしちゃえばイイジャナイ!という結論に至ります。ましろは地下室に閉じ込められニグレクトされたまま孤独の心を抱えていきます。このような寂しい子どもたちの思念は、さくらに吸い寄せられることになったのです。そしてさくらの付喪神により子どもたちのさみしさは昇華され、夜の世界(第一ver)が出来たのでした。しかし虐待され闇堕ちした子ども達の怨念は復讐心に駆られていきます。満開となったさくらが現実世界をも侵蝕し始めたのです。これに対して大人たちは、子どもを生贄に捧げることで解消しようとします。ましろはブラフではこの時に生贄となった少女とされ、これによりさくらの呪いが止まったのだとされていました。しかし、ニグレクトされていたましろがとうとう死んだので、語り部の機能が停止し、第一次夜の世界は終焉を迎えたということが明らかにされます。

(2)あず咲と「第二の夜」の世界創造編

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  • 時を駆ける兎蛙あず咲~未来跳躍と過去跳躍~
    • ハル√で題材となった兎蛙姉弟のその後の伏線回収です。兎蛙あず咲は未来跳躍の力で飛ばされることになりましたが、その先はどこであったかという事が判明します。あず咲は未来跳躍により、セカイのその後を知ります。大人たちは月の光で狂乱しお互いを殺し合う悲劇が発生(多分戦争)し、そして有能だと見なされた一部の人類は地球を捨てて宇宙へ逃げ出すというのです。残された人々は汚泥に塗れて人生を過ごす・・・そんな未来を見て来たのでした。それでもあず咲さんは、愛する弟に会いたくてたまりませんでした。それ故、過去に戻って弟と会うために、夜の世界を創造することを決意するのです。ここであず咲が召喚したのが、夜の世界の原型を作ったましろ。二人は協力して第二次夜の世界を作り上げていきます。第二次夜の世界を創ったあず咲は目論み通り過去に跳躍して弟の智仁と結ばれ、赤ちゃんを授かります。過去にはましろも付いていき、しばらくは幸せな時間を過ごすのですが、子どもを産むとあず咲はまた未来跳躍してしまう呪いが再生してしまうのです。こうしてあず咲は生まれた子どもと碌々触れ合えないまま時間をジャンプしてしまったのでした。残されたあず咲の子どもを見守るのは、ましろの役割となり、思念体のため触れ合えないけれども、赤ちゃんの守護霊としての役割を果たします。

(3)夜の世界の創造主の対立編

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  • ましろVSあず咲
    • あず咲がいなくなった後、赤ちゃんは他家に引き取られ奏大雅となります。奏大雅なる人物はこの後、もう一人出てくるので、兎蛙姉弟の子どもを大雅Aと以下では表記します。
    • 大雅Aの能力は死後の世界と触れ合えること。夜の世界と現実を繋ぐことができたのです。一方で、ましろとあず咲の関係にひびが入ってきます。もともとあず咲は夜の世界を創った目的は、過去に戻って弟くんと性交し孕むためにありました。大雅Aの誕生により十分にその目的は果たされたのです。未来跳躍したあず咲の跳躍先の時間に、ましろや大雅Aの時間軸が追いついた時、ましろはあず咲にこれ以上夜の世界を広げるのはやめようと持ち掛けます。そして、殺し合いと殺戮の未来があるのなら夜の世界に拘らずに、それを回避する道を探そうと提案しようとするのですが・・・なんと、闇堕ちしていたあず咲はましろのいう事など一ミリも聞こうともしません。あず咲は戦争と地球脱出の犠牲となるであろう魂を、夜の世界で死後の生まれ直しをさせようとしていたのです。しかしましろは夜のセカイには先住のイキモノたちがおり、彼等を駆逐して犠牲としてしまうと反対します。以上により二人は袂を分かつことになったのです。そのためましろは自分が鍵となり夜の世界を閉ざしてしまったのでした。

(4)大雅A(兎蛙姉弟の子ども)とましろ

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  • 夜の女王ましろを救え
    • 兎蛙姉弟の近親相姦により生まれた奏大雅Aは、両親がいなかったため淋しい幼年期を過ごしました。そんな大雅Aの心の支えだったのが、半透明な思念体のましろでした。しかしましろが夜の世界を閉ざし引き籠ってしまったため、大雅Aのもとからいなくなってしまいます。このことを大雅Aが周囲に尋ねると、その異能が称賛されるようになります。悪意のある大人たちは大雅Aにましろを殺害させ、夜の世界を開放しようと目論んだのでした。こうして大雅Aはましろのことを次第に忘れ、成長していくことになります。
    • 一方でましろは世界をまっしろに書き換えることで、夜の世界も現世も救おうとします。しかし願い事には代償が必要です。誰よりも人から嫌われることを厭うましろは、自分が全世界から嫌われることで、この願い事を達成しようとします。しかし、耐えられそうにないため、願い事発動後に自分を殺してもらおうと、大雅Aを召喚することになります。
    • ましろと大雅Aが時を経て邂逅。大雅Aは自分の母親的存在であった半透明の思念体のましろのことを思い出していきます。そして自らを犠牲にしようとするましろに一緒に逃げようと持ち掛けるのです。大雅の強い思いはましろの心を打ちフラグ成立。しかし!!その直後、大雅Aがましろを救済し、脱出しようとしたその瞬間。なんと大雅Aは通り魔に刺殺されてしまったのでした・・・

(5)ましろと大雅B(「男の子」)編

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  • ましろ、当初の予定通り全人類の敵となる
    • 通り魔に刺殺されてしまった大雅A。しかし大雅Aは、自分が連れていた「男の子」に力を託します。この力に触れあえれば、ましろは解放され、夜の世界で大雅Aと再会できるのです。しかし、この「男の子」に情が移っていきます。「男の子」が大雅Aに連れられていたのは、自分の母親を探すためでした。ましろはこの母親探しに付き合うのですが、待っていたのは残酷な結末。なんと「男の子」の母親は別に子どもを作っており、全く知らない子扱いされてしまったのです。絶望!ここでましろは自分の安易な善意の押し付けが「男の子」の絶望を生んだと苦悩します。自分は夜の世界を捨てて逃げようとしていたけれど、やっぱりそれじゃだめだよね。夜の世界も現世も救わなきゃ!・・・ということで、ましろは自己を犠牲にし、全人類から嫌われる覚悟をして、夜の女王となったのでした。

(6)クロ祈願編(本編個別√における大雅Bの様子をクロの視点から再構成)

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  • 「男の子」、ましろを救うため、奏大雅Bとなる。
    • 個別ルートでの伏線回収
      • ここで個別√の時間軸にようやく繋がります。「男の子」は大雅Aとましろを救うために、今度は自分が立ち上がります。その手段とは、あさひさんが募集していた「夜の女王」との戦いの褒美。過去現在未来全ての時間軸から人材をスカウトしていたあさひさんにより遠くの過去に招かれたのでした。
      • あさひさんのもとにやってきた「男の子」は、尊敬していた奏大雅の名前を借りて名乗ることとなります。この「男の子」が個別√の主人公くんであります。以下ではこの大雅を大雅Bとします。そしてまた、「男の子」が連れていた子猫は、ましろの姿かたちを模して具現化し、クロと名乗ったのでした。夜の世界のイキモノは様々な能力を以て人間をサポートします。クロの能力とは大雅Bの不幸を全て肩代わりすること。ハル√で兎蛙あず咲の未来跳躍に主人公くん(大雅B)が巻き込まれていましたが、この不幸もクロが肩代わりすることとなります。クロが四六時中主人公くん(大雅B)のもとに居られなかったのは、あず咲の呪いを受けたクロはあず咲と同じように眠ると未来跳躍してしまうからなのでした。
    • 大雅B(「男の子」)、個別ルートではましろの存在を忘れる!
      • クロは全ての世界線において主人公くん(大雅B)を見守り続けていました。ハル√で大雅Bは夜の世界を忘れてしまいますが、それもクロの力によるものでした。こうしてましろや大雅Aのことを忘れ去った大雅Bはハルと共に天寿を全うし、幸せに人生を送りました。しかし、大雅Bはその死後、夜の世界に行くと、今までのことを思い出します。それ故、今度は大雅B(本物の大雅により救われた「男の子」)が大雅A(兎蛙姉弟の近親相姦によりできた息子)を救うべく立ち上がったのです。大雅Bはましろの代わりに自分が「夜の王」の役割を負うのでした。ちなみに、これによって大雅Aは1周目で死亡せずに夜の世界からましろを救出して二人で幸せな人生を送ります。

(7)大雅A(兎蛙姉弟の息子)が大雅B(「男の子」)を救済する話

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  • 魔王となりし大雅Bを救え
    • 大雅Bによりましろと共に幸せな人生を送った大雅A。天命を全うして夜の世界に赴くと、そこで過去の記憶を思い出します。自分たちは大雅Bのおかげで幸福な世界線を経験できたのだと。だったら、今度は大雅Bを救ってやらねばと立ち上がります。ましろの想いを代償に、大雅Aは過去跳躍。あさひさんに協力を請願して、魔王討伐メンバーたちに自分の事情を話し、夜の王を救済しようとします。その方法とは、大雅Bの個別√を大雅Aが追体験するというものでした。しかし大雅Aはハル√でのハル飛び降り自殺にびびってしまい、過去跳躍するための拳銃自殺を決行できなかったのです。この時間軸が、クロ√冒頭の描写につながることがようやく判明します。
    • クロからの電話で自らの使命を取り戻した大雅Aは、みっともないながらも過去跳躍する弾丸に撃ち抜かれることに成功し、大雅Bに会いに来ます。そして大雅Bに告げるのです。すべての世界線の不幸をこの世界線の自分達に集めて、この世界線の自分たちごと丸っと破棄すると。大雅Aは大雅Bに云います。「戦うべきはいつだって自分の心なんだよ。君の人生を救うことができる唯一のヒーローはいつだって自分自身だからだ」と。こうして大雅Bは自分自身とそしてクロを救うため、自分自身の戦いに挑むのです。

(8)クロ救済編

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  • どうして猫は人間になれないんだ!!
    • 自分は生まれて来なければ良かったと嘆く大雅B。そんな自己肯定感の低い少年に対し、クロは貴方が生まれてきてくれてよかったと告げようとします。しかしここでクロに罪悪感が襲い掛かるのです。なんとクロは人を闇堕ちさせてしまう性質を持っており、大雅Bの実母を暗黒化させた犯人がクロだったことが明らかになります。それ故クロは、大好きな大雅Bが虐待されるきっかけとなってしまった自分を責めて、メンタルクラッシュしてしまうのです。そしてクロは、自分など生まれて来なければよかったと思うようになってしまうのです・・・。大雅Bもクロも生まれてきたことを後悔し続けている・・・こんな二人が、お互いをお互いに必要とし、生まれてきてくれてありがとうをすれば、フラグは成立さ。やっとこさハッピーエンドを迎えて、めでたしめでたし~~~となりかけるのだが・・・
    • まだまだ続きあんねん!なんとクロはあず咲の呪い、すなわち未来跳躍してしまう能力が解かれておらず、主人公くんと結ばれても、すぐに別れることになってしまうのです。そして跳躍先の未来で再会するも、大雅Bはもう既に大人になっており夜の世界のイキモノであるクロを認識できないようになっていたのでした。こうしてクロは再び大雅Bの人生を見守るだけの一生を遂げることとなります。また大雅Bもその生涯を通して孤独であり、さらには大病を患ってしまいます。大雅Bに不幸が訪れるたびに命を消費して助けるのがクロであり、主人公くんの人生を完遂させます。主人公くんは大病から復帰後、フツーの一般人が人生の苦難を乗り越える記録を書くことに生き甲斐を見出すようになります。
    • そしてついにクロは全ての命を使い果たし、夜の世界へと還っていきます。するとどうでしょう。ここでついに秘密が明かされるのです。なんと大雅Bはクロと結ばれるだけでは飽き足らず、同じ人間としての人生を生きたいと望んでいたのです。しかし猫は人間にはなれません。その願い事を叶えるためには、物凄い代償が必要です。ではその代償とは!?なんと大雅Bはクロを認識できていてもわざと認識できていないフリをして、一生孤独な人生を送ることを代償としていたのです。つまりクロが支えてきた大雅Bの人生において、大雅B自身クロのことを認識でき、覚えていたにも関わらず、知らないふりをしていたのですね!!!
    • 愕然とするクロに全てのコトをネタバレしたあさひさんは、自分の命と十夜の命をクロに捧げることで、再び大雅Bの死に際に送り込みます。そしてクロは、余命幾ばくもない大雅Bとともに、その生涯の業績である「名も無き人々の記録」を完成させたのでした。感動。
    • こうして、今度こそ、今度こそ本当にハッピーエンドを迎えます。大雅Bは、大雅Aとましろの子どもとして、あさひを姉に、十夜を妹に、5人家族で転生していたのでした。クロは幼馴染のお隣さんとして・・・。思春期に入り、お互いのことを意識し始めた大雅Bとクロは少し疎遠になってしまいましたが、大雅Bの誕生日をきっかけにしてもう一度話すようになります。糸電話を通して想いを告げるクロたちが微笑ましいですね。「きみがこの世界に生まれてきてくれて、本当に、よかった」とハッピーエンドを迎えます。
    • 余談ですが、凄まじいボリュームで複雑な世界観と視点チェンジギミックと怒濤の伏線回収を成し遂げましたが、ましろと袂を分けた後のあず咲さん問題は解決しませんでしたな!!!きっと、FDでは転生後の大雅Bとクロが、世界の存亡をかけてあず咲さんと戦う展開となるな!!たぶん。恐らく。

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