『北へ。White Illumination』「春野琴梨」シナリオの感想・レビュー

母子家庭で父性愛を求める従妹の寂しさを埋める話。
琴莉の変Tを肯定するかどうかでエンド分岐。変T√の方が味わい深い。
アーパー女(英語)と書かれていたTシャツを嬉々として着ていた琴梨は大ショック。
このTシャツ事件を契機に琴梨はアイデンティティクライシスに陥るのだ。
主人公くんは琴梨を必死に励ますのだがそれは自分へのブーメランでもある。
(北海道に旅行するきっかけとなったのが鬱屈した生活の気分転換だったため)。

春野琴梨のキャラクター表現とフラグ生成過程

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  • 父を亡くした従妹が求める父性愛を充たせ
    • 春野琴梨は主人公くんの従妹のJK1で札幌市豊平区平岸ヒロイン。この平岸が長期休暇の間主人公くんが滞在する拠点となります。琴梨の母親はテレビ局でバリバリ働くキャリアウーマンであるため、家事炊事は琴梨が一手に引き受けていました。そのため琴梨の料理のスキルは高く、主人公くんに北海道式の家庭料理を振舞ってくれます(※かなり回数があり本作の見所のひとつ。唐突に始まる主人公くんの食レポもウリ)。琴梨ルートにおいて最初のテーマとなるのが母子家庭における父性愛の希求。明るい母親が家庭を励ましているものの死んだ父親の喪失感は大きく、亡き父を偲んで毎年食べるジンギスカンのエピソードの破壊力は凄まじいものがあります。当初主人公くんは琴梨が欲する父性愛を満たしていき、「お兄ちゃん」と慕われることになります。こうして琴梨と北海道ライフを過ごすことで好感度が蓄積されていくのです。北海道観光誘致政策ゲーのためコンテンツツーリズム的に重要であり、特に過去の景観がゲーム内に残っているところに歴史的意義があります。昔の札幌駅の外観を観て90年代末に思いを馳せることができます。

 

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  • 高校生のアイデンティティクライシスと将来の目標進路
    • 琴梨√で第2のテーマとなるのがアイデンティティクライシス。よもや変Tの選択肢が重要なシナリオの伏線となるなんて誰が想像したことでしょう。札幌滞在中の主人公くんはさらに春野家の母子旅行に随行することになるのですが、その時に琴梨からTシャツの柄について尋ねられるのです。この変Tを肯定すると怒濤のアイデンティティクライシスへと繋がります。なんとこのTシャツには英語で「アーパー女」と書かれていたのです。このTシャツを堂々と来て、ホテルのレストランに現れた琴梨は食後に母親から英語の意味を教えられ大ショックとなるのでした。さらにこのことが呼び水となり、琴梨は負のスパイラルに陥ります。母親がキャリアウーマンな一方、自分は勉強も運動も得意でなく将来も不安と悲観的になってしまうのです。そんな琴梨を励まして立ち直らせればフラグは成立さ。
    • しかし、これは大きなブーメランでもありました。主人公くんもまた鬱屈した生活を過ごしていたため、気分転換に北海道旅行に来ていたのです。突き刺さる事この上ないことでしょう。琴梨を励ますうちに自分のことを省みることを要求されるのですね。夏休み終了後、主人公くんは再び琴梨と会うためにバイトを始めます。唯々諾々と生きて来た人生に生きる目的が出来た瞬間でした。そして冬休み、再び北海道に渡った主人公くんは琴梨との交流を深めます。琴梨は主人公くんへ好意を伝えると共に、将来の夢として自分の料理スキルを活かして店を持ちたいと語ります。そしてFDでは、主人公くんもまた琴梨のために北海道の大学を受けることを決めたと手紙に書くのでした。
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