雑録

白昼夢の青写真 CASE-1「波多野凛」シナリオの感想・レビュー

陰鬱な中年男性の実存を描き出せず、失敗に終わってしまったシナリオ。
最終的にいつもの「少女に実存を見出す」というお決まりのパターンになる。
創作業の苦悩描写は、このライターのヒト『MUSICUS!』来島澄√やったんだろうなって感じ。
結局は「如何にして少女に救われたか」という個別具体的事例に帰結する。
普遍性を投げ捨てたので語り部を中年男性にした意味が欠落してしまった。
最後は突如妊娠エンド。少女が中年男性に妊娠を言い出せず別離という雑なオチとなる。

結局のところ「少女による自己救済」に終始し「中年男性の実存」は放り投げられた

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  • 小説を書けなくなった中年男性が一人の少女の為だけに文章を書く
    • 【1】主人公は40代半ばの小説家崩れの中年男性。古文の非常勤講師で糊口を凌いでいたが、夫婦生活は冷え切り、枯れ果てた毎日を送っていた。そんな中、大学時代の指導教授の葬儀から物語が動き始める。そこには若くして亡くなったベストセラー作家の娘が参列していたのである。その娘は波多野凛といい主人公の勤務先の高校の教え子でもあった。次第に主人公は凛と接点を持ち始めたことにより、再び文章を描くようになる。だが完成した作品は凛から酷評される。その内容は凛の父・波多野の人生を描いたものであり、主人公は作家・波多野を完璧超人のように描いたが、その私生活は破綻していたのであった。凛は父親から愛されず孤独な人生を送ってきたからこそ、救いを求めていたのであり、作家・波多野を賛美する作品を受け入れられなかったのである。主人公は冷え切った仲の奥さんを無理矢理性欲の捌け口とし完全に夫婦生活は崩壊する。
    • 【2】少女の救いとなるのは、主人公との日常。これまで叱られたことのない凛は金銭感覚が狂っていたことを主人公に説教され、きゅんきゅんして落ちる。チョロイン待った無し。負けず嫌いの凛は主人公の説諭を見返すためにバイトして自らカネを稼ぐという経験をし、家庭料理を振る舞う。しかし主人公の影には離婚寸前とはいえ婚姻相手がチラつくため、凛は嫉妬に駆られる。主人公にアジの三枚おろしを奥さんに指導したことがあると言われれば、自らも三枚おろしにチャレンジ。デート先で奥さんと遭遇すれば、これ見よがしに主人公に抱き着く。
    • 【3】奥さんの前で凛が主人公に抱き着いた事件は主人公を精神崩壊に追い込む。主人公は作家・波多野の人間性を知るため、凛から仕事場の鍵を借りて日記を読んでいたが、波多野の精神崩壊に自分を重ねるようになり、波多野と同じように自殺しようとする。死の淵に陥る主人公であったが、ここで凛からアジの三枚おろしの写真がスマホに届き、これにより生きる意志を取り戻す。主人公は自己の内部において凛の存在が救いになっていることに改めて気づき、そのことを文章にまとめて私小説めいた手紙を書き上げる。これは、凛に対し、いかほど主人公にとって彼女が必要なのかを綴った心情吐露であったのでフラグ構築に成功する。
    • 【4】フラグ後しばらくは幸せな日々が続くが、終局部は突如妊娠展開となる。凛が本当の意味で救われ主人公を信頼できていれば相談したかもしれない。しかし妊娠について話をすることすら凛にはできなかった。主人公と自分の今後のことを考えれば堕胎するしかないという極論に達する。しかし産婦人科でエコー写真を見せられると、自分のせいで生命を奪ってしまうことを受け入れられず愕然とする。結局、凛には亡き父が残した莫大な財産があったため、それを使って一人で生きていくことを決める。夏休み最終日、主人公に妊娠のことを最後まで言い出さず、日常のように主人公を玄関から見送る。こうして最終的にバッドエンドとなり幕を閉じる。

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