まいてつ Last Run!!「凪ふかみアフター」の感想・レビュー

選ばれなかったヒロインの心情描写を展開した挙句、両方選ぶエンドもある。
ノベルゲーで「選ばれなかったヒロイン問題」は割とテーマとして扱われる。
本作は凪orふかみを選ぶことで切られてしまったヒロインの心情を読まされる。
(それでなくとも非ハチロク√でハチロクが心を痛める描写が必ず挿入される)
両方選ぶエンドが片方選択√の情緒を破壊するだけなく解決方法もぶっ飛んでいる。
世論誘導して国会で議員立法してもらい認定家族制度とかいう展開。

概要

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  • 凪とふかみの成長
    • アフターの前半は凪とふかみの成長が描かれます。まず始めに凪の剣道大会から。凪は剣術では一流の腕前を持ち同世代では敵無しであるものの、戦い方が制限される剣道では未知数でした。そのため師匠から剣道大会に出る様に指示され主人公がその稽古をつけていくことになります。案の定、決勝で「剣道」の特性からくる制限から敗れてしまい凪は相当落ち込むことになります。凪の親友ふかみは、凪が初めて見せる精神的ショックに対処の方法が分からず、さらに嫉妬の感情もあったため関係がギスギスし始めます。しかしながら肥薩おれんじ鉄道の小旅行を経て凪は復活し、ふかみも車掌となるという目標を得ます。この後、凪は観光鉄道の機関士としての自覚を持ち始め、方言丸出しで男勝りのいなかっぺ大将から、大人への女性へと変貌していきます。一方ふかみも車掌になるべく駅務係からコツコツと仕事を身につけていき凪に負けず劣らず成長していきます。そんな二人を主人公は選ばなければならず、凪かふかみか両方かの選択肢が与えられます。どちらを選んでもどちらかは傷つくのでプレイヤーはしんどい。

 
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  • ノベルゲーにおける選ばれなかったヒロイン問題
    • ノベルゲーがマルチエンドという形式を取る以上、選ばれなかったヒロイン問題は避けられません。本作品では、凪orふかみかを選ばなければいけないのですが、それは片方を切ることに繋がる上、どちらを選んでも選ばれなかった方のヒロインが心を痛める心情描写がシナリオの中心となります。辛いことこの上ありません(※主人公は人の心の機微に疎いという設定なので、選ばれなかったヒロインに配慮することもない)。それでもなお、選ばれなかったヒロインの悲哀を描いたという点に着目すれば、情緒を生み出すことに成功したといえるでしょう。だがしかし、最大の問題点は両方とも選ぶエンドが用意されており、そこでの解決方法がぶっ飛んでいるということです。主人公は凪とふかみの両方と家族になりたいという欲望を周囲に承認してもらおうとします。さらに自分たちのコミュニティにおける承認だけでなく、国家的な保護まで得ようとします。世論誘導して社会を巻き込み市長の私的コネクションを利用して地元議員に接近し国会で議員立法してもらい認定家族制度を設け特別区指定まで受けようとするという凄まじい展開となります。ご都合主義がすぎるというかなんというか、情緒もへったくれもないハッピーエンド。
    • 一応フォローしておくと、上述したように凪ふかみ√では、男勝りで方言丸出しの凪が観光鉄道の機関士として自覚を持つ場面や、車掌を目指すふかみが駅務係からはじめてステップを踏んでいく様子など良い所もあります。しかし最後のぶっ飛んだオチが全てを持って行ってしまったのでした。

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