- 概要
【目次】
はじめに
- 本稿の目的
- 海軍協会とは何か
- 成立
- 1917年に海軍出身者、貴族院議員などによって設立。当初の設立目的は八八艦隊の実現をはじめとした軍拡の推進であり、予算成立により実を結ぶ。
- 衰退
- 転機
- 発展
- 成立
第1章 海軍の宣伝普及活動と海軍協会の位置づけ
第1節 海軍省の宣伝普及活動
- 海軍軍事普及委員会
- 海軍軍事普及部
- 1932年委員会を普及部に改編。組織の規模は20名程度へと拡大。
- 宣伝普及の関連業務にあたる部内の統制権を得るなど、積極的な事業を行うことが出来るようになった。
- 新聞報道への働きかけや政治的主張を押し出した映画の制作を行うようになった。
- 新聞記者への働きかけの関しては、直接的な手法をとらず、問題となる記事が出るたびに座談会を開いて意見交換を行うなど、間接的に働きかけを行っていた。
- 海軍省の宣伝機関(委員会・普及部)の問題点
- 陸軍に比べて宣伝活動が小規模だった
- 地方での拠点がなかった
- 普及部の廃止
第2節 海軍協会と有終会の関係性
- 有終会とは
- 設立と会員数
- 海軍協会よりも早く1913年10月に設立。当初の会員は元海軍士官を中心に230名程度。1938年時点では3044人であり、海軍協会と比べて規模の大きい組織とは言い難かった。
- 規模が小さい理由
- 水交社との重複
- 海軍の将校クラブ水交社と実質的に重複し、有終会の会合の多くも水交社の事務所で行われる。
- 主な事業
- 機関紙や海軍関係の書籍・冊子の発行、軍艦や工廠の見学、各種講演会への講演官の派遣。講演会の内容は海軍軍備に関することが中心。講演官の派遣は元海軍士官を主な会員とする有終会の得意分野。
- 設立と会員数
- 海軍協会と有終会の関係性
- 向田金一「海軍協会と在郷海軍軍人」(『有終』322、1940年9月、130-133頁)より
- 普及部廃止以降の有終会と海軍協会
- 普及部廃止以降の講演活動の主体として、有終会の会員=在郷海軍士官が考えられている。
- 海軍協会と有終会は、1940年の普及部廃止以降、同一の人間が双方の会員になるなど、必ずしも分離して活動していなかった。
- 海軍から海軍協会に期待されたこと
- 多数の会員から構成されることによる全国基盤と、1940年以降は海軍の中核的宣伝機関としての役割
第2章 町村分会での活動
第1節 支部・分会の成立と展開
- 分会レベルでの会員募集
- 磐田郡町村長会長発各町宛「海軍協会々員募集ノ件」(『往復文書綴』1934年9月10日)
- 海軍協会会員の募集人員が町村ごとに平均30人と決まっており、町村規模を考慮したうえで掛塚町では56人と通知される。
- 会員募集の取り纏めを町村長が行っていることも注目される。
- 磐田郡町村長会長発各町宛「海軍協会々員募集ノ件」(『往復文書綴』1934年9月10日)
第3章 海軍協会と海軍志願兵
第1節 南洋進出から海軍志願兵徴募へ
- 海軍協会の目的→「海事思想」「海軍思想」の普及
- 「海事思想」とは
- 海洋に関連するあらゆる事業。海軍、海運、造船、航海、通商貿易、水産漁業、その他植民等に至るまで、あらゆる諸般の事業の総称。一切の海事関係の事業。
- 「海事思想」の普及とは「海事」に対する理解や共感を得るための普及活動。
- 「海軍思想」とは
- 「海事思想」のうち海軍に限った内容。海軍軍備に対する理解。
- 「海事思想」とは
- 普及活動の達成目標の時期ごとの違い
- 1932年~36年:両軍縮条約の破棄
- 1937年~40年:南洋への進出
- 1940年以降:志願兵の奨励
- 対米戦に備えた軍拡を目標とし、その達成のための手段が海軍志願兵の奨励。海事思想の普及が海軍志願兵の徴募成績に結び付く。
第2節 海軍協会における海軍志願兵徴募活動
- 海軍協会の志願兵事業
- 受験者案内の発行
- 1940年以降、海軍当局の検閲を受けて志願兵受検参考書を、役場や志願兵相談所で、無料配布。
- 内容は志願兵の意義、兵種、志願条件、試験内容、入団後の待遇、学力試験の過去問題など。海軍の受験情報のみではなく、海軍に採用されてから入営するまでの心構え、海軍入営後の進級給与などの現実的な問題にも触れる。
- その他の事業
- 小中学校生徒を対象とした講演会・映画会
- 在郷海軍軍人と志願を希望する学生の座談会
- 志願を考えている少年が相談する海軍志願者相談所の設置
- 志願者を対象とした予習教育・模擬検査
- 徴募成績が優良な家庭に対する表彰
- 入団予定者に対する予習教育
- 1944年3月には『指導者用海軍志願兵参考書』を発行
- 受験者案内の発行
- 静岡県で海軍協会が行った事業
- 映画会…志願兵徴募のための創意工夫として講演幷映画班の派遣が紹介され、映画会は志願兵徴募に有効とされる。
- 志願兵相談所…志願兵に向けて行う事業の中でも中心的な事業。『指導者用海軍志願兵参考書』では「海軍志願兵の意義を認識せしむると共に、特に志願書用紙を備えこれを手交して志願の意思を堅確ならしめる等、努めて積極的なる働きかけをなすやうでありたい」と述べ、単に志願についての説明をするのみでなく、志願を半ば強要する場面もあった。
- 海軍協会支部会・分会と行政組織
- 海軍協会本部の志願兵についての主張
- 志願兵は在営年限が長く時間をかけて技術の習得が出来るため、海軍において志願兵は重要。
- 支部の拡充がそのまま志願兵徴募の成績につながると説明されるようになる。
- 志願兵のための『海之日本』の記事
- ①海軍に志願を考えている青少年向けの文章
- 志願兵が抱えている悩みに答えるような文章や、基本的な兵種とその概要や志願の方法など
- ②海軍志願兵を指導する人物にあてた文章
- 女性の役割を重視していることに特徴
- 「日本の女性に告ぐ」(『海之日本』191、1940年9月)では志願兵の母や姉に向けて「どうか日本の女性よ、日本を護る海軍に貴女の立派な御子さんを、有為の弟を、海軍で御奉公せしめると云う気持ちになつて頂きたい」と子弟や弟を志願させるように求めている。
- 海軍協会の会員には女性も含まれており、呉や兵庫には婦人部が設立されるほど、女性会員が存在していた(「呉支部に婦人部壇上」『海之日本』173、1939年8月、8頁)。
- 女性の役割を重視していることに特徴
- ③海軍協会の方針として志願兵の必要性を説く文章
- ①海軍に志願を考えている青少年向けの文章
- 海軍協会本部と行政組織
- 地方に拠点を持つ利点を背景に、行政と連携しながら志願兵個人とも関わる事業を行い、機関紙上でも呼びかけを行う。