雑録

『ふゆから、くるる。 体験版』(シルキーズプラス)の感想・レビュー

成体と幼体の輪廻を繰り返す箱庭系学園で殺された友人の頭部を探すべく名探偵する話。
舞台は天才を生み出すために外界から隔離され第三者に観測されているという箱庭世界。
人々は成人まで成長したら今度は幼化し、赤子になったらまた成長する事を繰り返している。
このプチ輪廻はカーネーションと呼ばれており解脱するには天才と認められねばならない。
主人公が研究しているのはプログラミングでチェスを極めること(チェスの世界の破壊)。
だがこの世界の破壊を語ったことで第二手芸部部長月角島ヴィカが殺されてしまう。
40~50時間以内に頭部が見つかれば再生は可能だが今度は主人公の友人も殺される。
ショックを受ける主人公だが希望を捨てずに奮起し名探偵して頭部を見つける決意をする。

成体⇔幼体の輪廻・箱庭世界の観測・秩序の形成と破壊・名探偵する

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  • 宇宙(科学系SF)と宗教(仏教)と探偵モノ
    • 【1】もともと宗教においては世界の原理を解き明かすことが求められており、それぞれの宗教で独自の宇宙観を有していました。西欧で発展した自然科学もその原初は神がいることを確信するための研究から始まりました。四季くるシリーズでは特に仏教への傾倒が見られ密教曼荼羅がモチーフになることが多々ありましたが、本作の場合は現代における宇宙観と仏教系世界観が交差するところが見どころの一つです。その表象として登場するのが、第二手芸部の部長;月角島ヴィカさんです。第二手芸部は、実用品を作る第一手芸部とは違い、芸術作品を作り出すことを目的とした部活でした。月角島ヴィカさん以外は皆、天才と認められ学園を卒業しているのですが、彼女たちが作成した成果品はどれも世界への怨念を表現したものでした。
    • 【2】ここで彼女たちが棚を針でひっかいて細かい顔をたくさん書いていたという小話が挿入された際、いよいよ曼荼羅が登場します。宇宙の原理を表現したものとしての曼荼羅は何故か心が落ち着くものだと述懐されます。そんな宇宙の原理、世界の根本に対して、主人公は破壊願望を抱いています。その手段はプログラミングであり、チェスにおいて神の一手を極めることで、チェスの世界を終わらせようとしていたのです。この主人公の世界を終わらせる研究を聞いた月角島ヴィカさんは、自分の人生の方針を定めたという意味深な発言をします。そして間もなく殺され、首まで持ち去られたのでした。
    • 【3】本作の仏教思想は宇宙の原理としての曼荼羅だけでなく、輪廻もまたモチーフとして多用されています。火の鳥にマキムラというキャラがいてクソ鳥によって歪んだ形で不老不死にされてしまいます。それは成人まで成長すると今度は幼化が始まり、赤ちゃんになるとまた成長するという無限ループだったのです。本作の場合もこれを踏襲しており、学園内の生徒は皆、成長と幼化を繰り返すという形で不老不死です。ですが1点異なるところがあって、頭部を失って40~50時間経過すると(元の個体としての)再生ができなくなってしまうというのです。クローンによる復元は可能ですが、脳の神経配列が異なるため、それはもう別個体になってしまうという意味で死を迎えるのです。主人公は月角島ヴィカが自分のせいで死んだのではないかという疑念に苦しむことになります。さらに主人公の性的パートナーである霜雪しほんもまた頭部を失った状態で殺されてしまいます。物語の序盤の目的としては、頭部を見つけるために名探偵をするという流れになっています。宇宙と仏教がどのように物語で解き明かされるのかが、注目ポイント!哲学思想ゲーは少なくなってきているので、是非頑張って欲しいところです。
    • 【4】最後に百合要素について。本作は発表時に百合ゲー百合ゲーと騒がれたため、ライター自身がそれを否定する固定ツイートをSNSにぶら下げたことでも有名となりました。体験版の時点で百合ゲーかそうではないかがちゃんと提示されるんだろーナ!?と一部の読者からは注目されていたわけですが、肉棒がついていることが確認されております。そうなるとこれはふたなり?というものになるのでしょうか。個人的には別に百合に抵抗感がないのですが、世間ではなんでそんなに百合ゲーが忌避されるのか謎です。

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