【感想】労働と生活と生き甲斐と残飯(『こづかい万歳』第24話を読んだ)

残飯をツマミに朝に晩酌をする中年夜間工場労働者の話。
この作品の面白さは登場人物が実に楽しそうに生活を語る所である。
各自が人生に楽しみや喜びを見出しておりそれを誇りとしているのだ。
家と工場を往復し残飯で安酒を呷るだけの日々が輝いて見える。
最後は息子が中学生になり飯を残さなくなったので成長を感じて幕を閉じる。
衰退国日本で生きる民衆の生活史としても貴重なものである。

残飯をリメイクしてつまみを爆誕させていく中年工場労働者の記録

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  • 底辺な生活を輝かせるもの
    • 衰退国日本では老後の資金として2000万円貯める必要があると言われている。それでなくとも、生きているだけで住民税・健康保険料・年金が課せられる。さらに家庭を持てば家を建てたり車が必要になり、固定資産税や自動車税、子育てにかかるカネや子どもを大学に入れるカネなどが必要となる。必然的に消費に回すカネを抑えねばならず、できるだけカネを使わずに生きねばならない。それが衰退国日本の現状である。貧困階層でなく貯蓄はある程度あったとしても、生活の貧困化は進み、底辺暮らしを余儀なくされるのだ。
    • そんな中、いかに少ないカネで人生を楽しむかを追求した作品がこづかい万歳であるが、今回はなんと「残飯」を人生の生き甲斐とする工場労働者が登場。字面だけ見れば、底辺国日本のディストピアまったなしな境遇であるが、とても楽しそうなのである。人生が輝いている。チーズ・ニンニク・卵を駆使してあらゆる残飯をツマミに変えていくオッサンはまさにスーパーヒーローだ。特に白米を魔改造するレシピは開眼である。(私は最低限炊飯だけは必ずしているが、いつもおかず用意するのが面倒だったので、この白米魔改造は是非実践しようと思った)
    • シナリオは次第に残飯の残し具合で子どもの成長を感じるというヒューマンドラマが展開されていく。ラストは子どもが成長期に入り、飯を残さなくなったので残飯ツマミは終わりを迎えるという感動のクライマックス。これまで培った残飯レシピの知識でタマゴ・チーズ・ニンニクを駆使しながら子どもに手料理を振る舞い、子どもは喜んでどんぶり飯をかっこむという姿は感動を誘う。

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こづかい万歳傑作選