ウマ娘「ダイイチルビー」シナリオの感想・レビュー

「目指すべきものがあるならば、それに相応しい振る舞いを。それこそがいずれ自身を望む姿へ変えるのです」
封建的な上流身分のお嬢様の為に自己研鑽できるかどうかをトレーナー試験として振るいにかけられる話。
ダイイチルビーは上流身分の淑女であることが求められ、自身もその期待に応えるべく自分を高めていた。
そんな彼女の専属トレーナーになるためには、耐えず修養を積めるかどうかが問われることとなる。
ダイイチルビーの要求は厳しく脱落者が続出し、最後まで残ったのが主人公トレーナーだけであった。
専属トレーナー就任後はダイイチルビーが抱える使命感に寄り添うことができるかどうかが焦点となる。
無表情で機械のような少女が胸の内に秘める宮沢賢治的思想を読み取ることができればフラグは成立。
トレーナーは夏の夜空の散歩にダイイチルビーを誘うとさそり座を二人で見上げることになる。

ダイイチルビーのキャラクター表現とフラグ生成過程

特権身分であることを受け入れ絶えず自己研鑽を積む少女に寄り添えるか
  • "華麗なる一族"の一員として生まれ、重責から目を背けぬ彼女。それを全力で支える事だけが、トレーナーとしてできる全てだ。
    • 上流身分に属するダイイチルビーは無表情で機械のようにお稽古事等の過密スケジュールをこなす少女。自分の運命を受け入れており、それに見合う努力をすることを怠らない。フツーだったら子どもの時にこのような特殊な環境に対して疑問を抱くことは想像に難くなく、なぜルビーが運命を受け入れ自己研鑽を当然のものとするようになったのかは何か理由があるはずであろう。なぜルビーがこんなにも上流身分としての立場に応えたいと思うのかはテーマとしても大衆に訴求するはずだ。だがキャラストではそれは所与のものであり描かれることは無い。寧ろトレーナーがそれに気づくことがシナリオの主軸となる。
    • ルビーシナリオの前半はトレーナー試験が扱われる。特権身分で能力も高いルビーの専属になりたいトレーナーは多く、試験が課されることとなる。その試験内容は一般的なトレーナーからはかけ離れたものであり、特権身分に相応しい能力を身につけるための自己研鑽を耐えず行うことができるかが評価規準となる。ここでのポイントは特権身分に必要な資質を持っているかどうかではなく、資質を身につけようと努力できるかどうかが焦点となる。特権身分の能力といっても、それは流動的なものである。それ故、何が必要かを分析し、それを一定水準まで習得する自己研鑽ができるかどうかが問われるのだ。主人公トレーナーは様々な試練を乗り越えていく中でルビーの心意気を体感することになる。
    • トレーナー試験の結果、最後まで残ったのは主人公トレーナーだけであり、専属に決定する。主人公トレーナーがどんなムチャブリでも真摯に自己研鑽する姿勢が評価の対象となったのだ!専属就任後はルビーを気遣って息抜きなどを画策するが、それは大きなお世話だっと思い知らされる。ルビーは自ら自分の特権身分としての生い立ちを受け入れており、自分の意志でそれに応えようとしているのだ。トレーナーとして出来ることは彼女に寄り添って支えていくことだけだという思想に辿り着く。
    • だがダイイチルビーは全く以て機械人形なのではなく、心の中には豊かな感情があったのだ。美術館にトレーナーを連れて行った時には、会談相手のネタ探しのために特別展を訪れただけで好きな画家でも何でもないと切って捨てるルビー。しかし主人公トレーナーは彼女がさそり座の絵画に強く惹かれていることを見抜いていた。それ故、夏合宿終了後、せめて無聊を慰めるためルビーを誘い、星見を行う。夏の夜空に輝くアンタレスはルビーの心を打つ。ルビーは相変わらず無表情だが、トレーナーとの間に仄かな感情の萌しを芽生えさせたのであった。

無表情で機械のような少女が垣間見せるアンタレスへのコダワリ
トレーナーとしてダイイチルビーのために出来る事とは
ダイイチルビーはトレーナーのことが大好き