雑録

レミニセンス(体験版)の感想・レビュー

  • 『レミニセンス』の趣旨
    • 「優秀だけれども社会的には評価されないアウトロー系の主人公が、周囲からの妬みや嫉みに煩悶しながらも、、資質と能力を示して困難を解決していく」というパターン。

実に衣笠彰梧イズムの溢れる作品となっております。『こんぼく』や『暁の護衛』と同系統の主人公像を継承しており、こうなんといいますか、「社会不適合者が実力主義で社会的に評価の高い者ども蹴散らしていく姿」というものは一種の爽快感がありますね。さらに今作は、過去に挫折した主人公に加え、その主人公に呪詛の愛憎をかける妹君がいて、さらに魅力的なものとなっています。かなりシナリオを熱中して読んでしまいた。多分買うでしょう。

レミニセンスの体験版概要

レミニセンスの体験版は、挫折していた主人公さんを再起させて、その能力をプレイヤァに分かってもらうための問題解決が描かれます。過去にワケアリの主人公さんが歴史の臨時教員やってて、非正規雇用者の苦しみを吐露してくれる描写には全力で賛辞を送りたいですね。ハラショー!そして、主人公さんの能力紹介としての機能を付与された最初の事件の問題解決も、ただのお使いRPGではありません。複数の問題を並列的に処理していってそれが大きな一つの問題へと結びつくという感じで、構成力にも面白みがあるように感じられました。その複数の問題とは以下の通りです。


  • 1.食料加工業者と契約を勝ち取れ
    • 臨時教員の非正規雇用状態から抜けだし、行政機関で働くことになった主人公さん。コネ採用にも等しい主人公さんに同期たちの目は冷たいものでした。そんな中、若手たちに経験を積ませようと仕事が与えられます。その仕事が「食料加工業者との契約を勝ち取る」というものだったのです。同期たちは優秀ですが堅物で融通が利かない官僚気質のため、一般企業との契約がどういうものだかわかっていないという設定です。彼らに対して底辺を生きてきた者だからこそ出来る主人公さんの方法という対比で物語りが進んでいきます。うむうむ、こういう社会の敗残者だからこその経験を武器にするってのは負け組たちの奴隷根性を満足させるものがあるぜぃ。そして同期たちは、契約料の釣り上げという正攻法を採りますが失敗します。そこへ主人公さんが日本式「SETTAI」を実行し、契約更新へ繋げたのでした。



  • 2.遺伝子組み換え作物健康被害
    • 上記の食料加工業者は遺伝子組み替えを武器に食糧増産を図っていました。ですが、この新たな遺伝子組み換えの新技術は人体に影響を及ぼすものだったのです。この食品は配給品として出回っており、常食にしていた主人公さんは体調を崩したため問題に気づけたのでした(配給品を口にしない上層部が気づけるわけもないので、ここでも社会的底辺だからこその強みが効いています)。そのため食品安全調査を行うのですが、どこの機関でもシロとなり、逆に信頼を失ってしまう結果となります。主人公さんは窮地に陥るのですが、それでも自分の仮説を諦めきれません。凄腕研究職に何回も頭を下げ、調査に協力してもらえることになったのでした。この凄腕研究職に会う流れがご都合主義展開ですが、粘りと科学的根拠を理詰めで用いる主人公さんはステキ。結局、凄腕研究職によって、検査では問題ないが、体内に摂取されると健康被害を起こすものであったことが証明されました。こうして、前述の第1項目「食料加工業者と契約を勝ち取れ」において、この「健康被害問題」をちらつかせることによって、相手を叩き潰すのではなく「優位な条件で契約更新」をさせるというウィンウィン?の関係を勝ち取るのです!


  • 3.児童虐待問題
    • 主人公さんが携わってきた上記の食品加工業の諸問題ですが、この問題の解決には業者側の家族の個人的な問題が存在していました。個別具体的な個人の諸問題を描くことで、一般的普遍的な社会問題を抉り出そうとするというパターンですね。遺伝子組み換え作物健康被害をリークしてくれたのは社長の娘でした。業者の社長の家族は後妻の連れ子の兄妹で、社長とは血のつながりはありません。この社長が義娘に虐待を繰り返していたのです。ですが虐待を告発するだけでは解決になりません。兄妹は引き取ってくれた義父に対して、恩義をも感じていたし、経済的にも自立できていなかったからです。父親を社会的に抹殺せずに問題解決するには?と模索する中で、我らが主人公さんの活躍が光ります。上記の第2項目の「遺伝子組み換え作物健康被害」の調査結果を武器に社長を脅します。遺伝子組み換えの健康被害などなかったことにして欲しかったら、児童虐待をするなと言うのです。もしこの要望が通らなかったら、社会的に抹殺すると。こうして、世間的な問題にならずに内々で問題を処理することに成功し、この兄妹と親密な関係になるのでした。


以上のように、三つの問題を同時並行的に処理していくシナリオは結構読み応えがあり、なかなか面白いものでした。また過去の女との確執や主人公さんの妹の愛憎の呪詛などは興味が惹かれるところです。あとメイドのアクセラさんが容赦なくディスってくれます。

  • 妹;島津秋の名台詞
    • 応援なんて冗談じゃない……なにが、誰かの役に立ちたいよ。笑わせないで。あんな人、死ねばいい。
    • 夢をあきらめて、転んでる兄さんを見てるのが、私のたった1つの楽しみだったのに……知ってるよね?アクセラは。
    • あの人が特務官の夢を諦めた時、私は嬉しかった。挫折して、苦しんでいく姿を見てるのが幸せだった。なのに……今更、夢を取り戻そうとして……何ひとりで前を向き始めてるんだろ……いつだってそう。兄さんは身勝手。自分の都合の良いように記憶を整理してる。許せない……。思い出せばいいのよ……なにもかも。私が犯した罪も、兄さんが私にしたことも、全部全部全部全部全部。また、あの時みたいに壊れたらいいのよ。それから――!
    • ……私は絶対に許さない……兄さんも、私を許さない……ねぇ、アクセラ……私がお願いしたら……兄さんを…―――殺してくれる?



  • タイトル考察?
    • 今ではもう昔のことだが、私は若い頃、教員を目指していました(今はただの非正規講師)。そのときに学習理論を学んだのですが、教育用語で「レミニセンス」とでてきます。「レミニセンス」はこの作品のキャッチコピーにもあるように「記憶」と関係しています。普通、一般的には記憶は時間の経過とともに低下していきます。ですが、条件によっては記憶は一定時間経過後の方が良くなる場合があるのです。このことをさして「レミニセンス」といいます。
      • レミニセンスは無意味綴りの場合は数分後、詩や散文などの有意味材料では数日後に起こる。また、運動技能の学習でもレミニセンスが生じる。
    • おそらく「主人公さんが挫折を経験し社会的弱者へと転落している一定の時間」が今の主人公さんの資質を伸ばし人間として成長を促したことを意味しているのではないでしょうか。と勝手に想像しています。しっかし、こういう夢を諦めちゃダメ的な作品をしていると、博士課程へ進まなかった自分が責められているようで辛いものがありますな。まぁそれは代償行為と捉え、現実は諦念と則天去私ですよ。