あきゆめくくる体験版の感想・レビュー

四季狂うシリーズ第3弾。哲学思想系空想科学SFモノ。
排斥されたデザイナーズチャイルドたちの蜂起が失敗しループする世界へ流刑されたはなし。
その世界に存在するのは量子爆弾により可能性を奪われループし続ける人間の残滓WSPだった。
主人公くんたちはこのループ世界を変革するためWSPに干渉し認識を変えようと試みる。
その手段がラブコメであり、人間が辛い環境の中でも根源的に求める娯楽を提供するのだ。
体験版をやってからもう1回プロローグを見るとWSPサイドからの視点が分かる。

概要

  • 空想科学SF学園異能バトル
    • 主人公くんたちは遺伝子操作されたデザイナーズチャイルドです。生物多様性の名の下に人体実験され異能を手に入れさせられました。主人公くんたちの親たち世代はその異能及び派生技術を駆使して権益を握っていいたのですが・・・。異能は危険視されることになり規制の対象とされます。利用されてポイ済み。そのことに納得がいかない主人公くんたちは学園闘争を行い反逆を企てるのですが、謀叛は鎮圧されて終結しました。その後、主人公くんたちは流刑されることとなり、量子爆弾が落ちた北海道の地方都市「ルルラン」へと封じられたのです。ルルラン一帯は量子爆弾により可能性を奪われ、同じ日をループし続ける構造となっていました。二重スリットのはなしとか観測理論がところせましと出てきます。観測されて認識されると現実として定着するのです云々。また自己の存在認識が伏線としてテーマとなっているところもポイントであり、多重人格(かもしれない)炉利娘の衒学知識が提示されます。世界5秒前仮説、コネクトームによる過去と現在の断絶、シミュレーションされた一端の可能性などが混ぜられて語られていきます。個人的には終末思想系のはなしが結構共感でき、子孫を残すべきではないので去勢を行おうとするピンクヒロインや、人類そのものの秩序ある終焉を唱えた裏ヒロイン(真)などの思想を面白く感じました。


  • 主体的な意志の確立というものは普遍的なテーマなんだよなぁと
    • 体験版では物語の目的の提示がなされますが、それが主人公くんが主体的な意志の確立を目指すこと。これまで主人公くんは他人に身を任せて行動してきました。学園闘争で反乱に加わったのも幼馴染に同調しただけであり、自分から何かを決めようとする気概に欠けていたのです。そんな主人公くんは、炉利娘から存在に必然性などなくただ朽ちていけと宣告されます。料理も自慰もうまくできず食欲も性欲もただ満たすだけという不完全燃焼の描写で嗚咽を漏らす展開はかなり破壊力抜群です。そんな主人公くんは付与されるだけの事象を変えたいと意識を持つようになります。そんなおり、主人公くんは量子爆弾により可能性を奪われループするだけの毎日を送る人間の残滓:WSPと行動を共にすることになります。するとWSPは爆弾が落とされた日の残酷な末期(シェルターに避難するもパニックに陥り恐怖と混乱のなかで爆弾が落とされ死亡)を繰り返していることを眼前とすることになります。この無残なループを救いたい・・・そう思った主人公くんはループ世界を変えようと決意します。ではどうやって?その方法はWSPに干渉することでした。つまりは楽しい雰囲気を作り、その雰囲気によって干渉しようというのです。その楽しい雰囲気を作る具体的な手段は何か?主人公くんは絶望におちった時ラブコメ(おそらくは『とらぶる』)によって救われたことを語ります。こうしてラブコメにより世界を救う計画が始まったのでした。体験版エンド後にプロローグを見ると、WSPたちがラブコメする主人公くんたちを認識しており変革された世界の一部を見ることができるという寸法です。

抜粋

人間の存在をめぐる蘊蓄編

 

主体的な意志へのめばえ