缶詰少女ノ終末世界「更紗サリシナリオ」の感想・レビュー

世界を閉塞させようとする少女を、世界の果てを目指す少年が救うはなし。
「世界の果て」が「人類の可能性」であると定義され、主人公は宇宙を目指すことになる。
『3くる』と同じコンセプトであり「終末」=「核の冬」なので『缶詰少女』は『ふゆくる』。
終末を望んだはずの少女が仲間との交流で終末が望めなくなった際のアンビバレンツが見所か?
ラストはウユニ塩湖エンド。分離した多重人格のツバキと主人公くんが再会し、物語の幕は閉じられる。

終末が本当に起こったと思ったらそれは更紗の内部だけであり、最終的に世界の果てを目指す主人公くんが更紗の閉塞状況を吹き飛ばすのであった!

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  • 「終末」の疑似体験と「竜生九子」
    • 更紗ルートではホントウに「終末」を体験することになります。核ミサイルが3発も日本に落とされ、ネットが使えなくなります。主人公くんと更紗は略奪による治安の崩壊を恐れ、更紗のアパートに閉じこもることに。テレビ放送も不要不急の外出を控える事をアナウンスする警告を最後にシャットダウン。突如として極限状況に投げ込まれた二人は、アパート内サバイバルを展開します。生命の危機を脅かされるなかで若い男女が部屋に閉じ込められたらやることはもう一つしかなく不安と恐怖を紛らわせるためもあってか二人は身体を貪るようになります。そしてついに電気も使えなくなり、このまま閉じこもっていても埒が明かないということで、外に様子見にでようとするのですが・・・はーい、ここで終末タイムは終了だよぉ!
    • アパートのドアを叩く音に対し、略奪の暴徒ではないかとドキドキしながらドアスコープを覗くと、そこには烏森さんの姿が!!ここからの流れは超特急で進んでいきます。烏森さんは普段は意識下にあるツバキの人格を覚醒させる呪文を使えましたよね。そしてツバキの人格は更紗に取り込まれていました。それ故、烏森さんが呪術を使うと、更紗の身体を依り代としてツバキが顕現するのです。そしてトートツにツバキから語られる伏線回収。『缶詰少女』の世界観は人類に現れてしまう「竜生九子」が物語の核となっていましたが、その内容が語られるのです。重きものを背負う「ヒキ」が烏森さん、悪を裁くを好む「ヘイカン」は八乙女先輩、猛々しく吼える「ホロウ」は辻花、閉所に入り込む「ジョトク」は更紗、そして主人公くんは果てに向かうことを好む「チフン」、ツバキは殺人を恋しく想う「ヤズ」であるとのこと。(ちなみに残りは、飲食にこだわる「トウテツ」、水を愛す「ハカ」、炎を好む「サンゲイ」とのことですが、シナリオには関係しませんでしたね・・・)。



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  • 「更紗が終末を願うとき、俺は果てを願う」
    • で、ツバキとの会話が終了するのですが、ツバキが更紗を依り代に顕現している時の記憶を更紗も認識しており、ショックを受けます。大切なプレッパーズ部の仲間がいて、世界を終わらせたくないのに、どうしようもなく世界を終わらせたいと望んでしまうのだと。これに対して主人公くんが取った解決策は、「世界の果てを目指す」という自分の欲求に更紗をも巻き込んでしまうこと。こうして「ジョトク」の力により世界を閉ざそうとする更紗を、「チフス」の力で世界の果てに向かう主人公くんが、外へと連れ出すのでした。
    • エンドロール後、突如としてアルパカが登場!どうやら主人公くんはボリビアに単身渡航し、ウユニ塩湖へ赴いた様子。そこで主人公くんはツバキを再び具現化させることに成功し、「世界の果て」について語るのです。主人公くんは「世界の果て」を「人類の可能性」であると定義します。そしてそれを実現するために主人公くんは宇宙へ飛び出すことを選んだとのことでした。



『缶詰少女ノ終末世界』のシナリオを整理すると以下の通り。

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  • ツバキは多重人格であり、別人格である主人公くんを生み出し、その人格を愛してしまった。
  • そのためツバキは主人公くんに自分の身体を譲渡し自分を消滅させてしまいたかった。
  • しかしツバキの人格は殺されても過去に意識を遡及させてしまうので完全に死ぬことはできない。
  • またツバキが死んだ後に主人公くんの脳みそを弄ってツバキを復活させようとする人たちがいることを危惧した。
  • それ故、まずツバキの復活を求めるであろう宗教団体を壊滅させ、ツバキを愛する烏森さんの異能を排除した。
  • 次にツバキの存在を完全に殺しきることができる「ジョトク」を顕現させようとした。
  • 「ジョトク」は終末を求めるので、世界の終わりとなる核戦争を妨害し続けていれば、ツバキの前に現れるであろう。
  • 「ジョトク」は更紗として具現化。主人公くんの肉体からツバキを吸い出し自己の中に閉じ込める。
  • こうして主人公くんの人格とツバキの人格は分離することになる。
  • 更紗は自分が世界の終わりを求める「ジョトク」であることに絶望するが、「世界の果て」を目指す主人公くんが更紗を巻き込んで問題解決!
  • 主人公くんの「世界の果てを目指す」ことは「人類の可能性を広げる」ことであり、ウユニ塩湖で再会したツバキの人格に「宇宙を目指す」ことを宣言する。

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