雑録

喫茶ステラと死神の蝶「汐山涼音」シナリオの感想・レビュー

努力と技術で境遇を切り拓いて来た者ほど拠り所の能力が否定されると精神崩壊する話。
菓子作りの才を持ち辣腕を振るってきた涼音だが会心のケーキが否定されると挫折。
コスト面で採用されなかったのではなく味に問題があるのではないかと疑心暗鬼に駆られる。
体験版で主人公くんの活躍により復活した涼音は喫茶ステラの勤務を通して新たな知見を得る。
それは美味しい物を作るだけではダメで食べて貰う為の努力が足りなかったということ。
涼音は、主人公くんの後押しを得てケーキ1グランプリに出場し、優勝を果たす。
サブキャラなのでシナリオは短く掘り下げも浅いが屈指のキャラ性能を誇りかわいい。

高い能力で現実を切り拓いて来た人ほど危うくて、挫折を経験するとすぐ精神崩壊しちゃうの。

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  • 「年上としての人生経験から来る深み」と「男に対する免疫の無さから来る初々しさ」のギャップが素晴らしい
    • 汐山涼音は主人公くんの親友の姉。腕の良いパティシエとして有名店で働いていましたが、挫折して退職して精神崩壊。体験版ではこの涼音さんが復活するまでが丁寧に描かれており、シナリオを引っ張ってきました。主人公くんは喫茶ステラではキッチンスタッフとして働くので、涼音さんとの関係はまさに師弟関係。自己否定的でネガティブ思考の主人公くんを涼音さんが絶えず叱咤激励し、酸いも甘いも味わったからこその人生訓を説いていきます。主人公くんが勤労学生からくる日々の疲労により休憩室で寝てしまい、気が付いたら閉店時間だったというチョンボを犯した際には、ウジウジクヨクヨするなと励ましてくれます。涼音の指導により徐々に主人公くんも成長していきます。そして正月にはついに涼音さんを初詣に誘うことに成功するのです。一方で涼音さんはこれまでケーキ作りに打ち込む人生を送っており、また自分の貧相な肉体から男女関係を諦めていたこともあって、主人公くんが時折見せる男らしさにきゅんきゅんときめいてしまいます。年相応で現実的な涼音さんが客観的に自分を分析しながらも、感情が揺さぶられていく様子は屈指の可愛さになっておりますので、ぜひ読んで欲しいところとなっています。

 
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  • 涼音さんの支えになりたいんだ!
    • 涼音さんと結ばれた主人公くんでしたが、ここで問題となるのが、涼音さんが蝶にとりつかれていた根本的な原因です。涼音さんは前の職場で色々とあったのですが、それは周囲との軋轢という外的要因よりも、実は内面的な問題:精神面の脆さにあったのです。前の職場のコンペにおいて、涼音さんは会心の出来のケーキを作り上げましたが、結局そのケーキは却下されてしまいました。涼音さんは自己分析で敗因を材料費のかかりすぎに求めました。しかしながらコスト面は言い訳に過ぎず、もしかしたらホントウはケーキの味が劣るのではないか?と疑心暗鬼に駆られてしまうのですね。こうなるともうオシマイさ。涼音さんは自分の菓子作りの能力を示すことで、境遇を切り拓いて来た女性でした。しかし硬いものが脆いように自己の能力に依存してきた反動で立ち上がれなくなってしまうわけです。こうして涼音さんは自滅することになってしまったのでした。涼音さんにもう少し柔軟性があれば自滅は避けられたでしょう。これを知った主人公くんは涼音さんの支えになりたいと思うようになるわけです。涼音さんの日常的な世話から日々のおさんどん、喫茶店でのキッチン業務と八面六臂の活躍を見せます。涼音さんが前の職場でのケーキを乗り越え、新しいケーキでグランプリを取れたのも主人公くんのおかげ!主人公くんは涼音さんに人生の喜びを見出し、涼音さんが独立して店を持っても大丈夫なように、個人店舗経営に未来の進路を定めるのでした。

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