雑録

加藤政洋「『呉花街案内』を読む」(上杉和央編『軍港都市研究Ⅱ』、清文堂、2012年、321-323頁)

『呉花街案内』に関するコラム。従業員の女性426人分の個別データが掲載されている所が最大の史料的価値であるとしている。

  • 『呉花街案内』とは
    • 呉市で1935(昭和10)3月から5月にかけて開催された「国防と産業大博覧会」の会期に合わせて発行されたB6の書籍。タイトルに示されるごとく「花街」をクローズアップした異色のガイドブック。

  • 歴史的意義
    • 呉のみならず近傍の音戸、広、そして吉浦の紹介もあり、それぞれの花街の歴史や当時の概況を知ることができる。

  • 呉市の料理屋案内」ならびに「呉市の旅館案内」
    • 市内の主要な料理屋と旅館の立地を復元する上で、大いに参考になる。
    • 料理屋案内の方には「呉藝妓協同組合関係」と注記されているため、列挙された料理屋は芸妓の出先となっていたことが分かる。
    • 説明文は中邨末吉『呉軍港案内』(呉郷土史研究会、1934年)の丸写しなので原典を参照する必要がある。

  • カフエー街の詳細な紹介
    • 大正後期から昭和初期(1920年代)に登場し大都市における風俗営業の代表的な業態となったカフエーは、その斬新さと手軽さとがあいまって、遊郭や花街を圧迫するほどの成長産業になっていたことが分かる。

  • 各種広告
    • 表表紙見返し「朝日楽園近代化のトツプをゆく!」→朝日遊郭の貸座敷やサービスの近代化に関する記事と写真
    • 裏表紙見返し「朝日楽園に画する異国情緒」→テーマルーム型の貸座敷が記事と写真で紹介されている
    • 代表的料理屋・旅館、カフエー→「博覧会へおいで下さつた方々/是非呉のカフエーお立ち寄りを/美人の殿堂/美人座はまた格別です」などと女給を喧伝する広告

  • 従業する女性たちの紹介記事(於:呉券番・呉カフエー・朝日楽園・音戸券番・広村券番・吉浦券番)
    • 写真・源氏名・年齢・出身地・趣味・特技が記載され、延べにして426人分の情報を得ることができる。
    • 呉・音戸・広の券番(芸妓)ならびにカフエー街(女給)については県内出身者が多数を占める
    • 朝日遊郭と吉浦花街(娼妓)は九州や対岸の愛媛県からの移入が多い。春を鬻ぐ女性たちは主として呉以西の地域から集まっていた。